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【特別企画】開発者が技術の詳細を語る

テクニクス秘伝の技術を投入。“OTTAVA S”「SC-C50」のサウンドはワイヤレススピーカーの概念を覆す

公開日 2019/03/08 06:00 聞き手・記事構成:生形三郎
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スピーカーユニットも本機専用に新規開発

ーー スピーカーユニットも、新規に開発されたと伺っています。

湯浅 当社の既存品のユニットで設計を始めたのですが、やはりそれでは我々の求める音にはならず、新規に開発しました。特に6.5cmのウーファーは、そもそもカーブドタイプのコーンだったのですが、どうしてもエッジの反共振で音が濁ってしまうので、試作を交えてトゥイーターとのマッチングも鑑み、最終的には少し深めのストレート・コーンとしました。

ユニットの試作品(左)と実際に製品に用いられた最終品(右)

スピーカーの振動板も、当初は普通のパルプを使っておりましたが剛性が足りず、マイカを用いた軽くて剛性のある材料に変更して、量産に至りました。12cmサブウーファーは、ロングストローク仕様とすることで口径を超える低域再生を可能としています。

ーー この価格帯の製品で、スピーカーユニットから開発するというのも凄いですね。

湯浅 そうですね、やはり「既存のユニットを取り付けておしまい」では理想の音質は実現できませんので。

ーー スピーカーユニットの駆動はどのように?

奥田 弊社は単品コンポーネントで独自のフルデジタルアンプ「JENO Engine」を採用していますが、本機も同様です。JENO EngineはTechnicsのアンプが搭載された全ての製品で用いていて、デジタルアンプの心臓部にあたるところです。

ーー 単品コンポーネントと同じ「JENO Engine」が使用されているのですね。

奥田 はい。基本的にフルデジタルで処理を行い、最後の増幅ステージは製品ごとに異なりますが、心臓部は一緒です。もともとグランドクラスの単品コンポーネント向けに開発したものを、下のクラスの製品にも使用しています。

さらに、各スピーカーユニットの駆動にはネットワークを介していません。通常、単品のパッシブ型スピーカーの場合は内部にネットワークを持っていますが、こういった一体型スピーカーでは、ネットワークを介さずアンプがダイレクトにスピーカーを鳴らせるように設計できるメリットがあります。SC-C50のアンプは一貫してフルデジタル処理なので、信号伝送過程でノイズが混入しないことは一番の利点です。

SC-C50の背面部に、JENO Engineをはじめとするデジタル回路が収められている

また、アナログアンプではボリュームで音量を絞ってしまうとノイズに弱くなったりと様々な問題が生じますが、フルデジタルアンプではこうした問題も発生しません。単品コンポーネントでしたら様々なケアの方法がありますが、このサイズに全て収めるとなるとそれは難しく、フルデジタルアンプの良さがいっそう活かせます。

ーー SC-C50では「JENO Engine」を4機搭載となっていますが、上位機では何基搭載されているのですか?

奥田 実は、Technicsのグランドクラスでも1基しか入っていないものがあります。SC-C70は2.1チャンネル構成で3基ですので、今回のSC-C50がラインナップの中で一番多いんです。

「JENO Engine」のチップ

このサイズだが、様々な処理回路やアンプが集約されている

ちなみに「JENO Engine」1個あたりに4チャンネル分のアンプが入っており、さらにイコライジングやLAPCなどの信号処理の役割も担います。本機では信号処理に余裕を持たせることと、各信号のセパレーションを高めて高音質化することを目的に、合計4基用いています。実際、そのうち1基はSpace Tune、LAPC、スピーカーのタイミング調整などに割り当てています。

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