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【特別企画】9ドライバー構成で5g未満の超軽量イヤホン

シンガポールの新生イヤホンブランド「Stealth Sonics」。驚きの軽さ、技術、安全性を本国トップが語る

公開日 2019/05/29 08:41 山本 敦
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音楽再生時に耳にかかる負担を軽減するための独自技術

バルビンダ氏はアメリカの有名な航空宇宙機関に勤めた後、シンガポールに戻り、防衛科学機関でジェットの推進力と気流に関する研究に取り組んできたエンジニアだ。ステルスソニックスのイヤホンは、そのバルビンダ氏の知識をベースに、ハウジング内部のエアフローを最適化して音質を向上させる「SonicFlo Acoustics」と呼ぶ独自技術を搭載した。

ハウジング内部に生まれる空気の反射による音質劣化を可能な限り減らすため、ノズルの口径を太くして、シェイプも楕円形にしている。高音の歪みを減らしてサ行の刺さりを軽減する効果も得られるという。

近年問題になっている難聴リスクを軽減する技術も搭載されているという

さらにハウジングに「Klarity Valve」と呼ぶ、空気の通り道となる小さなベンチレーションポートを設けて空気圧を調整。リスニングの際に鼓膜にかかる負担を軽減している。ラジェスパル氏は、ステルスソニックスのイヤホンはすべて、米国のOSHA(労働安全衛生局)が定める基準に従っていると説明。長時間の音楽リスニングを一定のボリュームで楽しんだ際にも耳にダメージを極力与えないよう、設計に工夫を凝らしているという。

「人間の聴覚力の低下は通常、45歳を過ぎた頃に始まると言われてきましたが、最近は若年化しつつあり、またノイズに起因する難聴の問題も深刻化しています。そして難聴に苦しむミュージシャンも増えています。ステルスソニックスでは、最適な音量で音楽リスニングが心地よく楽しめるイヤーモニターを通して、音楽ファンの耳を難聴のリスクから守りたいと考えています」(ラジェスパル氏)

そしてステルスソニックスのイヤーモニターを特徴付けるもうひとつの技術が「Stealth Damping」である。これは小さな真鍮のプレートをハウジングの背面にビスで固定して、特に音量を上げたときによく発生する不要な低音の共振を抑え込むというものだ。低音再生をよりタイトに引き締めて、軽やかなビートを再現する効果を狙った。こちらの技術は現在特許出願中だ。

ハウジングの中心にベンチレーションポート「Klarity Valve」を搭載。低音の共振を抑える「Stealth Damping」も特徴的

UシリーズのユニバーサルIEM3機種を聴いてみる

それではステルスソニックスの3つのイヤホンを聴いてみよう。まずはフラグシップモデルのU9から。超高域に4基、高域と中域に2基ずつのBA型ドライバーを載せて、さらに低域専用のダイナミック型ドライバーを組み合わせる4ウェイ構成のユニバーサルIEMだ。なお今回のUシリーズはBA型ドライバーにKnowlsのユニットを採用している。

9ドライバーモデル「U9」¥110,800(税抜)

ラジェスパル氏は片側に9つのドライバーを搭載するハイブリッド方式のドライバー構成に辿り着くまで、やはり試行錯誤を繰り返してきたとしている。9つともにBA型ドライバーで組んでみたこともあったが、求めていた理想的な音のつながりを得るためにはダイナミック型ドライバーが必用不可欠だったそうだ。

U9はフラットで上品なサウンドに整えたイヤーモニターだ。ソースの情報を的確に捉えながら、穏やかに空間の中に広げる。ジャズの女性ボーカルやピアノの音色に自然な深みが感じられた。クラシックのオーケストラでは甘くリッチなハーモニーが楽しめた。

ロックやEDMを聴いてみると、低音の量感もしっかりと出せて、ビートがタイトで弾力感に富んでいることがよくわかる。解像度が高くスピード感も豊かな低音だが、その彫りの深さや打ち込みのインパクトを強調して引き出すタイプのイヤーモニターではない。どちらかと言えば原音に忠実なバランスの良い音づくりを志向しながら、リスニングに適したトーンに丁寧に追い込んでいる印象を受けた。ラジェスパル氏が語っていた、長時間リスニングの疲れを感じさせないイヤーモニターという説明も、リスニングを重ねるほどに合点がいった。

なお本機については、日本の音響エンジニアであるSAM TOYOSHIMA氏がチューニングに参加した「U9 JDM」という、中高域の切れ味をブラッシュアップした専用チューニングのモデルも商品化されているが、日本で発売される予定は今のところないようだ。

次ページ続いて「U4」「U2」を試聴

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