かないまる×アイ・オーが明かす、高音質NAS「RockDiskNext」DSD対応の裏側

RockDiskNextのDSD対応アップデートは
かないまるの要望がきっかけで実現した

金井：　そしてイベント後も開口さんとのやり取りは続いて、いよいよ私が「これDSD対応してくれませんか？」と言い始めたわけです。

開口：　最初は雑談レベルでしたけど「これは金井さん本気だな」って思いました（笑）。

金井：　AVアンプにとって、DSD対応は1つの課題でした。最近のネットワーク再生は “ハイレゾ”がトレンドとして注目されていますが、DSDに対応することで胸を張って“ハイレゾ対応AVアンプ”と言えます。DSDは“ハイレゾの通行手形”みたいなものですね。そんな流れで今年9月にTA-DA5800ESのDSD対応アップデートを実施したんです。

でも、ここで困るのがNASなんですよ。DSD対応を決めた時点で、対応NASは一機種だけ。しかも高価です。ユーザー側としては種類は多いほどいいし、低価格なものも欲しい。RockDiskNextがDSDに対応することでネットワークオーディオの世界がさらに盛り上がっていくことの期待を込めてお願いしたんです。

開口：　ご要望を頂いた時点では、実装はお約束はできませんでした。RockDiskNextはそれまでオーディオ向けの展開もしていませんし、既に発売9か月目を迎えていましたから。単にアップデート開発するというだけではなく、ビジネスモデルの再検討が必要でした。そこで重要だったのが、「RockDiskNextは本当にオーディオ向けにおすすめできるNASであると確信を持てるか？」ということでした。

オーディオ用のNASとして使っていただくための潜在的な検討は企画段階から行っていましたが、DSD対応をお客様にお薦めできるだけの音質に達しているのか。追加の開発をするためにはお客様に喜んで頂けるという確信を持ちたい。そこで、オーディオファンなら誰もが一度は訪れたい「かないルーム」で実際にDSDの音を聴かせて欲しいとお願いしました。役得ですね（笑）

金井：　いらっしゃったのは8月8日でしたね。

開口：　はい。そこではまず色々なNASを聴かせて頂いんですが、想像以上にNASによって音が変わることを体感しました。そしてなんと、当時まだ対応していなかったRockDiskNextでのDSD再生をやって頂いたんです。

金井：　ちょうどこの当時、DSD非対応NASに“特別な処理”をすることで、TA-DA5800ESでDSD再生する実験をしていました。当日同席していたソフト設計者が、突然「金井さん、RockDiskNextでDSDが聴けるかもしれません」と言い出したんです。この“特別な処理”に対応するかどうかはNAS次第なんですが、RockDiskNextは対応するタイプで、音が出たんですよ。

開口：　いやー、すごかったですよね。

金井：　すごかったです。信じがたいような良い音がしました。音場が押し寄せて来る感じというか。2チャンネルなのに、下手なサラウンドより音場がリッチで音色も良い。とにかくすごい音でした。

開口：　当社の方も私以外にも社員が同席していまして、彼らはオーディオと縁のないメンバーなんですが、「理由はともかく音は変わるぞ」と全員が納得せざるを得ませんでした。私自身はというと、音を聴きながら「これは商品化の価値がある」と確信しました。その後、会社からOKが出て、お盆明けにはRockDiskNextのDSD対応アップデートが決定しました。

金井：　早かったよねえ（笑）。でも本当は、開口さんが個人的にDSD対応したRockDiskNextを使いたいからアップデートが決定したんですよね？（笑）

開口：　いやいやいや（笑）。ただ、私個人もオーディオが好きなので、DSD再生の裾野を広げたいという思いが生まれました。このとき金井さんに聴かせて頂いたTA-DA5800ESの音は、それくらいの衝撃、最高の体験でした。今日もこの対談の前に色々お聴かせ頂きましたが、特にDSDのマルチ・チャンネル・サラウンドは驚くべきものですね。サラウンドスピーカーは私たちの後ろに存在するのに、実際はフロントスピーカーの後ろにステージが浮かぶかのように音が聴こえてくるんですから。