公開日 2024/02/16 06:30
サイズ展開もより豊富に
“シリコンイヤピの先駆者”はここまで進化した!SpinFit「OMNI」「W1」徹底レポート
岩井 喬
チューブの「くびれ」によって、耳の奥まで自然にフィットする台湾生まれのイヤーチップブランド「SpinFit」。そのラインナップに、三段階の凹み構造を設けた「OMNI(オムニ)」が新たに加わった。Hi-Fi有線イヤホン向けイヤーチップ「W1」と合わせて、その真価に岩井 喬氏が迫る。
イヤホンの装着感や音質を決める要素として思う以上に重要な役割を果たしているのがイヤーチップである。シリコン製の純正品だけだった時代から、2010年前後には密閉性の高い低反発フォームタイプのサードパーティー製別売り品に対するニーズも高まった。
一方で、シリコン型のイヤーチップにおいては、そうしたサードパーティー製別売り品を求めるユーザーは少なかったように感じる。このサードパーティー製シリコンイヤーチップに対する認識を一変させたのが2009年、台湾で創業したイヤーチップブランドSpinFitの存在だ。
360度回転する独自のクッション構造により、外耳道の形状へシームレスに適合し、高い密閉性と快適な装着性を実現する手法を確立。高品質なシリコン素材と特許技術によってフィット感と音質を両立した新たな切り口で別売り品の価値を高めていったのである。もはや老舗と呼べるこのイヤーチップブランドから注目の2モデルを紹介しよう。
まず1製品目は、完全ワイヤレスや有線イヤホンなど幅広い製品にフィットする「OMNI」だ。ノズルの長さが短いイヤホンに対して有効であり、チューブ内径は対応可能範囲4.0-5.5mm。イヤホンのノズル部と接するチューブ内側に3段階の凹みを設けていることで、さまざまなノズル径のイヤホンに対応できるようにしている。
[OMNI SPEC]
●素材:認証取得SpinFit独自開発シリコン ●軸の内径:対応可能範囲4.0-5.5mm ●サイズ展開:SS/S/MS/M/L/XL ●主な対応イヤホン:<完全ワイヤレスイヤホン>SONY/WF-1000XM5、TECHNICS/EAH-AZ80など <有線イヤホン>Campfire Audio/Andromeda Emerald Seaなど
チューブは2層構造を取り入れており、外側は柔らかいシリコン素材を用いて高いフィット感と心地よさを実現。そして内側にはしなやかでありながら、芯のある適度な硬さのシリコン素材を採用し、ノズルにしっかりとホールドできるよう設計されている。このチューブ部分にはブランドロゴも印刷されており、他製品との違いをひと目で判別できることも特徴だ。
そして外耳道に触れる傘の部分は皮膚刺激性試験に合格した、肌に優しい独自開発の高品質シリコンを採用。柔軟かつしなやかで、ハリのある弾力性もバランスよく両立させた仕様であり、長時間の使用でも快適な装着性を維持できる。
サイズはSS、S、MS、M、L、XLの6サイズを用意。SSはイエロー、Sはピンク、MSはブルー、Mはインディゴ、Lはグリーン、XLはグレーとそれぞれチューブの配色を変え、判別しやすくしている。パッケージには1サイズ1ペアずつ同梱。環境に配慮したプラスティックフリーパッケージで、100%リサイクル紙を使用している。
続いて2製品目は、Hi-Fi有線イヤホン向けに開発された「W1」だ。こちらは新製品というよりは、2023年12月にリニューアルパッケージとなり、S/M/Lの3サイズ展開から、SS/S/MS/M/Lの5サイズ展開へと変更されたものとなる。OMNIと同様、チューブ部の配色をサイズごとに変えており、従来からのS=オレンジ、M=グリーン、L=パープルに加え、SSはイエロー、MSはブルーを採用。このリニューアルパッケージから1サイズ1ペア同梱のシングルパッケージとなり、手頃感も増した。
[W1 SPEC]
SPEC ●素材:医療用グレードシリコン ●軸の内径:対応可能範囲5.0-6.0mm ●サイズ展開:SS/S/MS/M/L ●主な対応イヤホン:<有線イヤホン>VICTOR/HA-FW10000、SONY/IER-Z1R、SENNHEISER/IE 600、final/A8000など
チューブ内径は対応可能範囲5.0-6.0mmで、軸となるチューブの内側と外側で硬度の異なるシリコンを円周に沿ってウェーブ状に形成するダブルウェーブ加工を採用。軸の内側は適度な硬さを持たせてイヤホンのステム部をしっかりと抑え込む構造だ。また開口部は広めに設計されており、音像のディテール再現、楽器の繊細かつ豊かな表現力を引き出すとともに、低域から高域まで伸びやかな音質を実現している。
さらにSpinFitならではの特許取得技術、3Dクッション構造も取り入れており、外耳道に合わせてイヤーチップが0〜40°の範囲でイヤーチップが動き、最適な角度でフィットさせることが可能だ。傘の素材については低刺激性で長時間装着していてもかゆみなどが生じにくい、医療用グレードのシリコン素材を採用。アレルギーを起こしにくい素材であること、そして高耐久性であることもメリットとなっている。
ここからはそれぞれのイヤーチップをいくつかのイヤホンに装着し、そのサウンドの変化についてインプレッションをお届けしたい。
まずOMNIであるが、完全ワイヤレスモデルはテクニクス「EAH-AZ80」、有線イヤホンとしてはAcoustune「RS THREE」を選択。EAH-AZ80ではノイズキャンセルの効き具合も純正品とさほど変化はなく、より密閉性が高くなるような感触である。元々音質バランスもよく素直な音色傾向を持っているが、そのよさを維持しながらさらに音抜けよく、音像の輪郭を適度に引き締め定位感も高まる印象だ。ピアノのハーモニクスも一際上品で、ボーカルの質感も柔らかく艶感や潤いもさらに際立つ。オーケストラの旋律は緻密で音場もより自然に感じられる。余韻もノイズキャンセル効果と相まって、静寂の中へ消えゆくさまを克明に描く。
RS THREEではニュートラル基調で締まり感のよいサウンドが持ち味であるが、OMNIを装着するとさらにフォーカスのよい爽やかなサウンドとなる。低域のダンピングも高まり、オーケストラの低音パートの階調性や、バンドのリズム隊はアタックのタイトさが際立つ。ボーカルのハリも若々しくクールに描き、ホーンセクションも鋭く鮮やかである。
続いてW1にはビクター「HA-FW10000」とMADOO「Typ821」を選んだ。HA-FW10000は標準装備のイヤーチップでも十分に高音質だが、W1に交換するとより解像度指向のサウンドに変化。シンバルやピアノ、ホーンセクションの響きは朗らかで落ち着きよく描き、余韻も爽やかで、全体的に明るい音質である。キックドラムやウッドベースはアタックがより明確となり、引き締め感とともに響きの深さや音伸びのよさも両立。オーケストラの響きも上品で、奥行きも感じられるほどパートごとの重なりや余韻のコントロールが巧みだ。ボーカルはブライトな輪郭感とディテールの滑らかさが印象的。息継ぎも潤いよくリアルにトレースしてくれる。
Typ821ではより平面型ドライバーの特性が際立つようで、立ち上がりのスピード感や抑揚表現を明確に引き出す。ホーンセクションやピアノの響きはストレートかつクリアで、余韻の透明度も高い。リズム隊の引き締めもスムーズにまとめ、密度感も自然である。ボーカルは音離れよくウェットでボディ感もナチュラル。口元の動きも緻密だ。オーケストラの旋律はハリ感を細やかにコントロールし、ホールトーンも豊潤に表現。音場もクリアで楽器の芯を存在感よく描き出す。W1によって元々持っていた分離のよさと解像度の高さをより理想的に引き出してくれる印象を持った。
このように、OMNIとW1を聴いてみても、組み合わせるイヤホンごとに音の個性が変わり、選びがいのあるアクセサリーだと感じた。この記事を参考にして音の傾向の目星をつけつつ、店頭などで実際の音をチェックして、自身のイヤホンのポテンシャルを引き出すイヤーチップを選び出してほしい。
(企画協力:ピクセル)
■シリコン型イヤーチップの草分け的存在「SpinFit」
イヤホンの装着感や音質を決める要素として思う以上に重要な役割を果たしているのがイヤーチップである。シリコン製の純正品だけだった時代から、2010年前後には密閉性の高い低反発フォームタイプのサードパーティー製別売り品に対するニーズも高まった。
一方で、シリコン型のイヤーチップにおいては、そうしたサードパーティー製別売り品を求めるユーザーは少なかったように感じる。このサードパーティー製シリコンイヤーチップに対する認識を一変させたのが2009年、台湾で創業したイヤーチップブランドSpinFitの存在だ。
360度回転する独自のクッション構造により、外耳道の形状へシームレスに適合し、高い密閉性と快適な装着性を実現する手法を確立。高品質なシリコン素材と特許技術によってフィット感と音質を両立した新たな切り口で別売り品の価値を高めていったのである。もはや老舗と呼べるこのイヤーチップブランドから注目の2モデルを紹介しよう。
■3段階の凹みでさまざまなノズル径に適合! 「OMNI」
まず1製品目は、完全ワイヤレスや有線イヤホンなど幅広い製品にフィットする「OMNI」だ。ノズルの長さが短いイヤホンに対して有効であり、チューブ内径は対応可能範囲4.0-5.5mm。イヤホンのノズル部と接するチューブ内側に3段階の凹みを設けていることで、さまざまなノズル径のイヤホンに対応できるようにしている。
[OMNI SPEC]
●素材:認証取得SpinFit独自開発シリコン ●軸の内径:対応可能範囲4.0-5.5mm ●サイズ展開:SS/S/MS/M/L/XL ●主な対応イヤホン:<完全ワイヤレスイヤホン>SONY/WF-1000XM5、TECHNICS/EAH-AZ80など <有線イヤホン>Campfire Audio/Andromeda Emerald Seaなど
チューブは2層構造を取り入れており、外側は柔らかいシリコン素材を用いて高いフィット感と心地よさを実現。そして内側にはしなやかでありながら、芯のある適度な硬さのシリコン素材を採用し、ノズルにしっかりとホールドできるよう設計されている。このチューブ部分にはブランドロゴも印刷されており、他製品との違いをひと目で判別できることも特徴だ。
そして外耳道に触れる傘の部分は皮膚刺激性試験に合格した、肌に優しい独自開発の高品質シリコンを採用。柔軟かつしなやかで、ハリのある弾力性もバランスよく両立させた仕様であり、長時間の使用でも快適な装着性を維持できる。
サイズはSS、S、MS、M、L、XLの6サイズを用意。SSはイエロー、Sはピンク、MSはブルー、Mはインディゴ、Lはグリーン、XLはグレーとそれぞれチューブの配色を変え、判別しやすくしている。パッケージには1サイズ1ペアずつ同梱。環境に配慮したプラスティックフリーパッケージで、100%リサイクル紙を使用している。
■ダブルウェーブ加工で装着性と音質を向上! 「W1」
続いて2製品目は、Hi-Fi有線イヤホン向けに開発された「W1」だ。こちらは新製品というよりは、2023年12月にリニューアルパッケージとなり、S/M/Lの3サイズ展開から、SS/S/MS/M/Lの5サイズ展開へと変更されたものとなる。OMNIと同様、チューブ部の配色をサイズごとに変えており、従来からのS=オレンジ、M=グリーン、L=パープルに加え、SSはイエロー、MSはブルーを採用。このリニューアルパッケージから1サイズ1ペア同梱のシングルパッケージとなり、手頃感も増した。
[W1 SPEC]
SPEC ●素材:医療用グレードシリコン ●軸の内径:対応可能範囲5.0-6.0mm ●サイズ展開:SS/S/MS/M/L ●主な対応イヤホン:<有線イヤホン>VICTOR/HA-FW10000、SONY/IER-Z1R、SENNHEISER/IE 600、final/A8000など
チューブ内径は対応可能範囲5.0-6.0mmで、軸となるチューブの内側と外側で硬度の異なるシリコンを円周に沿ってウェーブ状に形成するダブルウェーブ加工を採用。軸の内側は適度な硬さを持たせてイヤホンのステム部をしっかりと抑え込む構造だ。また開口部は広めに設計されており、音像のディテール再現、楽器の繊細かつ豊かな表現力を引き出すとともに、低域から高域まで伸びやかな音質を実現している。
さらにSpinFitならではの特許取得技術、3Dクッション構造も取り入れており、外耳道に合わせてイヤーチップが0〜40°の範囲でイヤーチップが動き、最適な角度でフィットさせることが可能だ。傘の素材については低刺激性で長時間装着していてもかゆみなどが生じにくい、医療用グレードのシリコン素材を採用。アレルギーを起こしにくい素材であること、そして高耐久性であることもメリットとなっている。
■サウンド評価:音の輪郭をクリアに描くOMNI、解像感を高めるW1
ここからはそれぞれのイヤーチップをいくつかのイヤホンに装着し、そのサウンドの変化についてインプレッションをお届けしたい。
まずOMNIであるが、完全ワイヤレスモデルはテクニクス「EAH-AZ80」、有線イヤホンとしてはAcoustune「RS THREE」を選択。EAH-AZ80ではノイズキャンセルの効き具合も純正品とさほど変化はなく、より密閉性が高くなるような感触である。元々音質バランスもよく素直な音色傾向を持っているが、そのよさを維持しながらさらに音抜けよく、音像の輪郭を適度に引き締め定位感も高まる印象だ。ピアノのハーモニクスも一際上品で、ボーカルの質感も柔らかく艶感や潤いもさらに際立つ。オーケストラの旋律は緻密で音場もより自然に感じられる。余韻もノイズキャンセル効果と相まって、静寂の中へ消えゆくさまを克明に描く。
RS THREEではニュートラル基調で締まり感のよいサウンドが持ち味であるが、OMNIを装着するとさらにフォーカスのよい爽やかなサウンドとなる。低域のダンピングも高まり、オーケストラの低音パートの階調性や、バンドのリズム隊はアタックのタイトさが際立つ。ボーカルのハリも若々しくクールに描き、ホーンセクションも鋭く鮮やかである。
続いてW1にはビクター「HA-FW10000」とMADOO「Typ821」を選んだ。HA-FW10000は標準装備のイヤーチップでも十分に高音質だが、W1に交換するとより解像度指向のサウンドに変化。シンバルやピアノ、ホーンセクションの響きは朗らかで落ち着きよく描き、余韻も爽やかで、全体的に明るい音質である。キックドラムやウッドベースはアタックがより明確となり、引き締め感とともに響きの深さや音伸びのよさも両立。オーケストラの響きも上品で、奥行きも感じられるほどパートごとの重なりや余韻のコントロールが巧みだ。ボーカルはブライトな輪郭感とディテールの滑らかさが印象的。息継ぎも潤いよくリアルにトレースしてくれる。
Typ821ではより平面型ドライバーの特性が際立つようで、立ち上がりのスピード感や抑揚表現を明確に引き出す。ホーンセクションやピアノの響きはストレートかつクリアで、余韻の透明度も高い。リズム隊の引き締めもスムーズにまとめ、密度感も自然である。ボーカルは音離れよくウェットでボディ感もナチュラル。口元の動きも緻密だ。オーケストラの旋律はハリ感を細やかにコントロールし、ホールトーンも豊潤に表現。音場もクリアで楽器の芯を存在感よく描き出す。W1によって元々持っていた分離のよさと解像度の高さをより理想的に引き出してくれる印象を持った。
このように、OMNIとW1を聴いてみても、組み合わせるイヤホンごとに音の個性が変わり、選びがいのあるアクセサリーだと感じた。この記事を参考にして音の傾向の目星をつけつつ、店頭などで実際の音をチェックして、自身のイヤホンのポテンシャルを引き出すイヤーチップを選び出してほしい。
(企画協力:ピクセル)