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<山本敦のAV進化論 第144回>

<IFA>ソニー「Xperia XZ1」開発者インタビュー。HDRから3Dスキャニングまで進化の詳細を聞いた

公開日 2017/09/02 10:33 山本 敦
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本体を横向きに構えて動画コンテンツを再生すると、ちょうど前面左右にスピーカーの開口部が向くようになるのは従来Xperia Zシリーズで既に確立されているレイアウトだ。「今回は筐体内部のスピーカーボックスを大きくして、よりパワフルなアンプを乗せたことで音圧を上げることに成功しています」と語るのはXZ1とXZ1 Compactの本体の機構設計に携わった柴田氏だ。XZ1はXZs/XZと比べて、XZ1 CompactはX Compactと比べて音圧が約50%もアップしたという。

トップには3.5mmイヤホン端子が

Bluetoothによるワイヤレスオーディオ再生は、通常のSBC方式よりも多くのオーディオ情報を安定して送れるソニー独自のコーデックである「LDAC」に今回も対応している。ほかにもクアルコムが開発する48kHz/24bit相当の高音質なワイヤレスオーディオ再生を実現する「aptX HD」コーデックにもXperiaとして初めて対応した。今回からLDACとaptX HDにマルチで対応することになった背景を安達氏にうかがった。

「ソニーとしては、より高音質なLDACに対応するヘッドホン・イヤホンやワイヤレススピーカーなどで楽しんでもらいたいと思うところはありますが、やはり第一にユーザーの皆様が色んな機器との組み合わせでよりいい音を楽しんでもらいたいと考えて、aptX HDにも対応を広げました」(安達氏)

ワイヤレスオーディオへの注目が高まる中で、ソニーは今年のIFAでLDACとaptX HDの両方に対応するヘッドホン・イヤホンを一斉に発表した。音にこだわる製品を充実させたことで、ソニーのワイヤレスオーディオにおける存在感がさらに高まるインパクトが十分にあったと思う。

一方で、今回発表されたモデルではイヤホン出力や「ミュージック」アプリのアップデートは発表されなかった。LGエレクトロニクスは今年のIFAでQUAD DACシステムを搭載して、アンプの出力も強化したハイレゾスマホ「LG V30」を発表している(関連ニュース)。

安達氏は「いま全世界でワイヤレスオーディオへの関心が高まっているので、その使い勝手を高める工夫に全力を注いでいますが、有線タイプのヘッドホン・イヤホンを組み合わせた音楽再生についても市場のニーズをみながらより良いものにしていきたい」と語る。例えば、ソニー独自のハイレゾ対応フルデジタルアンプ「S-Master HX」を搭載したり、イヤホン端子の出力音圧を強化するなど、ベーシックな部分で音質をさらに向上させる余地も残されていそうだ。

なお別売のハイレゾ対応イヤホン「MDR-NC750」を組み合わせれば、デジタルNCやバイノーラル録音ができるようになる機能は現行機種のXperia XZsと同様にXZ1/XZ1 Compactの両方に搭載されるようだ。

SDカードとSIMは、Xperia XZ Premiumに引き続いて別トレイとした。SIMカードスロットと一体になっていると、SDカードを出し入れするたびに本体の再起動が必要になり、SIMカードにスクラッチ傷が付いてしまう可能性もあり、何度も繰り返しているとSIMカードが読み込めなくなることもある。スロットが別々になれば、故障を気にせず安心してSDカードの出し入れができるので大歓迎だ。

スマホカメラによる3Dスキャニングが楽しめる独自アプリも

新しいXperiaのカメラまわりの機能がまた一段と進化した。その勢いは止まるところを知らない。今夏のニューモデルとして発売されたXZ Premiumには、イメージセンサーの働きをサポートするDRAMを乗せた「メモリー積層型センサー」を採用。「Motion Eye」カメラシステムと名付けてメイン/フロントの両側に搭載した。1フレーム内でのノイズリダクションやHDRなど重ね合わせの効果による短時間の撮像処理が余裕を持ってこなせるようになった。

またデータの読み出し速度も上がり、高速CPUとの組み合わせにより毎秒960fps/720p/0.2秒の静止画をキャプチャできる超ハイフレームレート撮影/スーパースローモーション再生の機能はXZ1/XZ1 Compactにも引き継がれる。

イメージセンサーの「Exmor RS」に「Gレンズ」、画像処理エンジン「BIONZ」などソニーのキーデバイスはすべて搭載。4K動画撮影や強力な5軸手ブレ補正機能を備えるメインカメラの有効画素数は19MP。フロント側は13MPのセンサーを搭載するF2.0/広角22mmのワイドアングルレンズとしたところは、それぞれXZ Premiumと同じになる。

カメラは単眼式。裏側トップにNFCのタッチポイントを置いた

フレーム内に写る被写体の動きを自動で検知して、シャッターを切る前後のコマを自動でバッファリングする「先読み撮影」もMotion Eyeカメラシステムが実現した新しい撮影体験だが、XZ1とXZ1 Compactでは被写体の動きに加えて「笑顔」も検知できるようになった。

高野氏によれば、スマイルシャッターはXperiaの以前のモデルから採用されていたが、今回は先読み撮影との融合を果たしたことが革新的なのだという。先読み対応のスマイルシャッターは、シャッターボタンを押した瞬間のほか、最大5秒前からバッファリングを開始して、笑顔のピークを検出して最大4枚の静止画像を記録。4枚の画像の中からお気に入りの1枚を、または4枚の画像全部を保存できる。

さらに奥から手前の方向に迫ってくる被写体に対してフォーカスを正確に合わせ続けながら連写できる「オートフォーカス連写」にもXperiaシリーズとして初めて対応する。

ほかにもカメラと連動して被写体を3Dスキャンできる新アプリ「3D Creatror」がユニークだ。遠藤氏は「Xperia XZsからMotionEyeを使うことでスマホによる撮影が一段と楽しくなる提案を実現しましたが、画質の向上だけでなく、根本的にまったく新しい撮影体験をユーザーに届けたかった」と開発の動機を振り返った。

3D Creatorで人の顔(360度か180度)や食べ物のスキャンができる

3D画像データのスキャニングは、新しいXperia単体で手軽にできるのが特徴だ。3D Creatorアプリを立ち上げてから、人の顔は被写体を180度/360度撮影するかに加えて、被写体が食べ物か、あるいはどれにも属さないものか選んでキャプチャ作業を始める。IFAの会場でデモンストレーションを体験してみたが、Xperiaによる3D画像スキャンは、画面に表示されるインストラクションをフォローしながら、わずか30秒ほどで完了するほど手軽だ。できあがった3Dスキャニングの画像が、目の前にいるキャプチャされた本人の顔と瓜二つなことにも驚く。

左側はインタビューに答えていただいたソニーモバイルの遠藤氏の顔

100箇所以上の特徴点をカメラをかざしていくことで取り込み、立体データを生成する

取り込んだ3D画像データは「.obj」のファイル方式で保存され、自身で3Dプリンターを持っていれば手もとで出力したり、外部のスタジオにデータを送って立体オブジェをつくることなどもできるようになりそうだ。XZ1/XZ1 Compactは日本での発売はまだ未定なのでわからないが、「ソニーモバイルとしてはサードパーティーのサービスと連携する体制で3D系コンテンツの魅力ある楽しみ方を提供していきたい」と遠藤氏が語る。

3Dプリンターへの出力サービスにもこれから拡張される

なお3D Creatorは既存のXperiaの中でも、Xperia XZ Premiumなどプロセッサーの性能が高い機種でも同じ機能が使えることから、XZ1/XZ1 Compactの発売後にOSのアップデートで機能追加を予定しているそうだ。

シャーシの構造を変えて「Xperia史上最高強度」を実現

本体サイドに緩やかな曲面を持たせて、エレガンスと強度を合わせて高めた「ループサーフェスデザイン」のコンセプトはさらに進化を深めている。

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