【特別企画】
新KLIMAXにAKM最上位DAC「AK4497」が搭載された理由とは? “DAC選び” の裏側を聞く
ギラード:ここで1つ面白いエピソードをお聞かせしたいと思います。
実は6つのDACチップを比べていた時点で、その当時すでに1番の候補がAKMだったのですが、2番目の候補となっていたチップ会社のCTO(最高技術責任者)がLINNを訪問してきました。
私はちょうど良い機会だと思い、AKMと彼の会社のチップの音を彼に聞かせたのですが、まず1曲聴いて彼は驚き、2曲目で信じられないような顔になり、3曲目を聞いた時点でAKMのチップの音質が優れている事を悟り、納得して帰って行きました。
佐藤:7月後半ですが、DS/3のプロトタイプが完成した時に、それを聞かせようとキース氏がスコットランドからわざわざそのプロトタイプを運んできてくれて聞かせてくれたのです。
キース:飛行機の手荷物として運んだのですよ。
佐藤:実際に私たちの技術が組み込まれた筐体を見ていると、今回のアップデートに関われたことが嬉しくなりましたし、DS/2とDS/3を比較して聞かせて頂いた時のその音楽表現のアップグレードの大きさに実感するとともに、期待した音が実現できたことにホッとしました。同時に、わたしたちに聴かせるだけのためにスコットランドから手荷物で運んでくれたことにも感動しました。まさしく、音のパートナーと考えてくれているのだな、と。
■今後、AKMのADCをEXAKTなどに採用する可能性は?
――最後に質問させてください。今回はフラグシップモデルである「KLIMAX DS/3」に「KATALYST」が搭載されましたが、今後この技術が別のモデルに搭載される可能性はあるのでしょうか?
キース:はい、色々とアイデアは持っていますが、まずは弊社クライマックスラインの製品に搭載することを考えています。例えばスピーカーでしたら、DAC回路をスピーカー内に搭載する「KLIMAX EXAKT 350」や単体のデジタルクロスオーバー「KLIMAX EXAKTBOX」などが候補です。
――私の「KLIMAX EXAKTBOX」も「KATALYST」化される日が来るのか! 今日の音を聞いたらアップグレードしないわけにはいかなくなりました。
余談ですが、デジタルドメイン領域で高精度な帯域分割や各種の補正などを行うEXAKTシステムは、オーディオ業界でも注目されていて、関係者が時々自宅に見学に来るのです。
キース:「KATALYST」搭載により「KLIMAX DS/3」の音質はかなり向上しましたので、これらの技術が他の製品に搭載されると、どれだけ音が良くなるのか我々も楽しみです。
佐藤:「KLIMAX DS/3」では2つだったチップの搭載がKLIMAX EXAKTBOXでは片チャンネル6つになりますしね。私どもとしても楽しみです。
キース:LINNは自社のオーディオ製品に対しできるだけ自分たちで技術開発を行い、手が出せない要素を排除したいと考えていました。そのような意味においても今回AKM側と綿密、かつオープンに技術交流を行いチップやその周りの機構を理解することが出来たことは収穫でした。
――つまり特性的に一番優れていたチップを相互の協力関係のもと、自由に使わせてもらったことが、最終的な音質に結びついたと言えるのですね。
佐藤:わたしたちの音に対する考え方が、LINNによって一つの形としてモノとして実現できたと考えています。LINNの目指している方向は興味深いと考えており、AKMとしても新しい技術開発を行って協力していきたいですね。
――今回お話を聞かせて頂いて、LINNとAKMが素晴らしい信頼関係を築いてコラボレーションを行っているのが分かりました。オーディオメーカーとデバイスメーカーがここまでの信頼関係を保ちながらDAC回路を製作したことは一人のオーディオファンとして素晴らしく思います。とても丁寧にご説明頂いたので、読者の皆さんも良く分かってくれるでしょう。本日は有難うございました。
(特別企画 協力:旭化成エレクトロニクス)