「2500シリーズ」連続インタビュー第1回
【開発者インタビュー】デノン「DNP-2500NE」に込められた音へのこだわり
フルデジタル・プロセッシング・ヘッドホンアンプはいかに実現したのか
ーー 次はフルデジタル・プロセッシング・ヘッドホンアンプについてお伺いしたいと思います。DDFAがヘッドホンアンプに採用されるとは想像もしていませんでした。
飯原氏 企画の初期から本格的なヘッドホンアンプが搭載されることは決まっていましたが、ヘッドホンアンプをどのようなものにするべきかは議論になりました。ちょうどDDFAによるプリメインアンプ「PMA-50」がヒットしていた時期で、社内でもDDFAの音が高く評価されていました。そんな中で「DDFAをヘッドホンアンプにも使うことはできないのか」という話が持ち上がったのです。
それで、DDFAを用いたスピーカー用アンプを改造してヘッドホンを繋いで聴いてみたのです。当然、ヘッドホン用にチューニングなどされていない状態だったのですが、驚くほど鮮度が高い音を聴くことができました。とにかく駆動力が高いという印象で、どんなヘッドホンを組み合わせても、パワフルに鳴らしてくれたのです。
これはDNP-2500NEに入れるしかないということになりました。本機の強力な電源を用いれば、さらに素晴らしいものになると確信しました。しかも本機の入力ソースは全てデジタルですので、フルデジタル処理を行うDDFAを組み合わせれば、A/D変換も必要なく、非常に相性が良いのです。
ーー DDFAをヘッドホンアンプに採用する上で、問題などはなかったのでしょうか。
飯原氏 当初の課題は残留ノイズでした。600Ωの負荷を十分に駆動できる高い出力を持った上で、能率の非常に高いイヤホンでも実用できる低いノイズレベルが求められました。これは、低ノイズ電源や基板レイアウトの検討を行うことで可能にしていきました。また、ヘッドホン特有の広い負荷にどのように対応するかも課題でした。
デジタルアンプの最終段にあるローパスフィルターは、共振点でゲインが変化する特性を踏まえて、特定の負荷を想定して設計します。スピーカーの場合は負荷の範囲は比較的狭いので、例えば6Ωでフラットになるように設計してあげれば、4Ωあるいは16Ωのスピーカーと組み合わせた際も、ゲインの変化は許容範囲です。
しかしヘッドホンの場合は、負荷が8Ωから600Ωまであります。例えば32Ωをフラットにして同様の回路とすると、8Ωの時は極端に高域が下がり、600Ωだと極端に高域が上がる、というようなことになってしまい、負荷を壊してしまう可能性さえあります。本機では、ヘッドホンという負荷に合わせて、ローパスフィルターの回路を変更し、8Ωから600Ωまで可聴域でフラットな周波数特性を実現しました。
DDFAの圧倒的な駆動力をヘッドホンに活かす
ーー 従来のDDFAと、本機で採用されたヘッドホンを駆動するDDFAにちがいはありますか。
飯原氏 基本的に同じです。異なるのは、アンプのフィードバックゲインを決める抵抗値や、内部動作を決めるソフト上の設定値、ローパスフィルターや保護回路などです。
ちなみに通常クアルコムからは、DDFAのチップの他に、推奨回路やソフト上の推奨設定が提供されます。ただし、今回はクアルコムが想定していない使い方を提案したため、回路や設定は、DNP2500NEの開発と同時にクアルコムと協力して追い込んでいきました。そして製品として、オーディオメーカーのノウハウを活かし、周辺の部品選定や基板パターンの設計行っています。オーディオ基板にふさわしく、ヘッドホン回路もシンメトリーな基板パターンとすることにもこだわっています。
ーー これは以前から伺いたかったのですが、フルデジタル処理されるということは、当然ボリュームもデジタルです。この場合、ビット落ちの弊害はあるのでしょうか。
飯原氏 デジタルボリュームは、ビットを削って音量を落とすために、いわゆる“ビット落ち”が起こります。しかしDDFAは、入力信号を35bitまでビット拡張して処理しています。例えば、32bitの音源を35bitへ拡張すると、3bit分の余裕が出ます。1bit削れば音量はおよそ-6dB落ちますので、3bit分余裕があれば、フルスケールから-18dBまではビット落ちなしでボリュームを絞れます。
ゲイン設定が「High」の場合、本機では録音レベルが低い音源でも音量がとれるように、フルスケールから上に+24dBのゲインをもたせており、この位置を「Volume 0dB」と表示しています。ですから、表示上の「Volume -42dB」(18dB+24dB)以上であれば、32bit音源でビット落ちしないことになります。
24bitの音源の場合は、35bitに拡張すると11bitの余裕がでます。ですからフルスケールから-66dB絞ってもビット落ちはしません。-66dBでは、ほとんど音が聞こえない領域です。実使用上では、24ビットの音源ならビット落ちの心配はまず問題ありません。16ビットの音源であれば、どのボリュームでもビット落ちは発生しません。
ーー 次はフルデジタル・プロセッシング・ヘッドホンアンプについてお伺いしたいと思います。DDFAがヘッドホンアンプに採用されるとは想像もしていませんでした。
飯原氏 企画の初期から本格的なヘッドホンアンプが搭載されることは決まっていましたが、ヘッドホンアンプをどのようなものにするべきかは議論になりました。ちょうどDDFAによるプリメインアンプ「PMA-50」がヒットしていた時期で、社内でもDDFAの音が高く評価されていました。そんな中で「DDFAをヘッドホンアンプにも使うことはできないのか」という話が持ち上がったのです。
それで、DDFAを用いたスピーカー用アンプを改造してヘッドホンを繋いで聴いてみたのです。当然、ヘッドホン用にチューニングなどされていない状態だったのですが、驚くほど鮮度が高い音を聴くことができました。とにかく駆動力が高いという印象で、どんなヘッドホンを組み合わせても、パワフルに鳴らしてくれたのです。
これはDNP-2500NEに入れるしかないということになりました。本機の強力な電源を用いれば、さらに素晴らしいものになると確信しました。しかも本機の入力ソースは全てデジタルですので、フルデジタル処理を行うDDFAを組み合わせれば、A/D変換も必要なく、非常に相性が良いのです。
ーー DDFAをヘッドホンアンプに採用する上で、問題などはなかったのでしょうか。
飯原氏 当初の課題は残留ノイズでした。600Ωの負荷を十分に駆動できる高い出力を持った上で、能率の非常に高いイヤホンでも実用できる低いノイズレベルが求められました。これは、低ノイズ電源や基板レイアウトの検討を行うことで可能にしていきました。また、ヘッドホン特有の広い負荷にどのように対応するかも課題でした。
デジタルアンプの最終段にあるローパスフィルターは、共振点でゲインが変化する特性を踏まえて、特定の負荷を想定して設計します。スピーカーの場合は負荷の範囲は比較的狭いので、例えば6Ωでフラットになるように設計してあげれば、4Ωあるいは16Ωのスピーカーと組み合わせた際も、ゲインの変化は許容範囲です。
しかしヘッドホンの場合は、負荷が8Ωから600Ωまであります。例えば32Ωをフラットにして同様の回路とすると、8Ωの時は極端に高域が下がり、600Ωだと極端に高域が上がる、というようなことになってしまい、負荷を壊してしまう可能性さえあります。本機では、ヘッドホンという負荷に合わせて、ローパスフィルターの回路を変更し、8Ωから600Ωまで可聴域でフラットな周波数特性を実現しました。
DDFAの圧倒的な駆動力をヘッドホンに活かす
ーー 従来のDDFAと、本機で採用されたヘッドホンを駆動するDDFAにちがいはありますか。
飯原氏 基本的に同じです。異なるのは、アンプのフィードバックゲインを決める抵抗値や、内部動作を決めるソフト上の設定値、ローパスフィルターや保護回路などです。
ちなみに通常クアルコムからは、DDFAのチップの他に、推奨回路やソフト上の推奨設定が提供されます。ただし、今回はクアルコムが想定していない使い方を提案したため、回路や設定は、DNP2500NEの開発と同時にクアルコムと協力して追い込んでいきました。そして製品として、オーディオメーカーのノウハウを活かし、周辺の部品選定や基板パターンの設計行っています。オーディオ基板にふさわしく、ヘッドホン回路もシンメトリーな基板パターンとすることにもこだわっています。
ーー これは以前から伺いたかったのですが、フルデジタル処理されるということは、当然ボリュームもデジタルです。この場合、ビット落ちの弊害はあるのでしょうか。
飯原氏 デジタルボリュームは、ビットを削って音量を落とすために、いわゆる“ビット落ち”が起こります。しかしDDFAは、入力信号を35bitまでビット拡張して処理しています。例えば、32bitの音源を35bitへ拡張すると、3bit分の余裕が出ます。1bit削れば音量はおよそ-6dB落ちますので、3bit分余裕があれば、フルスケールから-18dBまではビット落ちなしでボリュームを絞れます。
ゲイン設定が「High」の場合、本機では録音レベルが低い音源でも音量がとれるように、フルスケールから上に+24dBのゲインをもたせており、この位置を「Volume 0dB」と表示しています。ですから、表示上の「Volume -42dB」(18dB+24dB)以上であれば、32bit音源でビット落ちしないことになります。
24bitの音源の場合は、35bitに拡張すると11bitの余裕がでます。ですからフルスケールから-66dB絞ってもビット落ちはしません。-66dBでは、ほとんど音が聞こえない領域です。実使用上では、24ビットの音源ならビット落ちの心配はまず問題ありません。16ビットの音源であれば、どのボリュームでもビット落ちは発生しません。