【特別企画】
新KLIMAXにAKM最上位DAC「AK4497」が搭載された理由とは? “DAC選び” の裏側を聞く
キース:続いての検討課題は、チップ内部のアーキテクチャー、レイアウト構造が特性にどのように影響するかに対して、どこまでLINNがアクセスできるかでした。ここで、AKMの情報開示により、チップの機能の中でLINNが本当に使いたかった部分にアクセスできる自由を与えてくれたのです。
佐藤:AKMのチップは、電源の取り方など、お客様の要望に応じた提案ができるよう、自由度が高く作られています。ただ、自由度が高い分、アーキテクチャーを正しく知って使っていただかないと意図しない結果を招くこともあります。そういったことが起こらないように、私自身もスコットランドへ赴き、キース氏を始めとするLINNのスタッフと綿密にミーティングを行いました。
キース:この図はLINNのDACの動作概念を簡素に記載した図です。最初にデータが入り、複数の処理過程を得て、最後にアウトプットされます。グレーの部分が今回AKMのチップでまかなっている部分ですね。ブルーの部分はLINNで行っているプロセスです。赤い部分が電源供給されている部分を概念的に表した図、もちろんこれ以外にも細かい電源供給がされてます。
佐藤:先ほどキース氏が、クロックも重要なファクターだと話されていましたが、実はAKMも以前から同じ思想を持っていて、AK4497だけでなく、10年くらい前から、AKMチップにはクロック用の電源を持たせています。そこがLINNの「KATALYST」のシステムに適合したのかと思います。
また先ほど測定の図が出てきたと思うのですが、わたしたちが4年前に技術の刷新を行い、新たに作り出した「VELVET SOUNDテクノロジー」によって、今回のAKMのチップは今まで以上に歪みの改善がされています。
今回AK4497ではLSI製造プロセスも新しくなっています。AKMでは自社のFabでチップを製造していますが、今回、LSI製造プロセス開発と協力してプレミアムオーディオ専用LSI製造プロセスを開発したのです。これにより、特性に現れない「音質」の大きな改善がなされ、結果、過去最高の音質を実現できるようになりました。
キース:チップ内部の機能がオープンでなかったり、手をつけないでほしいというメーカーも多かったのですが、AKM側は情報をかなり開示して、それ以外にも非常に協力してもらえました。LINNにとってAKMのオープンな姿勢は何よりも有難かったのです。
佐藤: チップ内部の情報に関しては、そこまで開示するかどうか迷うようなものはなかったですよ。とにかく、キース氏を始めとするLINN技術陣の要望に応えられるように、我々で協力できることは可能な限り協力しようと行動しました。
キース:そして最後の要素として、ここが一番重要なことですが、音を聞いた時にAKMチップが一番優れた音質を備えていた事です。
――LINN社内のスタッフは耳が良い方が多いと知られています。その彼らがAKMの音質を認めたという事ですか。これは何よりも誇れる事ですね。コラボレーションとはこの事を意味するのか、ただ単にチップを提供するだけでなく、完全な協業ですね。