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公開日 2025/04/01 06:30
ホームシアターのアバックの知見が詰まった優秀リファレンスソフト

映像機器の性能を一発で見極められる4K UHD BD『4K Great View』、お薦め高画質シーンを厳選レビュー

大橋伸太郎

△4K UHD BD 『4K Great View(グレード・ビュー)』 8,800円(税込) HF-4KSOFTGV


ホームシアターの設計・施工と映像音響機器の販売で40年近い実績を持つ、国内最大級のホームシアター専門店であるアバック。同社がホームシアターファイルのために立ち上げたサブブランドである「ホームシアターファクトリー」から初のパッケージソフトが登場した。それが4K UHD BD『4K Great View(グレード・ビュー)』である。


本作品は、高画質ソフトで定評のあるVICOM(ビコム)が日本各地でロケし、4K/6K/8Kで撮影された映像が元素材となっており、『4K Great View』としてリリースするにあたり、ホームシアターにおけるリファレンスソフトを実現するべく、コントラスト/階調/黒表現/色彩表現/解像度など徹底したリマスターを施し、全編56分の新作が誕生した。


全13チャプターで構成、HDRフォーマットはHDR10+が採用されており、平均80Mbpsを超えるというハイビットレートという高品位な仕様である。画質を最優先していることもあり、音声フォーマットはPCM 48kHz/24bitのステレオに抑えているようだ。



△4K/24pと4K/60pの映像コンテンツを収録しており、全13チャプターを用意している


注目したいのは、前半8チャプター分が4K/24p、後半5チャプター分が4K/60pで収録された二部構成となっている部分。4Kプロジェクターはもちろんだが、4Kテレビの映像エンジンの性能確認にも役立つ同社らしい実践的な画質検証ソフトだと言えよう。



△パナソニック「DMR-ZR1」で4K/24p映像を出力した際の信号内容



△パナソニック「DMR-ZR1」で4K/60p映像を出力した際の信号内容


今回、『4K Great View』の見どころをチェックするべく、クオリティレビューを実施した。全13チャプターある中、4K/24pと4K/60pの各フォーマットでお薦めのチャプターを厳選して紹介していきたい。リファレンスシステムには、パナソニックの4K UHD BDレコーダー「DMR-ZR1」、ビクターの8Kプロジェクター「DLA-V900R」を使用している。



△『4K Great View』の見どころをチェック



△視聴では、ビクターの8Kプロジェクター「DLA-V900R」(2,970,000円・税込)をリファレンスに使用


24p収録「日本の一本桜」〜桜花の色合いのニュアンス差をありのままに再現



△CH1「日本の一本桜」 4K・6K/HDR撮影 4K/24p収録 アベレージビットレート88Mbps



△「日本の一本桜」


出画するや、細やかなディテール、色彩表現の豊かさ、深みを増したコントラストの生む画面密度に息を飲む。画面がしっとりと濡れている…すでにリマスターは成功と確信した。CH1「日本の一本桜」の見どころは、各地の銘木桜の白から紅までのバリエーション。


姫枝垂桜、醍醐桜の薄紅、山桜の白といったBT.2020の広色域で生まれる桜花の色合いのニュアンス差が、いかにありのままに再現されるか、映像機器の試金石である。広色域なディスプレイほど、樹々の緑の表現が記憶色寄りのピュアな原色になるかもしれない。リアルな肉眼のバランスにどう近づけるか、カラーモード選択と映像調整のテーマにもなりうるチャプター。


24p収録「世界遺産 白川郷」〜まばゆいばかりに雪化粧した光景でHDR効果が試される



△CH5「世界遺産 白川郷」 4K/HDR撮影 4K/24P収録 アベレージビットレート86Mbps



△「世界遺産 白川郷」


日本有数の豪雪地帯の合掌造りの一群の民家に積もる白雪の表現が4K映像のテーマ。ローカルコントラストの白ピークが伸長し、晴天の青を背景にまばゆいばかりに雪化粧した光景が画面いっぱいに描き出され、HDR10+の効果が発揮される。


雲母のような輝きをはらんだ地表の雪が4Kの解像力できらめく。ディスプレイのRGBの合わせ込み次第でカラーブレイクが発生するだろう。黒々とした梁が縦横に行き交い数百年の年月を背負って静まりかえる合掌造りの家屋の内部は、暗部階調の試金石。スクリーンゲインが高いと白ピークの個所にホットスポットが生じるかもしれないため、スクリーンのユニフォーミティの検証にも役立ちそうだ。


24p収録「世界自然遺産 小笠原」〜スケールが雄大で解像感が優秀、色彩表現も豊か



△CH6「世界自然遺産 小笠原」 4K・6K・8K/HDR撮影 4K/24P収録 アベレージビットレート85Mbps



△「世界自然遺産 小笠原」


カメラの解像度だけでなく、ヘリ空撮の大場所広角撮影、水中撮影、天体撮影と素材のバリエーションが多く、最も見どころの多いチャプターである。島の全景を空から捉える8K空撮は、スケールが雄大で解像感にも優れており、色彩表現も豊饒だ。外洋の撮影は「ボニンブルー」と賞される濃紺が画面から溢れ出し見る者を染め上げ、浅瀬の海水は透き通って輝き汚れがない。


日中の海中撮影はHDR10+の明暗レンジが生々しい実景感覚を生み出し、スキューバダイビングの経験のある方はおわかりだろうが、頭上から海中に降り注ぐ日光がリアルに再現されイマーシブな映像体験だ。高速カメラで捉えた天の川の星数の豊かさも感動的。クライマックス、躍動するザトウクジラの巨体はスクリーン大画面で観てほしい。


60p収録「世界文化遺産 高野山」〜色彩表現と階調の両方で四季の再現性を確認できる



△CH11「世界文化遺産 高野山」 4K・8K/HDR撮影 4K/60P収録 アベレージビットレート87Mbps



△「世界文化遺産 高野山」


護摩供の修法を行う若い僧の美しい横顔のクローズアップで始まるが、ここでのテーマは色彩表現だ。清浄な空気に映える根本大塔をはじめとする密教建築の朱、本尊胎蔵大日如来の鬱金色のくすんだ輝き、総本山金剛峰寺門前の枝垂桜の濃厚なピンクの重なり合い、晩秋の紅葉が日光に透かされて生む豊かな赤のグラデーション、そして赤く染まったすすき野の夕景で終わる。


室内撮影、屋外ロケーションともに深山の聖域の神秘的な陰影感覚をHDR10+が伝える。色彩表現と階調の両方で、ディスプレイの評価基準となる一章といえよう。冬に始まり晩秋に終わる、六分半に収められた真言宗総本山の四季のスケッチが映像表現の確認にマッチする。


60p収録「冬の釧路湿原」〜映像機器のS/Nや解像力の高さと再現性が問われる



△CH12「冬の釧路湿原」 4K・8K/HDR撮影 4K/60P収録 アベレージビットレート86Mbps



△「冬の釧路湿原」


夜明けの川面を伝っていく霧、空中を舞うダイヤモンドダストの金色のきらめき、枝先に結氷した樹氷のクリスタルな美しさに息を呑む。映像機器のS/N、解像力、階調の総和で清冽な映像が生まれるのだ。湿原の空を舞う丹頂鶴の優美でなめらかな動きは60pであればこそだ。


うっすらとした雲に覆われる空の白から淡青のグラデーションは映像機の明部の階調表現、空を背景に浮かび上がる丹頂鶴のシルエットは解像力とS/N、頭頂部の赤は小面積の色彩情報がマスクされずに鮮明に再現できるかの指標となる。釧路流路の蛇行を追う空撮、船上から望む釧路川の行く手は大画面ならではの臨場感を体感できる。雪原に現われた動物たちの愛らしい姿も、リアルさの表現が問われる。


60p収録「東京空撮」〜暗部で黒の引き締まり、明部で輝度の表現力を検証できる



△CH13「東京空撮」 8K/HDR撮影 4K/60P収録  アベレージビットレート91Mbps



△「東京空撮」


ゲートブリッジ、レインボーブリッジの空撮から始まるが、8K撮影の精緻な映像に息を呑む。続いて神奈川/東京の夕景・夜景のリマスターは、どのシーンもコントラストに進境が見られ、暗部表現が改善されたことで黒が引き締まり、明部は輝度が増しており、明暗の対比がいっそう際立つ。


『4K Great View』の夜景シーンは、暗部の表現がどっしりと落ち着いている。一方、暗部に潜んでいる情報を塗りつぶすことなく、立体的に出してくる。こちらもリマスターの効果が、映像機器のチェックに大きく反映されるだろう。白眉は巨大な花束のような夜の東京タワー俯瞰と新宿、渋谷、今までの空撮ソフトでは体感することができない映像である。


アバックの経験と知見による高画質実写映像が一巻に詰まったリファレンス





SDRやフルHDの時代は、DVDやBDによる画質評価用の高画質ソフトが妍を競ったが、4K・8K時代になって影を潜めてしまっていた印象であり、映像機器メーカーもテストディスク難に陥っていた面もあったと感じるが、そこにホームシアターのエキスパートのアバックが一役買ってくれた。


経験と知見の蓄積、何より「映像機器の今」をどこよりも知るのが同社である。テレビやプロジェクターの性能を見極め、ベストに調整するためには、人や風景と言った実写映像(具体映像)が欠かせず、そのどこをどうみるか、彼らは知り尽くしている。具体的には解像力、コントラスト、階調表現、色彩表現、S/N、動画解像度だが、56分に全てを盛り込んだ『4K Great View』の登場意義は大きい。


オリジナル素材はVICOMの映像だが、リマスターのテーマは高解像度、色表現に磨きをかけての「よりキレイに」にとどまらない。コントラストの低下、黒浮きをはじめ、ホーム環境に大画面の映像機器を設置した時に、ユーザーが直面する問題の解決まで視野に入れたリマスターであり、ホームシアターの実地を知るアバックならではの見地と言っていい。


しかし、『4K Great View』は実用のソフトというだけではない。高画質な実写映像の美味しいところが一巻にぎっしり詰まり、釧路湿原から沖縄、奄美大島まで56分の旅を楽しむことができるのも、VICOMとアバックのタッグが生んだ4K高画質映像があればこそ。“イマーシブ”という言葉がこれほどふさわしい4K UHD BDソフトはない。


 


[SPEC]
●本編:56分 ●アスペクト比:16:9 ●映像:HEVC、4K、HDR10+ ●音声:PCM 2ch(48kHz/24bit) ●発売元:株式会社アバック ●制作元:株式会社アバック/ビコム株式会社


<収録チャプター>
■4K/24p収録作品
・「日本の一本桜」 ・「世界自然遺産 西表島」 ・「世界自然遺産 奄美大島」
・「日本三大火祭り 鬼夜」 ・「世界遺産 白川郷」 ・「世界自然遺産 小笠原」
・青森 ねぶた祭」 ・「夜景 神戸・東京」
■4K/60P収録作品
・「越後 片貝まつり」 ・「空旅 沖縄本島」 ・「世界文化遺産 高野山」
・「冬の釧路湿原」 ・「東京空撮」



△『4K Great View』のジャケット背面


※システムの仕様上、「ALL PLAY(全編再生)」で視聴する場合、60pコンテンツの再生が始まったあとに巻き戻しで24pコンテンツに戻れない仕様となっている。その際はメニューから再生を実行する。また、24p・60pの移行には若干のタイムラグが発生するため、あらかじめご了承いただきたい。

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