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「ハイレゾで出す意味があるならやろうと決めた」

【連続インタビュー(上)】「アイドルマスター」のハイレゾはどうやって作られたのか? コロムビアに聞く制作の舞台裏

公開日 2017/04/27 15:00 編集部:押野 由宇
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▼ただ数値をハイレゾにしても違いは分からない

−−アイドルマスター関連の楽曲は音数が非常に多いと思いますが、ハイレゾの場合、その素材はどう取り扱われるのでしょうか?

柏谷:基本的にボーカルが96kHz/24bitであることが前提になりますね。楽曲には多くのトラックがあって、それが合わさって1つの曲になるわけですが、歌ものに関してはメインは歌だと考えているので、ボーカルが96kHz/24bitかどうかは大きいです。

−−以前にも「歌が作品の大きなファクターになる」というお話がありましたが、ハイレゾ化にあたっても重要視しているのはボーカルということでしょうか?

柏谷:スペックの面で言えばそうなりますね。最初に『弦楽四重奏「初恋組曲」』(2013年4月10日リリース)をハイレゾで出してはいますが、基本的にアイマスとしてコロムビアが作っているものに関しては、ボーカルが96kHz/24bitで録れるようになったところから、ハイレゾ制作の試みがはじまったと思います。それと同時に生録りをした楽器は96kHz/24bitで録っています。打ち込み系の音などは96kHz/24bitの音素材も最近は多くなりましたが、数多くあるトラックのなかには、48kHz/24bitの素材がアップコンバートされたものも含まれていたりします。

弦楽四重奏「初恋組曲」

−−トラックのもとの素材としては、48kHz/24bit、96kHz/24bitが混在するわけですね。

柏谷:あとはボーカルを96kHz/24bitで録ってはいますが、プラグインの関係で上の成分がなくなっているものもあります。スペックを維持するために「そのプラグインを使ったこういう音を作りたい」とミックスエンジニアが考えたものが作れないのであれば、もとの解像度自体が96kHz/24bitで録れていれば良しとしよう、と選択しました。スペアナで見てみると倍音成分がカットされて48kHz/24bitだと思われるかもしれませんが、ある時期以降の録音は96kHz/24bitで行っています。

瀬戸:昔の良い機材は、48kHz/24bitまでしか対応していないものも多いですからね。

柏谷:スペックありきで作ると、どうしても選択の幅がなくなってしまうと思うんです。作りたい音を作るために、スペックが邪魔であれば、あえて上の成分を切り捨てることもあります。

−−スペックよりも、音を優先させているということですね。実際に96kHz/24bitでの録音の境となったのは、どの楽曲になりますか?

柏谷:765プロだと『ONLY MY NOTE』(2014年8月27日リリース)からですね。シンデレラガールズでは第5弾から一部録ってみましたが機材の問題もあり、正式には第6弾(CINDERELLA MASTER 026〜030/2014年4月30日リリース)から96kHz/24bitでマスターを残せています。

ONLY MY NOTE

−−ハイレゾタイトルのリリースの順番には理由があるのでしょうか?

柏谷:本当は最初から順番にやっていくのが良いと考えたんですけど、あまりにも曲数が多いので、最近の曲が聴きたい人からすれば「何年待てばいいの?」となってしまう。それで月の第一週は『アイドルマスター』で765プロの昔のゲーム曲から、第三週はアニメ以降の曲に、という二軸にしました。

−−たしかに、現状でもかなりの曲数があって、さらに増えていっているわけですからね。

柏谷:『シンデレラガールズ』も同じように、第二週は『CINDERELLA MASTER』から、第四週はアニメの方から、という風に分けています。それでも最新のタイトルにたどり着くには時間がかかるので、一番最初のタイミングでは最近の楽曲を出しました。

−−リリース第一弾が『PLATINUM MASTER』シリーズや『STARLIGHT MASTER』シリーズで、第二弾以降は「魔法をかけて!(M@STER VERSION)」や「Never say never」のように、オリジナルの登場順になっていたのはそういう理由だったのですね。週区切りなのは、作業スケジュールの関係ですか?

柏谷:そうですね、ワンスイッチで“ポンッ”とハイレゾにできるものではなくて、エンジニアが時間を掛けて作って、チェックして、直して、もう一回やって、ということを繰り返す。意外と大変で(笑)。

瀬戸:「柏谷さん、休んでください」という声も届きますよね(笑)

アイドルマスタースタッフの仕事のしすぎはファンの間でも有名

柏谷:打ち合わせが深夜に終わって、それからハイレゾのマスタリングをする作業に入ったりする事も多かったりしますので、クオリティを考えると週に2〜3曲になりますね。

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