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公開日 2024/07/17 01:00
「iPhoneのプライバシー」映像がYouTube等で公開

iPhoneユーザーがブラウザ「Safari」を選ぶメリットとは?プライバシー保護の観点から考える

山本 敦

■「iPhoneのプライバシー」映像がYouTube等で公開



アップルが新しく制作した「iPhoneのプライバシー」の映像広告を公開

アップルはiPhoneにMacなど、自社のデバイスに標準搭載する「Safari」が検索スピードの速さ、低消費電力、およびプライバシー保護のための機能が充実するウェブブラウザであることを以前からアピールしている。

このほどアップルがSafariによるプライバシー保護にスポットを当てた「iPhoneのプライバシー」というタイトルの映像広告を公開した。アップルのYouTube公式チャンネルからも視聴できる。

街中の至るところに設置された監視カメラに突然翼が生えて、私たちの手にあるiPhoneの画面をのぞき見ようと迫ってくる…。不気味なホラータッチで描かれる映像と、コミカルなシナリオのミスマッチに引き付けられる。アップルは同時期にiPhoneのプライバシーをテーマにした街頭広告、ウェブのデジタルバナーも広く展開する。

今回の新しい映像広告は、iPhoneユーザーがウェブをブラウジングする最中にもプライバシーが脅かされている様子を視覚的にわかりやすく表現することをテーマとしている。

では、最新バージョンのSafariにはユーザーのプライバシー保護を目的としたどのような機能があり、その効果はどんな時に実感できるだろうか。

■しつこく表示されるウェブ広告に対処するSafariのトラッキング防止機能



あるECサイトで商品を探したり、旅行やサービスに関する情報を検索すると、次回ウェブサイトやSNSを立ち上げた時に、直前に検索内容に関連する広告がしつこいほど表示されて困ることはないだろうか?

ウェブの誕生以来、広告目的でウェブサイトにまたがってユーザーのブラウジング行動を追跡するトラッキング技術が生まれ、成熟してきた。トラッキング技術をユーザーにとって有用なものとして受けとめるならば、例えば探している商品やサービスに素速くたどり着くことができたり、意外な関連情報との出会いを促進するメリットがある。

でも一方では、ユーザーが意図していないところで望まないトラッキングが行われることにより、ユーザーの大切な個人情報が第三者によって不正に売買・利用されていることがある。あるいは個人情報を元にクレジットカードの情報や各種パスワードがハッキングされたり、ユーザーが望まぬ事態に発展する可能性もゼロではない。

アップルはSafariに高度なトラッキング防止機能を搭載することに注力してきた。現在のSafariには、ウェブ広告の配信などを目的とする追跡用のCookie(クッキー)を判別して、これに利用制限をかけたり、アクセスの遮断を行うための「サイト越えトラッキングの防止」機能がある。この機能をオンにしたSafariであれば、冒頭の不要な広告がしつこく表示されるようなウェブ体験が大幅に解消される。

iOS版Safariの画面。設定アプリから「Safari」を選択。画面をスクロールすると「サイト越えトラッキングを防ぐ」機能の選択ができる

アップルは広告目的のトラッキング行為をすべて否定しているわけではない。Safariの設定項目にある「サイト越えトラッキングを防ぐ」機能のオン・オフはユーザーが任意に選べるようになっている。アップルが目指すのは、同社のデバイスやSafariを利用するユーザー個人が、のぞまないトラッキング行為による不利益を被ることなく、安全・安心にウェブブラウジングが楽しめる環境を整えることだ。

macOS版Safari。アプリケーションの「設定」から「プライバシー」タブを選択すると機能のオン・オフが選べる

■Safariは不正なトラッキングを機械学習で防止



そのために、アップルはSafariに搭載するプライバシー保護の機能を日々ブラッシュアップしている。近年追加された「Intelligent Tracking Prevention(インテリジェント追跡防止)」という機能は機械学習のアルゴリズムをベースにしている。ユーザーを追跡するために使われるドメインを学習して、デバイスから追跡データを分離して消去することによって、不正なトラッキングをより協力にブロックする。インテリジェント追跡防止がブロックした成果は、Safariの標準機能である「プライバシーレポート」から、ユーザーが任意のタイミングでチェックできる。

Safariのプライバシーレポート。ウェブサイト間でのトラッキングが行われた頻度を確認できる

たとえユーザーが不正なトラッキングの防止策を講じていたとしても、ウェブブラウジングの際に取得されるブラウザアプリやデバイスの情報、システムにインストールされているフォントやプラグインなどの情報を元に「フィンガープリント(指紋)」を作成して個人を特定、トラッキングを行う技術も世の中には確立されている。このフィンガープリントに対抗するため、アップルのSafariは通信が発生する際にシステム構成などの情報を事前に簡略化。多くのデバイスが似通って見えるようにして、特定を困難にする技術も編み出した。

アップルはSafariのトラッキング防止機能を常時強化している。近年の事例を挙げるならば「リンクトラッキング保護」だ。ユーザーがメッセージやメールで共有するURLに不要なトラッカーが追加され、このトラッキングURLから不要な追跡が行われる場合がある。Safariはこのリンクトラッキングも無効化できる。

■プライベートブラウズ機能の積極的な活用を



一部のウェブブラウザは検索フィールドに入力される情報を元に、ユーザーの位置情報を検索エンジンに共有する場合がある。Safariは位置データを検索エンジンに共有しない。ただし、ユーザーが現在いる場所に近くにあるレストランやショップを探したい時などには、意図的に位置情報を活用できるように「利用を許可」する機能も搭載している。

いま主流のウェブブラウザにはデザインや動作をカスタマイズできる「機能拡張」を提供するものがある。機能拡張は便利な反面、ブラウザ内の情報にアクセスしてプライバシーをのぞき見られるリスクを抱えることにもなる。Safariの場合、機能拡張がユーザーの個人情報にアクセスしようとした場合に「許可」を求める機能がある。その細かな設定は「1日だけ許可」「常に許可」などユーザーが必要に応じて、自分の意志で決められるようになっている。

Safariの機能拡張にプライバシー関連の情報されないようにブロックする機能もある

2005年に、アップルはSafariに「プライベートブラウジング」の機能を他社のブラウザに先駆けて実装した。現在ユーザーがSafariのプライベートブラウズを選択すると、タブを閉じた後に閲覧したウェブページや検索履歴、自動入力情報がSafariから消去される。

設定アプリから「Safari」を選択、「プライベートブラウズをロック解除するにはFace ID (または Touch ID) が必要」の設定をオンにすると、ユーザーがブラウザアプリを使用していない間は画面にロックがかかる。プライベートブラウズで調べていた内容を他人に見られる心配がさらに低減される。

ユーザーのプライバシーに関する情報を守りながらより安全にウェブブラウジングが楽しめるSafariのプライベートブラウジング機能

プライベートブラウズのメリットは不正なトラッキングがブロックできるだけではない。iPhoneはともかく、家族や職場の同僚などと共有して使う機会も多いiPadを使ってウェブ検索を行う場合には特に有効だ。

かたやデメリットとしては、少し前に検索した情報を振り返りたい時などに閲覧履歴が使えない等の不便も伴う。Safariの様々なプライバシー機能を上手に活用しながら、安心・安全なデジタルライフスタイルを探求したい。

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