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公開日 2023/01/11 06:30
音の分離と音場再現は特筆もの

他の追随を許さない“超”空間再現性。HIFIMAN「Svanar」は音楽と一体になれる最高峰イヤホンだ

折原一也

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平面駆動型ヘッドホンの定番ブランドとして実績を重ねるHIFIMANは、前モデル「RE2000」の高評価もあり、イヤホンでもその存在感をさらに高めている。そんな同社の新フラグシップモデル「Svanar」の特徴とサウンドを詳しくレビューしていこう。


「トポロジーダイヤフラム」を採用した“白鳥”の名を持つハイエンドイヤホン



まずはスペック面から見ていきたい。ドライバーユニット構成は9.2mmのダイナミック型一発だが、HIFIMANはそのダイヤフラムの表面に特殊なメッキ処理を施した独自の “トポロジーダイヤフラム” を採用する。これは表面の特殊な幾何学模様の形状、配合物、厚さを調整することにより、周波数応答を完璧にコントロールする目的のもので、その技術的成果こそが本機のサウンドのハイライトだ。

HIFIMAN「Svanar」(229,900円/税込)

トポロジーダイヤフラムのイメージ。HIFIMANのサウンドを決定づける大きな特徴だ

イヤホン筐体はフロントチャンバー部が真鍮、リアチャンバー部がアルミニウムという組み合わせ。楽器素材としても使われる真鍮ならではの共鳴特性と全体の密度を活かしつつ、リアチャンバーと異素材の金属材料とすることで共振のチューニングを果たす構造だ。形状面ではフィット感の向上を目指したデザインを特徴としている。

イヤーピースについては、シングルフランジ/ダブルフランジ/トリプルフランジの3種類の形状がある。どれを選ぶかは耳とのフィット感次第だが、今回はダブルフランジ型で試聴している。耳に押し込むと一般的なシングルフランジのイヤーピースよりも遮音性が高く、エアコンの付いた室内でも音質への影響が小さくなる。

ダブルフランジ/トリプルフランジのイヤーピースとイヤーフックを同梱する

2pinコネクタでリケーブルにも対応する

またケーブルは交換式で0.78mmの2pinコネクターを採用。標準では3.5mmプラグのケーブルが付属する。

ネームプレート付の重厚なケースに本体や付属品一式が収められている

音の分離、空間再現に優れ、超美音の高域で中低域にパワーもある。多方面に魅力あるサウンド



さて、気になるSvanarの音質をチェックしていこう。

一聴して印象に残るのは、分離に優れたサウンドでありながらナチュラルで空間も広く、そして高域まで伸びやかな超美音、かつパワーバランスは中低域にある……と様々なキャラクターを併せ持っていること。一度にサウンドの全貌を捉え切れないのは、音楽を聴き意識を集中する度に、その音の魅力を次々に発見できるためだ。

様々な音源でSvanarのサウンドをチェックしていく

僕のリファレンスである宇多田ヒカル「あなた」では、まず歌声の再現から素晴らしい。音の質感の良さとクリアさを両立した上でボーカルが空間に浮かび上がる。歌声の抑揚に依らず、高域部にかかった際も繊細さを保つ表現力は特筆もの。そして歌声にコーラスが重なると、声が空間に広がる様から音場表現の優秀さがわかる。ピアノは音に硬質さがなく、曲中のオーケストラに意識を集中すれば、その音色もまた楽器としての存在感を放ち続ける。低音は徹底して引き締め、情報量志向のベースも魅力的。

YOASOBI「三原色」も試聴していて驚いた曲だ。まず圧倒的と呼ぶ他ないのが、アコギの弦のアタックの再現性。空間のなかで弾力を放ち、他のイヤホンとは別次元というほど存在感を発揮する。リズムの刻みの音圧感は、単純な低音ボリュームの強さではなく、一定の音量のなかで時間的な精緻さを伴う圧巻の再現性。歌声は楽曲のなかでセンターに定位し、音場の広さにより楽器とは明確にセパレートする。そして歌声がどこまで高域を攻めてもまったくピークを感じさせずに、透明感を伴い美しく伸びるのだ。同時にシンバルの高域も繊細だが、そこに硬さはなくキツさを感じるところもない。

“超空間再現”で音楽と一体になる体験ができた

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