フィンランド発の注目ブランド、ついに日本本格展開
世界のプロ達も認めたスピーカーブランドが考える『ハイファイ』とは? Amphion アンシ・へヴォネン氏インタビュー
――ドライバーユニットは自社製ですか?
へヴォネン ノルウェーのSEASなどに スペックをこちらから指定して作ってもらっています。
――トゥイーターとウーファーのクロスオーバー周波数は、1.6kHzといった低めの数値ですね。
へヴォネン そうです。例えば椅子の座面の真ん中に縫い目があることはほとんどありませんよね? 横の見えづらいところにあることがほとんどです。同じように一番人間の聴覚がよく聴こえるところに、わざわざこの「縫い目」を設定することはないでしょう。スピーカーを開発していて一番難しいことのひとつは、このクロスを違和感なく一体化させることです。というのも、このふたつのドライバーユニットはダイヤフラムの素材、音の拡散の仕方、形自体も違ったりしますからね。
――音圧を揃えるだけでは良いスピーカーとは言えません 。
へヴォネン その通りです。周波数の数値を気にしすぎて、本当はもっと大事なことを見失うこともあります。大事なのは「人間の耳がどういう聴き取り方をするのか」ということです。その仕組みが分かれば、耳にとって良いスピーカーを作ることができます。周波数については無意識のうちに調節できるのですが、音の発音のタイミングだけは人間の手では調節できません。これを補うための技術が大切です。
――低音の増強には、バスレフ方式とパッシブラジエーターとふたつ方法を使い分けているようですが、これはなぜですか?
へヴォネン バスレフを採用しているArgonシリーズはスポーツカー的な存在で、できるだけスピード感があって、コントロールが効くものにしたいためです。日本の環境は小さめの部屋も多いので、スピーカーの後ろ側を壁に近づけても大丈夫なように設計してあります。それに対してパッシブラジエーターは、本来の音に対して残る音の成分が発生しますが、それを利用してベースの自然な再現を狙っています。ウーファーの仕事をさせるために、スピーカーの外側だけではなく内側にも自由に動けることが大事です。パッシブラジエーターを使うことによってミッドレンジも改善できます。
――その他、3ウェイのモデルやウェーブガイドによるディストーション減少など、さまざまな技術的特徴を持っていますね。
へヴォネン 結局、100%完璧なスピーカーはあり得ない、ということです。いろいろとトレードオフの関係でもあると思います。技術的な議論や「良い音とは何か」ということは何十年にも渡って考えられて来たのでしょう。ある意味、スピーカーが進化しているという感覚は、マーケティングのマジックなのかもしれません。
――私もそう考える時があります。
へヴォネン 私たちは「男の子のおもちゃ」を作るっているのではなく、「家族全員で音楽を楽しめる道具」を作りたいということを何よりも重視しています。