公開日 2024/06/21 12:36
<山本敦のAV進化論 第215回>
iPhone 16は何が変わる?アップル「WWDC24」の発表から、秋の新製品を大胆予想
山本 敦
アップルが2024年の世界開発者会議「WWDC24」で、独自開発の生成AIプラットフォーム「Apple Intelligence」や、基幹プロダクト向け次期OSのアップデートを一斉に発表した。
その内容に注目すると、おぼろげながらも次の新製品の姿が浮かび上がってきたように見える。本コラムでは、次のiPhoneやiPadについて筆者の予想を語ってみたい。
iPhoneは順当に行けば次のナンバリングが「16」だ。例年通りProシリーズとスタンダードシリーズに分かれるとすれば、スタンダードモデルには現在のiPhone 15 Proシリーズが搭載するA17 Proに相当するチップが引き継がれるだろう。AppleシリコンがさらにパワーアップするiPhone 16は、Apple Vision Proとのつながりが深くなりそうだ。
iPhone 15 ProシリーズはトリプルレンズカメラとNeural Engineの潤沢なパフォーマンスを活かして、現行iPhoneの中で唯一「空間ビデオ撮影」に対応する。本体を横向きに構えた時に、広角・超広角カメラを使って4K高解像度の空間ビデオ撮影モードになる。
Apple Vision Proは画期的な空間コンピュータだが、今後より多くの興味を惹くためには視聴できるコンテンツを拡大しなければならない。世界中のiPhone、またはApple Vision Proのユーザーが撮影した空間ビデオと空間フォトをクラウド上のライブラリに公開して、没入体験を共有できるアップル独自のプラットフォームがあれば、Apple Vision Proのユーザーに歓迎されそうだ。
空間コンテンツが撮れるiPhoneは多い方がいい。アップルが秋に発売するiPhoneはProシリーズだけでなく、すべての16シリーズで空間ビデオが撮れるようになると筆者は予想する。伴って、再び背面のデュアルカメラシステムの広角・超広角カメラはiPhone 14シリーズと同じ一直線の配列に戻るのではないだろうか。
Apple Vision Proの次期visionOS 2には、ユーザーがiPhoneのフォトフォルダに保存したふつうの2D画像を、機械学習によりVision Proで空間写真に変換して見られる機能が載る。映画や音楽コンサートなどのエンターテインメントが出揃うまで待たなくても、当面はユーザーが生成する空間コンテンツだけで退屈をしのげそうだ。
この秋、OSとSiriの言語を米国英語にセットしたiPhone/iPad/Macから、アップル独自の生成AIプラットフォームである「Apple Intelligence」が使えるようになる。同時にSiriのユーザーインターフェースが大きく変わる。
従来のようにSiriに話しかけると、画面のエッジが光る新しいビジュアルエフェクトとともにSiriが起動する。筆者もWWDCの取材中にSiriの新UIが動く様子を目の当たりにした。基調講演のビデオでも紹介されていたが、Siriにテキストタイピングで質問を入力する際には、画面の下端をダブルタップしてソフトウェアキーボードを呼び出すのだが、この操作方法が不自然でアップルらしさを感じなかった。
一部海外のメディアなどが、次期iPhoneのデザインはサイドフレームからも操作ボタンがなくなるとウワサしている。代わりにMacやiPad用Magic Keyboardが搭載する感圧タッチトラックパッドがiPhoneのサイドフレームに搭載されるとすれば、iPhoneのどこかの部分を片手でスクイーズする(握る)操作方法で素速くSiriを呼び出だしたり、ダブルスクイーズでソフトウェアキーボードが起動できるようになるかもしれない。新しいビジュアルエフェクトにも馴染むように思う。
次期iPadの進化も、Apple Intelligenceとの関わりに注目したい。今後アップルが本気でApple Intelligenceを普及させるつもりなら、第11世代の無印iPadにも、Apple Intelligenceの動作環境条件である「Appleシリコンの搭載」を進めるべきだ。無印iPadのポジションを考えると、スケールメリットが活かせるであろうApple M2、もしくはApple M1世代のチップとの相性が良さそうだ。
Apple Watchの次期watchOS 11には、ユーザーの行動に合わせて、必要な情報をタイムリーに届けるウィジェット機能「スマートスタック」がある。ウィジェットの種類種類は音楽の聴き取り検索「Shazam」や、watchOSに初登場の「翻訳」などにも広がる。
翻訳アプリを追加すると、Apple Watchは内蔵するマイクでユーザーの声を聴き取ったり、テキストタイピングにより日本語・英語を含む20の言語を扱えるリストバンド型の自動翻訳機になる。言語の辞書データをウォッチにダウンロードしておけば、翻訳アプリはオフライン環境でも使える。
これらwatchOS 11のスマートな機能のバックグラウンドでは、機械学習によるアルゴリズムがフル回転している。新しい機能の動作を安定させるためには、強力なNeural Engineを統合するチップをApple Watchに載せたい。
さらに、watchOS 11にはApple Watchのビギナーにも優しい新機能が載る。ウォッチが計測する心拍数/呼吸数/手首皮膚温/血中酸素レベル/睡眠時間のデータに横串を刺して健康指標を届ける「バイタル」アプリや、日々のワークアウトの成果からユーザーにふさわしいトレーニングの指標を提案する「トレーニングの負荷」などが好例だ。
アップルがユーザー層のさらなる拡大にアクセルを踏むなら、そろそろ新しい「Apple Watch SE」が登場してもいい頃合いだ。機械学習に由来する機能が快適に使えるように、現行上位機種のApple Watch Series 9やUltra 2が搭載するAppleシリコン「S9」に相当する高パフォーマンスのチップを次のSEに採用しても不思議はない。
iPad Proが先駆けて搭載した最先端のAppleシリコン「M4」は、秋以降にMacにも広がるのだろうか。今年のWWDCで発表された情報から読み解けることは少ないが、順序からすれば現在Apple M2シリーズのチップを搭載する据え置き型のMac StudioやMac miniがモデルチェンジを迎える頃だ。Apple M3を飛び越えて、一息にApple M4ベースのPro、Max、Ultraなど上位チップも拡大するのか注目したい。
WWDCでは第2世代のAirPods Proを対象とするソフトウェアアップデートにより、首ふりジェスチャー操作とゲーム音声の低レイテンシー化、通話時に話者の声だけを分離して明瞭にする機械学習に由来する新機能が加わることが発表された。
以下は新しいプロダクトの予想というより、筆者の要望のようなものだが、これほど充実する機能を楽しめるAirPodsシリーズが“Proだけ”というのはもったいない。そろそろAirPodsシリーズに新ラインナップが加わることを期待したくなる。
ワイヤレスヘッドホンのAirPods Maxもここしばらくアップデートされていないが、首ふりジェスチャーや通話機能の向上が直近のメリットになるタイプの製品ではないと筆者は思う。
むしろApple Vision Proと一緒に装着してロスレスオーディオを聴いたり、周囲の環境音にも注意を向けながら、Apple Vision Proで再生しているコンテンツの音を外に漏らさず楽しめる完全開放型のAirPodsが登場すれば、不完全なパズルを埋めるピースになる。半密閉型の無印AirPodsが久しぶりにリニューアルされるのか、または名前とデザインも完全に新しい「AirPods X」が誕生するのか。今秋はアップルの新製品ラッシュが期待できそうだ。
その内容に注目すると、おぼろげながらも次の新製品の姿が浮かび上がってきたように見える。本コラムでは、次のiPhoneやiPadについて筆者の予想を語ってみたい。
■Apple Vision Proの拡大をアシストするiPhone 16
iPhoneは順当に行けば次のナンバリングが「16」だ。例年通りProシリーズとスタンダードシリーズに分かれるとすれば、スタンダードモデルには現在のiPhone 15 Proシリーズが搭載するA17 Proに相当するチップが引き継がれるだろう。AppleシリコンがさらにパワーアップするiPhone 16は、Apple Vision Proとのつながりが深くなりそうだ。
iPhone 15 ProシリーズはトリプルレンズカメラとNeural Engineの潤沢なパフォーマンスを活かして、現行iPhoneの中で唯一「空間ビデオ撮影」に対応する。本体を横向きに構えた時に、広角・超広角カメラを使って4K高解像度の空間ビデオ撮影モードになる。
Apple Vision Proは画期的な空間コンピュータだが、今後より多くの興味を惹くためには視聴できるコンテンツを拡大しなければならない。世界中のiPhone、またはApple Vision Proのユーザーが撮影した空間ビデオと空間フォトをクラウド上のライブラリに公開して、没入体験を共有できるアップル独自のプラットフォームがあれば、Apple Vision Proのユーザーに歓迎されそうだ。
空間コンテンツが撮れるiPhoneは多い方がいい。アップルが秋に発売するiPhoneはProシリーズだけでなく、すべての16シリーズで空間ビデオが撮れるようになると筆者は予想する。伴って、再び背面のデュアルカメラシステムの広角・超広角カメラはiPhone 14シリーズと同じ一直線の配列に戻るのではないだろうか。
Apple Vision Proの次期visionOS 2には、ユーザーがiPhoneのフォトフォルダに保存したふつうの2D画像を、機械学習によりVision Proで空間写真に変換して見られる機能が載る。映画や音楽コンサートなどのエンターテインメントが出揃うまで待たなくても、当面はユーザーが生成する空間コンテンツだけで退屈をしのげそうだ。
■Siriの変化がiPhoneにもたらすもの
この秋、OSとSiriの言語を米国英語にセットしたiPhone/iPad/Macから、アップル独自の生成AIプラットフォームである「Apple Intelligence」が使えるようになる。同時にSiriのユーザーインターフェースが大きく変わる。
従来のようにSiriに話しかけると、画面のエッジが光る新しいビジュアルエフェクトとともにSiriが起動する。筆者もWWDCの取材中にSiriの新UIが動く様子を目の当たりにした。基調講演のビデオでも紹介されていたが、Siriにテキストタイピングで質問を入力する際には、画面の下端をダブルタップしてソフトウェアキーボードを呼び出すのだが、この操作方法が不自然でアップルらしさを感じなかった。
一部海外のメディアなどが、次期iPhoneのデザインはサイドフレームからも操作ボタンがなくなるとウワサしている。代わりにMacやiPad用Magic Keyboardが搭載する感圧タッチトラックパッドがiPhoneのサイドフレームに搭載されるとすれば、iPhoneのどこかの部分を片手でスクイーズする(握る)操作方法で素速くSiriを呼び出だしたり、ダブルスクイーズでソフトウェアキーボードが起動できるようになるかもしれない。新しいビジュアルエフェクトにも馴染むように思う。
次期iPadの進化も、Apple Intelligenceとの関わりに注目したい。今後アップルが本気でApple Intelligenceを普及させるつもりなら、第11世代の無印iPadにも、Apple Intelligenceの動作環境条件である「Appleシリコンの搭載」を進めるべきだ。無印iPadのポジションを考えると、スケールメリットが活かせるであろうApple M2、もしくはApple M1世代のチップとの相性が良さそうだ。
■価格も手頃な「Apple Watch SE」の刷新は確定か
Apple Watchの次期watchOS 11には、ユーザーの行動に合わせて、必要な情報をタイムリーに届けるウィジェット機能「スマートスタック」がある。ウィジェットの種類種類は音楽の聴き取り検索「Shazam」や、watchOSに初登場の「翻訳」などにも広がる。
翻訳アプリを追加すると、Apple Watchは内蔵するマイクでユーザーの声を聴き取ったり、テキストタイピングにより日本語・英語を含む20の言語を扱えるリストバンド型の自動翻訳機になる。言語の辞書データをウォッチにダウンロードしておけば、翻訳アプリはオフライン環境でも使える。
これらwatchOS 11のスマートな機能のバックグラウンドでは、機械学習によるアルゴリズムがフル回転している。新しい機能の動作を安定させるためには、強力なNeural Engineを統合するチップをApple Watchに載せたい。
さらに、watchOS 11にはApple Watchのビギナーにも優しい新機能が載る。ウォッチが計測する心拍数/呼吸数/手首皮膚温/血中酸素レベル/睡眠時間のデータに横串を刺して健康指標を届ける「バイタル」アプリや、日々のワークアウトの成果からユーザーにふさわしいトレーニングの指標を提案する「トレーニングの負荷」などが好例だ。
アップルがユーザー層のさらなる拡大にアクセルを踏むなら、そろそろ新しい「Apple Watch SE」が登場してもいい頃合いだ。機械学習に由来する機能が快適に使えるように、現行上位機種のApple Watch Series 9やUltra 2が搭載するAppleシリコン「S9」に相当する高パフォーマンスのチップを次のSEに採用しても不思議はない。
■M4搭載Macや新AirPodsにも期待
iPad Proが先駆けて搭載した最先端のAppleシリコン「M4」は、秋以降にMacにも広がるのだろうか。今年のWWDCで発表された情報から読み解けることは少ないが、順序からすれば現在Apple M2シリーズのチップを搭載する据え置き型のMac StudioやMac miniがモデルチェンジを迎える頃だ。Apple M3を飛び越えて、一息にApple M4ベースのPro、Max、Ultraなど上位チップも拡大するのか注目したい。
WWDCでは第2世代のAirPods Proを対象とするソフトウェアアップデートにより、首ふりジェスチャー操作とゲーム音声の低レイテンシー化、通話時に話者の声だけを分離して明瞭にする機械学習に由来する新機能が加わることが発表された。
以下は新しいプロダクトの予想というより、筆者の要望のようなものだが、これほど充実する機能を楽しめるAirPodsシリーズが“Proだけ”というのはもったいない。そろそろAirPodsシリーズに新ラインナップが加わることを期待したくなる。
ワイヤレスヘッドホンのAirPods Maxもここしばらくアップデートされていないが、首ふりジェスチャーや通話機能の向上が直近のメリットになるタイプの製品ではないと筆者は思う。
むしろApple Vision Proと一緒に装着してロスレスオーディオを聴いたり、周囲の環境音にも注意を向けながら、Apple Vision Proで再生しているコンテンツの音を外に漏らさず楽しめる完全開放型のAirPodsが登場すれば、不完全なパズルを埋めるピースになる。半密閉型の無印AirPodsが久しぶりにリニューアルされるのか、または名前とデザインも完全に新しい「AirPods X」が誕生するのか。今秋はアップルの新製品ラッシュが期待できそうだ。