【特別企画】
新KLIMAXにAKM最上位DAC「AK4497」が搭載された理由とは? “DAC選び” の裏側を聞く
■LINNがDACを選定する際の手順、テスト方法とは?
――開発や協力体制のお話しは後ほど詳しくお聞きしたいと思いますが、今回のコラボレーションは、どのような過程を経て実際に実現したのでしょうか?そして、なぜAKMの「AK4497」が選ばれたのですか?
ギラード:それではLINNが今回のDAC回路刷新にいたったプロセス、そしてAKMのチップを選んだ理由をキースからお聞かせしたいと思います。
キース:実は今回AKMとコラボレーションする理由には、3つの要素がありました。
1つ目はDACチップの持つ特性です。2015年、LINN社内では、DAC部の刷新について仕様をまとめておりました。その過程では色々なアイディアが出ていましたが、まずは使用するDACチップを決めなくてはいけません、そこで(世の中に出ている)入手できる代表的な6種類のDACチップを候補に挙げ、サンプルを入手しました。
佐藤:10年近く前からLINNには私たちの製品をデモも含めてご紹介してきました。AK4497もサンプルができた時にも当然すぐにご紹介をさせて頂いたのですが、それがベストタイミングだったようです。
キース:続いてそのチップを試せるようなテスト機を用意して、公平な形で特性テストを行ったのです。結果として、AKMのチップが特性的に一番優れておりました。
キース:興味深い測定結果をお見せしましょう。まずは高調波歪みを表した表です。横軸は周波数、縦軸は振幅レベルです。例えば1KHz(0dBFS)の信号を入力した時には、それ以外の信号は検出されないのが理想です。しかし現実的には他の周波数にハーモニックディストーションという形で発生してしまいます。赤色の数値がクライマックスDS/2の測定結果、青色が「KATALYST」が搭載されたDS/3の測定結果です。
――これはかなり違いますね、5KHz以上はほぼ出てない、しかも出ている周波数もDS/2よりもかなり低い数値に抑えられている。この数値、専門家の方が見ても驚かれるのではないでしょうか。
キース: DS/2の数値でも全く悪くないと思いますが、DS/3は特に2KHz、4KHzのあたりが劇的に減少しており、その他の周波数でも優秀な測定結果が出たと思います。
キース:続いてお見せする図は、これはLINNが初めて測定を行ったリファレンスレベルと表現している、基準電圧の安定度を表している図です。
実はこの数値は、今までのDAC回路ではコントロールできなかった部分です。
同じように横軸は周波数、縦軸は振幅度合い。1kHz(0dBFS)の信号を入れてあります。入力した1kHz以外はフラットであれば理想と言えます。
こちらも赤がDS/2、青がDS/3です。DS/2では入力した1kHz以外にも2kHzを始め、いくつかの振幅が出ておりますが、DS/3ではそれらの数値が全体的に10dB以上下がり、かつフラットな特性が見て取れると思います。
DAC内部ではこの基準電圧にその都度信号を入れてデータを生成するので、この変動値が結果に大きな影響を及ぼすのです。もちろんこれが全て音質に影響するという意味ではありませんが、「KATALYST」の性能の高さが分かっていただけると思います。
佐藤: DACチップには基準電圧を与えるVREFピンと呼ばれる部分があります。基準電圧は電源電圧と同じレベルなので「電源を通すだけ」と考えられがちです。しかしAKMのチップでは「VREFは電源でなく信号である」という強いこだわりをもった思想で設計しています。
キース:これらはあくまでも測定結果の数値ですが、結果は先ほど聞いていただいた通り、すばらしい音質に現れました。
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