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技術や音への基本的考えに迫る

SHUREキーマンに訊くモノづくりの哲学。カスタムIEMやBluetooth対応イヤホンの展開は?

公開日 2016/11/09 10:00 高橋 敦
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シュア ええ、ダイナミック型でそのバランスを取るのは本当に難しいのです。例えば具体的には、SE215ではE2cより、音の出口でありイヤーピースの装着部分でもあるノズルをかなり細くしました。そうすると耳の奥にまで入れられるので、フィットは安定しますし遮音性も確保されます。ですが、音の出口が狭くなればサウンドへの影響はもちろんあります。特にここまで細いノズルを使っているメーカーは他にあまりありません。そこは当時、大きな技術的課題になった部分です。それをクリアするためにはかなりの時間を費やしました。


ーーー あとSE215、そもそもポートが見当たらないのですが…

シュア ドライバーの後ろ側に小さなポートを設置しています。サウンドバランスですが、ダイナミック型ドライバーでは低域を出すことは難しくありません。その上で中高域とのバランスを調整していきます。低域はポートや筐体内の空気容量で調整できますが、中高域はドライバーのフロント、耳に向いている側がポイントです。このモデルではドライバーをできるだけノズルに近い場所に置きました。イヤホンの筐体の中での話なので近い遠いといっても僅かな違いではあります。しかしイヤホンという超小型のリスニング環境の中では、その僅かな違いで結果としてのサウンドは大きく変わるのです。


後ほど改めて目視確認したが、SE215の「シェルには」ポートのようなものはやはり見当たらなかった。なのでここでの「ドライバーの後ろ側」は「シェル内でのドライバー背面側」のこと?と推測。後日改めてショーン氏に確認したところその理解でOKで、ドライバー背面のポートからショーン氏が「リア・ボリューム」と呼ぶシェル内のスペースにベントしているとのことだ。


ーーー SE215は相当に苦労した、相当な自信作のようですね。

シュア 我々は「SM58」というダイナミック型マイクを製造し続けています。デザインは50年間ずっと同じです。今後もこのデザインで製造していきたいと考えています。ですが内部の細かなアップデートは常に行われており、同じデザインとサウンドのまま、いつ購入しても初めて購入したときと同じSM58を楽しんでもらえるようにしているのです。「SE215」には「イヤホンにおけるSM58」のような存在になってほしいと思っています。

ーーー もしも10年後や20年後に僕のSE215が壊れてしまってまたSE215を購入したら、また同じサウンドやフィット感を手に入れられますか?

シュア それが我々の目指しているゴールです。

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