公開日 2021/01/05 06:30
【特別企画】クリアオーディオ製トーンアームKRANEが登場!
“最強”のアップグレードを果たしたリン「MAJIK LP12」。新軸受とトーンアームの音質を徹底解説
山之内 正
■柔軟な設計思想で、自由なカスタマイズが可能なLINNのLP12
リンの主要な製品は本体を買い換えずにアップグレードできる柔軟な設計思想を貫いている。レコードプレーヤーの「LP12」はその象徴というべき存在だ。電源ユニットやサブシャーシなどの基幹パーツに交換可能なモジュール設計を導入することで、購入後も自由自在なカスタマイズができる意味は大きい。一方、最初からバランスの良いシステムを手に入れたいなら、リンが提案する3つのグレード(KLIMAX、AKURATE、MAJIK)のなかから好みの製品を選べばよい。個別に組むよりもコストパフォーマンスが高く、お薦めの方法だ。
3つのグレードで展開されるプレーヤーシステムもアップグレードの対象となるのはいうまでもない。エントリーグレードの「MAJIK LP12」も例外ではなく、2020年は2つの重要なアップグレードを受けて最新仕様のシステムが誕生した。1つめは新軸受「KAROUSEL(カルーセル)」の搭載、2つ目は新たにクリアオーディオ製のトーンアーム「KRANE(クレーン)」が登場したことだ。
結論から言うと、この2つの進化はこれまでのアップグレードのなかで最強というべき音質向上をもたらしている。それぞれの要素技術ごとにどんな変化が生まれたのか、順を追って紹介していこう。
1つめのアップグレードはプラッターの回転軸を支える軸受の変更だ。2020年春まで発売されていたLP12は1993年に発売された「CIRKUS KIT(サーカスキット)」仕様の軸受を用いていて、オリジナルに比べて強度の高さが長所とされていた。
第3世代に相当する今回の軸受「KAROUSEL」は、素材をステンレスに変更して剛性を高めたうえで構造を全面的に見直し、精度を改善しているという。スピンドルを受け止めるスラストパッドにDLC(ダイアモンド・ライク・カーボン)加工を施して摩擦を極小に抑えていることも見逃せない。スラストパッドを3ピース構造に変更することでメンテンナンス性も改善しているので、長いスパンで見ても初期性能を維持しやすくなっているはずだ。
■軸受でここまで音が変わるとは! ジャズでは鮮烈な勢いが乗る
軸受を「KAROUSEL」に変更した「MAJIK LP12」の音を従来仕様と比較しながら聴いてみた。新開発のフォノイコライザーアンプを積む「MAJIK DSM/4」とスピーカーは「MAJIK 140SE」を組み合わせたワン・ブランド同一グレードのシステムで再生する。
どんな音の変化が現れるのか、息を呑んで聴き始めた。だが、そこまで集中しなくても音の違いはすぐに気付くレベルだ。ジャズのライヴ演奏「ジャズ・アット・ザ・ポーンショップ」はドラムやサックスのアタックが鮮烈でアグレッシブな勢いが乗り、スティーリー・ダンの「Aja」はベースやピアノの重心が一段階下がって基音の厚みがアップ。マリンバの彫りの深い打音も滅多に聴けないほどインパクトがある。
ラトル指揮、ベルリン・フィルによる「シベリウス:交響曲第3番」では空間の見通しと弦楽器の音色に明らかな違いが現れた。森の木々を通り抜ける風のような透明な空気のなか、ヴァイオリンが刻む音形のひとつひとつが瑞々しさをたたえて耳を心地よく刺激する。絶頂期のネトレプコとヴィリャソンがアリアの名曲を歌ったアルバムでは、ソプラノとテノールの密度の高い高音に違いを聴き取ることができた。ネトレプコの高音は包み込むような柔らかさを引き出し、ヴィリャソンはダイナミクスが一段階上がったような強靭な高音が高揚感をもたらす。
軸受を変えただけなのに、まるでカートリッジを変えたような変化が生まれるのはなぜなのか。プラッターの回転を支える重要な支持ポイントなので音が変わるのは納得できるが、それにしてもここまでとは思わなかった。軸受がいかに重要な役割を担っているか、再認識させられる。
リンの主要な製品は本体を買い換えずにアップグレードできる柔軟な設計思想を貫いている。レコードプレーヤーの「LP12」はその象徴というべき存在だ。電源ユニットやサブシャーシなどの基幹パーツに交換可能なモジュール設計を導入することで、購入後も自由自在なカスタマイズができる意味は大きい。一方、最初からバランスの良いシステムを手に入れたいなら、リンが提案する3つのグレード(KLIMAX、AKURATE、MAJIK)のなかから好みの製品を選べばよい。個別に組むよりもコストパフォーマンスが高く、お薦めの方法だ。
3つのグレードで展開されるプレーヤーシステムもアップグレードの対象となるのはいうまでもない。エントリーグレードの「MAJIK LP12」も例外ではなく、2020年は2つの重要なアップグレードを受けて最新仕様のシステムが誕生した。1つめは新軸受「KAROUSEL(カルーセル)」の搭載、2つ目は新たにクリアオーディオ製のトーンアーム「KRANE(クレーン)」が登場したことだ。
結論から言うと、この2つの進化はこれまでのアップグレードのなかで最強というべき音質向上をもたらしている。それぞれの要素技術ごとにどんな変化が生まれたのか、順を追って紹介していこう。
1つめのアップグレードはプラッターの回転軸を支える軸受の変更だ。2020年春まで発売されていたLP12は1993年に発売された「CIRKUS KIT(サーカスキット)」仕様の軸受を用いていて、オリジナルに比べて強度の高さが長所とされていた。
第3世代に相当する今回の軸受「KAROUSEL」は、素材をステンレスに変更して剛性を高めたうえで構造を全面的に見直し、精度を改善しているという。スピンドルを受け止めるスラストパッドにDLC(ダイアモンド・ライク・カーボン)加工を施して摩擦を極小に抑えていることも見逃せない。スラストパッドを3ピース構造に変更することでメンテンナンス性も改善しているので、長いスパンで見ても初期性能を維持しやすくなっているはずだ。
■軸受でここまで音が変わるとは! ジャズでは鮮烈な勢いが乗る
軸受を「KAROUSEL」に変更した「MAJIK LP12」の音を従来仕様と比較しながら聴いてみた。新開発のフォノイコライザーアンプを積む「MAJIK DSM/4」とスピーカーは「MAJIK 140SE」を組み合わせたワン・ブランド同一グレードのシステムで再生する。
どんな音の変化が現れるのか、息を呑んで聴き始めた。だが、そこまで集中しなくても音の違いはすぐに気付くレベルだ。ジャズのライヴ演奏「ジャズ・アット・ザ・ポーンショップ」はドラムやサックスのアタックが鮮烈でアグレッシブな勢いが乗り、スティーリー・ダンの「Aja」はベースやピアノの重心が一段階下がって基音の厚みがアップ。マリンバの彫りの深い打音も滅多に聴けないほどインパクトがある。
ラトル指揮、ベルリン・フィルによる「シベリウス:交響曲第3番」では空間の見通しと弦楽器の音色に明らかな違いが現れた。森の木々を通り抜ける風のような透明な空気のなか、ヴァイオリンが刻む音形のひとつひとつが瑞々しさをたたえて耳を心地よく刺激する。絶頂期のネトレプコとヴィリャソンがアリアの名曲を歌ったアルバムでは、ソプラノとテノールの密度の高い高音に違いを聴き取ることができた。ネトレプコの高音は包み込むような柔らかさを引き出し、ヴィリャソンはダイナミクスが一段階上がったような強靭な高音が高揚感をもたらす。
軸受を変えただけなのに、まるでカートリッジを変えたような変化が生まれるのはなぜなのか。プラッターの回転を支える重要な支持ポイントなので音が変わるのは納得できるが、それにしてもここまでとは思わなかった。軸受がいかに重要な役割を担っているか、再認識させられる。