公開日 2023/04/12 10:00
2023年2月、僕は東京発〜新大阪行きの新幹線に乗った。最終的な目的地はインテックス大阪。2月10日より13日まで開催される関西園最大のカスタムカーのショー「オートメッセ2023」を見学するためだ。
僕はカスタムカーが大好きだ。今年は「東京オートサロン」も見学したけれど、大阪行きは楽しみで仕方なかった。関西地区のチューニング/カスタムカー事情もわかるし、事前情報によると、実力派カーオーディオショップやメーカーのデモカー5台が展示されるという。
現在のカーオーディオシーンはホームオーディオ同様のピュアハイファイのサウンドクラスが人気で、情報量、サウンドステージ、質感などを競い合っている、5台のデモカーを聴けば、今年のトレンドもわかるかもしれない。まずは会場全体を見学したあと、いよいよ5台の車両を試聴させてもらうことになったのだが……。
最初に話しておかなくてはいけない。展示された5台の車両のレベルは高く、中でもある1台の車両からは“カーオーディオの音質が次の領域に入った”ことを明示するようなサウンドを聴き取ることができたのだ。それでは5台を順に解説していきたい。
まずは今回試聴した一連の車両の中で衝撃を受けたジャガー「F-TYPE クーペ」をご紹介したい。大阪に本拠地を構えるAV Kansaiが出展した美しいオレンジのボディをまとったデモカーである。
インストールされたオーディオは、ソース機器にDAPのiBasso Audioの「DAP300APEX Ti」、DSPはRESOLUT「M-DSP」、スピーカー構成はフロント3ウェイ+サブウーファーで、トゥイーターはZE Speaker Labの「ZR Prestige 25N」、ミッドレンジは「ZR Prestige 9DD」、ミッドバスに「ZR Prestige 18W」、サブウーファーはGROUND ZERO「GZPW 10SQ」で、アンプはAUDIO WAVE「EXCEL」3台と「ASPIRE PRO JDP」1台で駆動している。
インストールしたシステムで特に興味深いのはDSPだ。RESOLUT(リゾルト)は筆者にとっても聞きなれない、ロシアのブランドのモデルである。だが何よりも驚いたのが、この車両が表現する圧倒的なサウンドだ。車内ではコンテスト課題曲からJ-POPまでさまざまな楽曲を聴いた。
あまり派手には書くつもりはない。しかし、音が出た瞬間に感じたのは、カーオーディオのクオリティが次の領域に入るような圧倒的な情報量と分解能で、さらにウインドウの外まで広がるサウンドステージが聴き取れる。筆者は昨年数多くのコンテストで審査させてもらったが、そんな自分でもすぐに理解できないほどの分解能とステージ表現に、車内で自身の感覚を一度リセットしたくらいだ。
インストールを担当したAV Kansaiの岩元さんによると、ジャガーの音質でキーとなったのは経験値とM-DSPの搭載だったという。「経験値は後悔の積み重ねによって得られたもの」であり、そしてコストがかかることを覚悟して安定化電源を入れたことと、DSPの搭載がポイントとなるとのことだ。
M-DSPは16ch(8ch+8ch)構成のプロセッサーで、なんとESS社の高性能DACチップ「ES9038PRO」の選別品を使った上、192kHz/64bitで全チャンネルを制御するというかなりのハイスペックなモデル。
「M-DSPの存在自体は知っていましたが、今まで使用していたドイツ製のDSPほどの信頼性があるのか、正直不安もありました。しかし試しに使ってみた結果、音の違いに衝撃を受けたんです。出る音が素直でとにかく音質が良く、高い説得力があります」と岩元さんは語る。
本車両はYouTubeで展示を告知していたので、後述するイングラフのBMW「X6」と並び、お客さんがひっきりなしに試聴していた。実際に試聴した方も、「帰りに自分の車に乗って帰るのがショックです」というほどのインパクトがあったという。繰り返しになるがジャガーの音の情報量は今まで聴いたことがないほどで、サウンドステージ表現も含め、ハードウェアとインストーラーの技術が高度に融合されていたことを報告したい。
続いて紹介する車両は、VENTURE AUDIO、DYNAUDIO、BAラボを扱う佐藤商事が展示したBMW「X6」だ。この車両を知っているカーオーディオファンも多いはず。青森県の強豪ショップ、イングラフが制作し、2022年の「ハイエンドカーオーディオコンテスト」および「まいど大阪 秋の車音祭」で圧倒的な得点で優勝した車両である。この車両を目当てに来た来場者も多い。
オーディオシステムは、DAPがSONY「DMP-Z1」、DSPが「BRAX DSP(BLACK)」、スピーカー構成は4ウェイ+サブウーファーで、トゥイーターはベルギーのVENTURE AUDIO 「DD-Be1.5」、ミッドレンジ「DD-2SR MK2」、ミッドバス「DD-5」、シート下「DD-6.5XT」にサブウーファーは「DD-10」。アンプはイタリアのクワトロリゴ「La Prima Desiderio」(1台なんと242万円!)を4台で駆動する。
インストール費用を含め1000万円以上と大変コストのかかった車両だが、音質については奇をてらわない正統派+圧倒的な完成度。ソースに忠実な帯域バランス、分解能の高さ、左右に捩れがない立体的なサウンドステージを聴き取ることができる。
女性ボーカルは口元の動きがリアルだが、適度な色艶もあり聴き応えが良い。クラシックはオーケストラの各楽器の位置関係の提示や音場のデプスなども正確に表現しており、物量プラスインストーラーの腕の良さが印象に残る車両だった。
インストーラーはイングラフの代表である木村さん。車内空間に比較的余裕があるX6でも、機材の組み込みには苦労したそうだ。パワーアンプ「La Prima Desiderio」の重量は1台約18kg、それが4台搭載され約80kgもある。アンプを乗せるためトランクルームの強度や、電源供給にも気を使いキャパシターを追加したとのこと。
木村さんによると「アンプの能力に助けられたところもありますが、セッティングについてはそこまで難しくありませんでした。スピーカーの音調や特性を素直に引き出せたかなと感じています」とのこと。最初から念入りに機材選定やインストールをプランニングして、組み上げに入ったそうだが、“機材の値段分以上の音を出さなくてはいけない”というプレッシャーはかなりのもの。ハイエンドカーオーディオコンテストで優勝した時は、車両のオーナーが喜んでいるのを見て、胸いっぱいに込み上げてくるものがあったそうだ。
カーオーディオの音質が次の領域に入った
国内最高峰のカーオーディオが集結!コンテスト優勝カーなど「オートメッセ大阪2023」の注目車両をレポート
土方久明大阪オートメッセに“ピュアハイファイ”志向のカーオーディオが集結
2023年2月、僕は東京発〜新大阪行きの新幹線に乗った。最終的な目的地はインテックス大阪。2月10日より13日まで開催される関西園最大のカスタムカーのショー「オートメッセ2023」を見学するためだ。
僕はカスタムカーが大好きだ。今年は「東京オートサロン」も見学したけれど、大阪行きは楽しみで仕方なかった。関西地区のチューニング/カスタムカー事情もわかるし、事前情報によると、実力派カーオーディオショップやメーカーのデモカー5台が展示されるという。
現在のカーオーディオシーンはホームオーディオ同様のピュアハイファイのサウンドクラスが人気で、情報量、サウンドステージ、質感などを競い合っている、5台のデモカーを聴けば、今年のトレンドもわかるかもしれない。まずは会場全体を見学したあと、いよいよ5台の車両を試聴させてもらうことになったのだが……。
最初に話しておかなくてはいけない。展示された5台の車両のレベルは高く、中でもある1台の車両からは“カーオーディオの音質が次の領域に入った”ことを明示するようなサウンドを聴き取ることができたのだ。それでは5台を順に解説していきたい。
ジャガー F-TYPE クーペ tuned by AV Kansai
まずは今回試聴した一連の車両の中で衝撃を受けたジャガー「F-TYPE クーペ」をご紹介したい。大阪に本拠地を構えるAV Kansaiが出展した美しいオレンジのボディをまとったデモカーである。
インストールされたオーディオは、ソース機器にDAPのiBasso Audioの「DAP300APEX Ti」、DSPはRESOLUT「M-DSP」、スピーカー構成はフロント3ウェイ+サブウーファーで、トゥイーターはZE Speaker Labの「ZR Prestige 25N」、ミッドレンジは「ZR Prestige 9DD」、ミッドバスに「ZR Prestige 18W」、サブウーファーはGROUND ZERO「GZPW 10SQ」で、アンプはAUDIO WAVE「EXCEL」3台と「ASPIRE PRO JDP」1台で駆動している。
インストールしたシステムで特に興味深いのはDSPだ。RESOLUT(リゾルト)は筆者にとっても聞きなれない、ロシアのブランドのモデルである。だが何よりも驚いたのが、この車両が表現する圧倒的なサウンドだ。車内ではコンテスト課題曲からJ-POPまでさまざまな楽曲を聴いた。
あまり派手には書くつもりはない。しかし、音が出た瞬間に感じたのは、カーオーディオのクオリティが次の領域に入るような圧倒的な情報量と分解能で、さらにウインドウの外まで広がるサウンドステージが聴き取れる。筆者は昨年数多くのコンテストで審査させてもらったが、そんな自分でもすぐに理解できないほどの分解能とステージ表現に、車内で自身の感覚を一度リセットしたくらいだ。
インストールを担当したAV Kansaiの岩元さんによると、ジャガーの音質でキーとなったのは経験値とM-DSPの搭載だったという。「経験値は後悔の積み重ねによって得られたもの」であり、そしてコストがかかることを覚悟して安定化電源を入れたことと、DSPの搭載がポイントとなるとのことだ。
M-DSPは16ch(8ch+8ch)構成のプロセッサーで、なんとESS社の高性能DACチップ「ES9038PRO」の選別品を使った上、192kHz/64bitで全チャンネルを制御するというかなりのハイスペックなモデル。
「M-DSPの存在自体は知っていましたが、今まで使用していたドイツ製のDSPほどの信頼性があるのか、正直不安もありました。しかし試しに使ってみた結果、音の違いに衝撃を受けたんです。出る音が素直でとにかく音質が良く、高い説得力があります」と岩元さんは語る。
本車両はYouTubeで展示を告知していたので、後述するイングラフのBMW「X6」と並び、お客さんがひっきりなしに試聴していた。実際に試聴した方も、「帰りに自分の車に乗って帰るのがショックです」というほどのインパクトがあったという。繰り返しになるがジャガーの音の情報量は今まで聴いたことがないほどで、サウンドステージ表現も含め、ハードウェアとインストーラーの技術が高度に融合されていたことを報告したい。
BMW「X6」 tuned by イングラフ
続いて紹介する車両は、VENTURE AUDIO、DYNAUDIO、BAラボを扱う佐藤商事が展示したBMW「X6」だ。この車両を知っているカーオーディオファンも多いはず。青森県の強豪ショップ、イングラフが制作し、2022年の「ハイエンドカーオーディオコンテスト」および「まいど大阪 秋の車音祭」で圧倒的な得点で優勝した車両である。この車両を目当てに来た来場者も多い。
オーディオシステムは、DAPがSONY「DMP-Z1」、DSPが「BRAX DSP(BLACK)」、スピーカー構成は4ウェイ+サブウーファーで、トゥイーターはベルギーのVENTURE AUDIO 「DD-Be1.5」、ミッドレンジ「DD-2SR MK2」、ミッドバス「DD-5」、シート下「DD-6.5XT」にサブウーファーは「DD-10」。アンプはイタリアのクワトロリゴ「La Prima Desiderio」(1台なんと242万円!)を4台で駆動する。
インストール費用を含め1000万円以上と大変コストのかかった車両だが、音質については奇をてらわない正統派+圧倒的な完成度。ソースに忠実な帯域バランス、分解能の高さ、左右に捩れがない立体的なサウンドステージを聴き取ることができる。
女性ボーカルは口元の動きがリアルだが、適度な色艶もあり聴き応えが良い。クラシックはオーケストラの各楽器の位置関係の提示や音場のデプスなども正確に表現しており、物量プラスインストーラーの腕の良さが印象に残る車両だった。
インストーラーはイングラフの代表である木村さん。車内空間に比較的余裕があるX6でも、機材の組み込みには苦労したそうだ。パワーアンプ「La Prima Desiderio」の重量は1台約18kg、それが4台搭載され約80kgもある。アンプを乗せるためトランクルームの強度や、電源供給にも気を使いキャパシターを追加したとのこと。
木村さんによると「アンプの能力に助けられたところもありますが、セッティングについてはそこまで難しくありませんでした。スピーカーの音調や特性を素直に引き出せたかなと感じています」とのこと。最初から念入りに機材選定やインストールをプランニングして、組み上げに入ったそうだが、“機材の値段分以上の音を出さなくてはいけない”というプレッシャーはかなりのもの。ハイエンドカーオーディオコンテストで優勝した時は、車両のオーナーが喜んでいるのを見て、胸いっぱいに込み上げてくるものがあったそうだ。
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