“ハイレゾには密閉型が有利”は本当か
クリプトン渡邉氏がスピーカー開発キャリアを総括。「密閉型」「2ウェイ」にこだわる理由とは?
他社に先駆けハイレゾ再生を念頭に置いて開発された
フラグシップスピーカー「KX-1000P」
ーー クリプトンのスピーカーの歴史において、ハイレゾ対応を果たしたフラグシップスピーカー「KX-1000P」はやはり大きな意味を持っているのですね。先ほど2ウェイにこだわってきたとお話しされていましたが、KX-1000Pが2ウェイにならなかった理由はどこにあるのでしょうか。
渡邉氏 残念ながら、2ウェイでは出し切れない低域はあります。24bit音源ならホールで聴いた低音の再現が可能になるので、それを再生できるスピーカーにしたかったのです。
ただ2ウェイにはこだわりたかったので、2ウェイ+スーパーウーファーという構成にしました。キャビネット内部を2つの箱に分けて、密閉にこだわって、再生帯域を広げました。
ーー ハイレゾならではの超高域再生を担うのがリングフラム・トゥイーターであり、24bitの分解能ならではの低域を再現するために搭載したのがスーパーウーファーということなのですね。
渡邉氏 KX-1000Pは2ウェイ・スピーカーにスーパーウーファーを組み合わせた構成です。スーパーウーファーは、ツインドライブで単純に同じ帯域で2基を鳴らしています。よって口径は17cmですが、25cm相当の低域再現が可能となります。最低域の再生は、ユニット口径が大きいほうが実在感がありますが、特定の音色を持っていてはいけません。よって、できるだけクロスオーバーを下げて、音色を担う帯域にかぶらないようにするのが原則です。ただ、クロスオーバーを下げることは簡単ではありません。その結果が、この巨大なパッシブ型クロスオーバーネットワーク回路です。
ーー 確かにかなり大きいですね。なぜクロスオーバーを下げるためにこれだけ大がかりなネットワークが必要になるのでしょうか。
渡邉氏 電解コンデンサーを使えばもっとサイズを抑えられるじゃないか、と思うかもしれません。しかし電解コンデンサーはケミカルコンデンサーなので、数年が経つと容量が低下してしまいます。それを避けるために、KX-1000Pではフィルムコンデンサーを用いています。フィルムコンデンサーは、金属蒸着させたマイラーをコイル状に巻いたものなのですが、容量を大きくしようとするとどうしてもサイズが大きくなってしまいます。
スピーカーは10年、できれば30年使いたいと思うのであれば、こうしたフィルムコンデンサーを使わなくてはいけません。だから必然的に大きくなってしまう。コイルも当然大きくなっていきます。150Hzでクロスオーバーするネットワーク回路を、パッシブで作るのは大変なことです。これだけ大がかりなものが必要になるのです。
ーー クロスオーバーを下げるのも一苦労なのですね。
渡邉氏 KX-1000pで使っているウーファーはフルレンジ用ユニットなので、広帯域にわたってエネルギーを放出します。これを、最低域のみを担当するサブウーファーとして働くようにハイカットするためには、大がかりな回路が必要になります。本当は60Hzくらいでカットしたいのですが、パッシブ型でかつ電解コンデンサーを使わずにやるとなると、このサイズと価格のスピーカーでは150Hzが限界ということになってしまいます。
だからサブウーファーをアクティブ化して、デジタルチャンネルデバイダーを使おうという計画もありました。ただ、国内のピュアオーディオにおいてウーファー部をアクティブ化した製品が市場で受け入れられた例がないこともあり、今回は見送りました。
ーー アクティブ化のメリットとはどういうものなのでしょうか。
渡邉氏 コンデンサーとコイルによるクロスオーバー回路では、必ず位相がずれるのでそれを修正してやる必要があります。しかしデジタルフィルターによるチャンネルデバイダーを使えば、位相をフラットに保ったままクロスオーバーさせることができます。
ですから、KS-7HQMではデジタル・チャンネルデバイダーを採用しました。ただ、密閉型の原理を説明した際にもお話ししましたが、低域の位相差は非常に認識しづらいものでもあります。今後、KS-7HQMのような製品をフルサイズで開発する機会があれば、こうした手法は検討に値するでしょう。
■メイド・イン・ジャパンへのこだわり
ーー クリプトンのスピーカーはメイド・イン・ジャパンであることにもこだわっています。
渡邉氏 設計することとモノづくりは近くにないといけないと思います。何かあったときに、直したり次のものにフィードバックしたりするためには、日本の中でモノづくりをしなくてはいけないと思います。
本当のモノづくりはデリケートです。スピーカーは、接着剤の量がコンマ数グラム変わるだけで音が変わります。「変わった」というのをすぐに言えないというのは困るのです。これはスピーカーだけではなく、あらゆるモノづくりにおいて言えることです。感性的なものについて、違う言語でニュアンスを伝えるというのも難しいと思います。
フラグシップスピーカー「KX-1000P」
ーー クリプトンのスピーカーの歴史において、ハイレゾ対応を果たしたフラグシップスピーカー「KX-1000P」はやはり大きな意味を持っているのですね。先ほど2ウェイにこだわってきたとお話しされていましたが、KX-1000Pが2ウェイにならなかった理由はどこにあるのでしょうか。
渡邉氏 残念ながら、2ウェイでは出し切れない低域はあります。24bit音源ならホールで聴いた低音の再現が可能になるので、それを再生できるスピーカーにしたかったのです。
ただ2ウェイにはこだわりたかったので、2ウェイ+スーパーウーファーという構成にしました。キャビネット内部を2つの箱に分けて、密閉にこだわって、再生帯域を広げました。
ーー ハイレゾならではの超高域再生を担うのがリングフラム・トゥイーターであり、24bitの分解能ならではの低域を再現するために搭載したのがスーパーウーファーということなのですね。
渡邉氏 KX-1000Pは2ウェイ・スピーカーにスーパーウーファーを組み合わせた構成です。スーパーウーファーは、ツインドライブで単純に同じ帯域で2基を鳴らしています。よって口径は17cmですが、25cm相当の低域再現が可能となります。最低域の再生は、ユニット口径が大きいほうが実在感がありますが、特定の音色を持っていてはいけません。よって、できるだけクロスオーバーを下げて、音色を担う帯域にかぶらないようにするのが原則です。ただ、クロスオーバーを下げることは簡単ではありません。その結果が、この巨大なパッシブ型クロスオーバーネットワーク回路です。
ーー 確かにかなり大きいですね。なぜクロスオーバーを下げるためにこれだけ大がかりなネットワークが必要になるのでしょうか。
渡邉氏 電解コンデンサーを使えばもっとサイズを抑えられるじゃないか、と思うかもしれません。しかし電解コンデンサーはケミカルコンデンサーなので、数年が経つと容量が低下してしまいます。それを避けるために、KX-1000Pではフィルムコンデンサーを用いています。フィルムコンデンサーは、金属蒸着させたマイラーをコイル状に巻いたものなのですが、容量を大きくしようとするとどうしてもサイズが大きくなってしまいます。
スピーカーは10年、できれば30年使いたいと思うのであれば、こうしたフィルムコンデンサーを使わなくてはいけません。だから必然的に大きくなってしまう。コイルも当然大きくなっていきます。150Hzでクロスオーバーするネットワーク回路を、パッシブで作るのは大変なことです。これだけ大がかりなものが必要になるのです。
ーー クロスオーバーを下げるのも一苦労なのですね。
渡邉氏 KX-1000pで使っているウーファーはフルレンジ用ユニットなので、広帯域にわたってエネルギーを放出します。これを、最低域のみを担当するサブウーファーとして働くようにハイカットするためには、大がかりな回路が必要になります。本当は60Hzくらいでカットしたいのですが、パッシブ型でかつ電解コンデンサーを使わずにやるとなると、このサイズと価格のスピーカーでは150Hzが限界ということになってしまいます。
だからサブウーファーをアクティブ化して、デジタルチャンネルデバイダーを使おうという計画もありました。ただ、国内のピュアオーディオにおいてウーファー部をアクティブ化した製品が市場で受け入れられた例がないこともあり、今回は見送りました。
ーー アクティブ化のメリットとはどういうものなのでしょうか。
渡邉氏 コンデンサーとコイルによるクロスオーバー回路では、必ず位相がずれるのでそれを修正してやる必要があります。しかしデジタルフィルターによるチャンネルデバイダーを使えば、位相をフラットに保ったままクロスオーバーさせることができます。
ですから、KS-7HQMではデジタル・チャンネルデバイダーを採用しました。ただ、密閉型の原理を説明した際にもお話ししましたが、低域の位相差は非常に認識しづらいものでもあります。今後、KS-7HQMのような製品をフルサイズで開発する機会があれば、こうした手法は検討に値するでしょう。
■メイド・イン・ジャパンへのこだわり
ーー クリプトンのスピーカーはメイド・イン・ジャパンであることにもこだわっています。
渡邉氏 設計することとモノづくりは近くにないといけないと思います。何かあったときに、直したり次のものにフィードバックしたりするためには、日本の中でモノづくりをしなくてはいけないと思います。
本当のモノづくりはデリケートです。スピーカーは、接着剤の量がコンマ数グラム変わるだけで音が変わります。「変わった」というのをすぐに言えないというのは困るのです。これはスピーカーだけではなく、あらゆるモノづくりにおいて言えることです。感性的なものについて、違う言語でニュアンスを伝えるというのも難しいと思います。