AES 2009プロダクトセミナーレポート
Neural Audio担当者&NHK技術者が語る「DTS Neural Surround」の魅力
08年末に米DTS傘下入りを果たしたマルチチャンネルのエンコード/デコード技術「Neural Surround」を保有するNeural Audio社。同社はMP3などのステレオ圧縮フォーマットをマルチチャンネルで再生する技術や、5.1chのソフトをリアルタイムに変換し7.1chで再生する家庭用ゲーム向けの技術など多様なエンコード/デコード技術を保有しているが、特に得意としているのが放送局用の圧縮技術だ。
日本の現場ではまだあまり馴染みのないDTS Neural Surroundだが、海外では既にアメリカの公共ラジオ局「NPR(National Public Radio)」や、「HD Radio」「XM Radio」といった衛星ラジオ局、スポーツ専門チャンネル「ESPN」などで採用されている。
今年7月に都内で開催された「AES 東京コンベンション 2009」最終日の25日、DTS Neural Audio 担当のVice President, Business DevelopmentのGeir Skaaden氏が来日し、日本の放送関係者に向けてDTS Neural Surroundを紹介するプロダクトセミナーを行った(関連ニュース)。
セミナーの内容、Skaaden氏の独自インタビュー、そして実際にDTS Neural SurroundのUp Mixer(デコーダー)を使用しているNHK広島放送局 技術部の北島正司氏のコメントを交えながら「DTS Neural Surround」に迫っていきたい。
■「リアルタイムに」「簡単に」エンコードできるDTS Neural Surround
まず前提として、サラウンド音声のエンコード方法には各トラックごとに個別に信号をエンコードする「ディスクリート方式」と、複数のトラックを2chのLt/Rt信号にエンコードして記録する「マトリックス方式」があり、DTS Neural Surroundはマトリックス方式のエンコード技術である。
一般的に音の分離が良いディスクリート方式(DTS Digital Surroundなど)の方がよりオリジナルに近く質の高いエンコーディングが可能とされているが、マトリックス方式にはステレオとサラウンドの信号をそれぞれ生成しなくても単一のLt/Rt信号でどちらも管理できるというメリットがある。
たとえば収録番組であればポストプロダクションを介してディスクリート方式でエンコードする時間があるが、生中継の場合、放送局は2chステレオと5.1chサラウンドの2つの音声信号をリアルタイムに生成する必要があり、単一のLt/Rt信号で管理できるマトリックス方式の方が手間がかからず使い勝手が良い。対応デコーダーを所有していないコンシューマーはこのLt/Rt信号を2chで再生し、対応デコーダーを所有しているコンシューマーは5.1chで再生することができる。
Skaaden氏は「DTS Neural Surroundの優位性はオリジナルの状態を極力損なわずにダウンミックスできるリアルタイムエンコーディング技術にあります。リアルタイム変換の必要がない場合はDigital Surroundなどを利用すべきですが、生中継ではそういうわけにはいきません。DTS Neural Surroundのエンコーダーはパラメーターも少なく現場での操作も簡単。正規のサラウンド技術を使用できない状況下での代替手段として提案していきたい」とし、DTS Neural Surroundはあくまで“alternativeなもの”であるという考えを示す。
しかし“alternativeなもの”としての利用用途は多岐にわたり、HDテレビ放送でDTS Neural Surroundを使用するメリットは大きいとも指摘する。「DTS Neural Surroundはステレオ信号とサラウンド信号の互換性があります。また、まだ5.1ch環境が整っていない放送局もありますが、現行のステレオネットワーク下でもサラウンドのデコード/エンコードを行うことができます。さらにラジオのようなSD、圧縮型のネットワークの場合でも、コンシューマーはサラウンドをたのしむことが可能です」とあらゆる状況下で使用できると説明する。
■NHK広島放送局の技術者が語るDTS Neural Surroundの魅力
実際にDTS Neural SurroundのUp Mixer(デコーダー)を現場で導入しているNHK広島放送局の北島氏は、DTS Neural Surroundの特徴として「センターの抽出がよい」「難しい操作が不要」といった点を挙げる。
特にセンターの抽出は他社の機器ではカバーできなかった部分であり、その性能には驚いたという。「NHKでは行っていませんが、野球中継をサラウンド放送するとき、現場から放送局までの回線がステレオでしか確保できない場合、現場では2chで制作して放送局側でDTS Neural Surroundのデコーダーを使用して5.1chにすることがあります。DTS Neural Surroundのデコーダーはセンターの抽出が優れているので、中継アナウンサーのコメントがきっちりとセンターから聞こえます。他社のデコーダーでこの作業をするとL/Rがメインになってしまい5.1chの特色を生かすことができないのです」と感想を語ってくれた。
日本の現場ではまだあまり馴染みのないDTS Neural Surroundだが、海外では既にアメリカの公共ラジオ局「NPR(National Public Radio)」や、「HD Radio」「XM Radio」といった衛星ラジオ局、スポーツ専門チャンネル「ESPN」などで採用されている。
今年7月に都内で開催された「AES 東京コンベンション 2009」最終日の25日、DTS Neural Audio 担当のVice President, Business DevelopmentのGeir Skaaden氏が来日し、日本の放送関係者に向けてDTS Neural Surroundを紹介するプロダクトセミナーを行った(関連ニュース)。
セミナーの内容、Skaaden氏の独自インタビュー、そして実際にDTS Neural SurroundのUp Mixer(デコーダー)を使用しているNHK広島放送局 技術部の北島正司氏のコメントを交えながら「DTS Neural Surround」に迫っていきたい。
■「リアルタイムに」「簡単に」エンコードできるDTS Neural Surround
まず前提として、サラウンド音声のエンコード方法には各トラックごとに個別に信号をエンコードする「ディスクリート方式」と、複数のトラックを2chのLt/Rt信号にエンコードして記録する「マトリックス方式」があり、DTS Neural Surroundはマトリックス方式のエンコード技術である。
一般的に音の分離が良いディスクリート方式(DTS Digital Surroundなど)の方がよりオリジナルに近く質の高いエンコーディングが可能とされているが、マトリックス方式にはステレオとサラウンドの信号をそれぞれ生成しなくても単一のLt/Rt信号でどちらも管理できるというメリットがある。
たとえば収録番組であればポストプロダクションを介してディスクリート方式でエンコードする時間があるが、生中継の場合、放送局は2chステレオと5.1chサラウンドの2つの音声信号をリアルタイムに生成する必要があり、単一のLt/Rt信号で管理できるマトリックス方式の方が手間がかからず使い勝手が良い。対応デコーダーを所有していないコンシューマーはこのLt/Rt信号を2chで再生し、対応デコーダーを所有しているコンシューマーは5.1chで再生することができる。
Skaaden氏は「DTS Neural Surroundの優位性はオリジナルの状態を極力損なわずにダウンミックスできるリアルタイムエンコーディング技術にあります。リアルタイム変換の必要がない場合はDigital Surroundなどを利用すべきですが、生中継ではそういうわけにはいきません。DTS Neural Surroundのエンコーダーはパラメーターも少なく現場での操作も簡単。正規のサラウンド技術を使用できない状況下での代替手段として提案していきたい」とし、DTS Neural Surroundはあくまで“alternativeなもの”であるという考えを示す。
しかし“alternativeなもの”としての利用用途は多岐にわたり、HDテレビ放送でDTS Neural Surroundを使用するメリットは大きいとも指摘する。「DTS Neural Surroundはステレオ信号とサラウンド信号の互換性があります。また、まだ5.1ch環境が整っていない放送局もありますが、現行のステレオネットワーク下でもサラウンドのデコード/エンコードを行うことができます。さらにラジオのようなSD、圧縮型のネットワークの場合でも、コンシューマーはサラウンドをたのしむことが可能です」とあらゆる状況下で使用できると説明する。
■NHK広島放送局の技術者が語るDTS Neural Surroundの魅力
実際にDTS Neural SurroundのUp Mixer(デコーダー)を現場で導入しているNHK広島放送局の北島氏は、DTS Neural Surroundの特徴として「センターの抽出がよい」「難しい操作が不要」といった点を挙げる。
特にセンターの抽出は他社の機器ではカバーできなかった部分であり、その性能には驚いたという。「NHKでは行っていませんが、野球中継をサラウンド放送するとき、現場から放送局までの回線がステレオでしか確保できない場合、現場では2chで制作して放送局側でDTS Neural Surroundのデコーダーを使用して5.1chにすることがあります。DTS Neural Surroundのデコーダーはセンターの抽出が優れているので、中継アナウンサーのコメントがきっちりとセンターから聞こえます。他社のデコーダーでこの作業をするとL/Rがメインになってしまい5.1chの特色を生かすことができないのです」と感想を語ってくれた。
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