【特別企画】日本独自に進化する音質
Unique Melody最新イヤホン「MAVIS」「MACBETH」の進化を、開発者・評論家・編集部の“3者視点”で探る
【3】MAVERICKカスタム版ユーザー・編集部 小澤が聴く、“MAVIS&MACBETHの最新サウンド”
最後に、Unique Melody製品を普段から使っている“ユーザーの目線”でMAVIS&MACBETHを見ていきたい。Unique Melodyとミックスウェーブが共同開発したカスタムIEM「MAVERICK カスタム版」を使用し、Unique Melodyの音を聴き慣れているPhile-web編集部・小澤貴信が、MAVIS&MACBETHの最新サウンドを語る(小澤による「MAVERICK カスタム版」検証記事はこちら)。
▼小澤が語る、MAVISのサウンド
MAVISについては、やはりまず低域部のドライバー構成が「ダブル・ダイナミックドライバー」という部分に注目がいきますよね。普通なら「そうとうきわどいかも」と身構えてしまうところなんですが、MAVERICKで「ダイナミック+BA」の構成で非常に完成度の高い低域再現を実現したUnique Melodyなので、むしろどんなものだろうと期待しながら聴いてみました。
実際試聴してみると、想像以上に「ダブル・ダイナミックドライバー」であることを意識させない音だったので、一瞬あっけにとられました。今回一緒に試聴したMACBETHと比べて、よりMAVERICKに近い、空間の自然な広がりと見通しの良さを感じます。楽器の音色の豊かさも、MAVERICKの印象により近いです。
ぱっと聴いて「これは低音を強化したイヤホンだな」という印象はなく、むしろ音色や空間再現性のクオリティについて感じるところが大きかったんです。でも、落ち着いてよく聴いてみると、そうした音色や空間の再現を下支えしているのが低域であることにすぐ気がつきます。
MAVISの低音は、ダイナミック2発という構成が、低域の量感ではなく、むしろ低域の質感や密度感を高める方向に働いていると感じました。プレスリリースに「低域に深みを持たせた」とありましたが、帯域的な「深さ」はもちろん、味わい深いという方向性の「深みのある低音」だなと。
AK240に組み合わせて聴くと、低域の楽器の「階調表現」がとても滑らかです。ウッドベースは弦の立ち上がりから減衰していくまで、とてもリアル。エレクトロ系のシンセベースを聴いても、独特の粘りを引き出してくれて心地よいです。
これまでの言い方だと、量感が大して無いように聞こえてしまうかもしれませんが、“実在感”を伴った量感もしっかり確保されています。特にキックドラムなどでは、本機でしか聴けない厚みを味わうことができました。質感は良いけど量感を含めた実在感までダウンサイジングした「精巧なミニチュア」的な低音ではなく、空気を通してライブで聴いたときの等身大の低音に近づけたいのではないかという意図を感じましたし、それは成功していると思いました。
iPhoneとも組みあわせて聴いてみましたが、相性は良いと思います。全体として、強靱かつより深みの増した低音の下支えがあるから、中高域の声や楽器を安心して聴ける、そんな魅力を感じました。低域再現にこだわりを持っている方、ベースやバスドラムのリアリティを特に追求している方にはMAVISは特にお薦めですが、そうでない方にもぜひ聴いてみていただきたい、“独特の実在感”がMAVISにはあると思います。
▼小澤が語る、MACBETHのサウンド
続いて、ミックスウェーブの“エントリーモデル”であるMACBETHについては、一聴して「これがエントリー?」というサウンドで驚きました。こちらもAK240をメインに組み合わせて聴きました。
まず全体に解像感が高くて、中高域の響きもリッチです。特に強みを感じたのは、ピアノの煌びやかな表現や女性ボーカルのしっとりとした情感豊かな再現ですね。楽器の音色の美しさも、MAVERICKと共通しています。全体的な音色としては、MAVERICKやMAVISは同じ音の傾向だと思いますが、これらに比べるとMACBETHはより暖色寄りの表現だと感じました。
ハイブリッド型というだけでドライバー数は明かされていませんが、ハイブリッド型であることを感じさせないバランスの良さや音の纏まりの良さを感じました。上位モデル同様に位相管理も徹底されているのだろうと感心しました。
私はMAVERICKカスタムを普段使っているので、どうしてもそれと比較してしまうのですが、それでも、MACBETHにしかない良さというのも感じて、聴き比べていて「ムム」と感じることが何度もありました。エントリーだからといって手加減はしていないですよね。
広がりのある空間再現をするMAVERICKカスタムと比べれば、描かれる空間はそれより狭いとはいえ、適度に開放的な音場表現だと思います。一方で、どちらかというと音場の密度の高さに重点が置かれた表現なのではないでしょうか。低域は、屋外でわりと騒音の多い環境でも満足できる十分な量感をもつ一方で、しっかりとタイトに輪郭を保っています。
そういう意味で、自分が良く聴くロック系(しかもあまり帯域が広くない勢い重視の曲)では、むしろMAVERICKよりMACBETHの方がハマッてしまう瞬間があって、どきりとさせられました。あと、MAVERICKよりも低域に量感があって音量バランス的にも大きいので、電車内などある程度騒音がある環境では、それほどボリュームを上げなくてもバランスを保って音楽を楽しめることも強みだと思います。
こちらも、エントリーということでiPhoneも組み合わせてみました。iPhoneとの相性がとても良いですね。基本の音調を崩すことなくしっかりと鳴らしてくれます。空間性より密度感という音調も、iPhoneとの相性がいいですし、解像感の高さ、リッチな中高域、適度な音場感もしっかり味わえました。
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