ハイレゾとの両輪で臨場感を追求
<CES>ソニー提唱の「360 Reality Audio」、何がすごくてどう楽しめる? 特徴を開発者に聞いた
360 Reality Audioの豊かな臨場感を味わうためには、ソニーが提供を予定するソリューションを使って制作された特別なコンテンツ、ならびにその再現に必要な専用の配信/再生環境が必要になる。
今回のCES時点のアナウンスは世界に先駆けて360 Reality Audioの技術を発表するところまでとされ、サービスの本格的な提供開始時期やコンテンツ、対応する機器については語られなかった。コンテンツ戦略の見通しについては黒住吉郎氏へのインタビュー記事も参照してほしい。
CESの会場では13基のマルチスピーカーを配置した特設シアタールームと、ヘッドホンで360 Reality Audioの実力を確認できるデモルームが用意された。またコンセプトモデルではあるが、単体で立体的なサラウンド再生ができる一体型ワンボックススピーカーも展示され、音を鳴らすことも可能だった。
360 Reality Audioは開始当初、スマホやタブレットなどモバイル端末でストリーミング再生しながら楽しむ音楽サービスになりそうだ。専用ツールで制作された音源は、非可逆の圧縮方式であるMPEG-H 3D Audioでエンコード処理される。そして最大約1.5Mbpsを筆頭とする3段階のビットレートでオーディオストリームを配信できる仕様としている。
CES会場のデモでは、24個のオブジェクトを配置した48kHz/24bit リニアPCMのクオリティで製作された音源を非圧縮のまま、スピーカーではレンダリング、ヘッドホンではバーチャライズして再生を行っていた。詳細についてはこのあと開発者による解説でまた触れよう。
対象となるデバイスをなぜスマホやタブレットに絞ったのだろうか。理由を岡崎氏に聞いた。
「従来のサラウンド再生は、お客様から見れば室内に複数個のスピーカーを置かなければならないなど、やや敷居が高いところがありました。スマホのように、広く音楽プレーヤーとしても普及する端末で楽しめる技術とすれば、サラウンドの臨場感により多くの方々が気軽に触れられると考えました。引いては音楽体験のクオリティを高める事に、多くの方々の関心が向いてくれるのではないかと期待しています」
音質の向上をピュアに追求してきたハイレゾがどちらかと言えばマニア向けのものであるとすれば、360 Reality Audioはより広い音楽ファンをターゲットにした技術であると言えそうだ。ところがデモを体験してみると、ソニーのクオリティに対するこだわりには、やはり音質に対して一切の妥協がないこともわかる。
■音源制作のための専用ツールを提供する
360 Reality Audioはソニーが独自に提案する新しいサラウンド体験のための技術だが、後には様々なパートナーの参加を促せるようにオープンなプラットフォームを構築したいと、知念氏、岡崎氏は口を揃える。360 Reality Audioの体験に必要な「制作」「配信」「再生」の各環境にはどのような特徴があるのだろうか。
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