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【特別企画】最新モデル「Edition 15/15 Veritas」の魅力とは

<対談>ハイエンドヘッドホンのリファレンス - ULTRASONEの“伝統”と“進化”を評論家が語り尽くす

公開日 2019/07/25 06:15 話:山之内 正/土方 久明、構成:ファイルウェブ編集部
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山之内 シリーズの中でも私が長く使っていたのは「Edition 8」です。ULTRASONEブランドの特徴として一貫している“音の先鋭さ” が極端に発揮されていました。低域の量感、エネルギー感に関しては現代のモデルに譲るのですが、逆に言えばEdition 8の音が強く印象に残っているユーザーは、Edition 15のような現代モデルの音は結構変わって聴こえると思います。試してみてほしいですね。

「Edition8」

限定販売されていた「Edition 11」も非常に良いモデルとして記憶に留めていますし、その他にも名前を見れば音が思い起こされるモデルはいくつもありますね。

「Edition 11」

土方 私の印象に残っている製品として最初に挙げるとすれば、やはり2004年に999台限定、約45万円で発売された初代“Edition” 、「Edition 7」です。

Editionシリーズの始まりとなった「Edition7」(2004年撮影)

デザイン上では鮮やかなブルーのハウジングがとにかくはっきり目に焼き付いていますし、当時はお店ではレジの横に展示されていて、当時いちユーザーとして聴きに行ったときは人だかりで近づくこともできなかったのをよく覚えています。

いちユーザーとして目にしたEdition 7が印象深いと語る土方氏

その後、2006年に第2弾の「Edition 9」、2009年に数量を限定しない通常モデルとしてラインナップした「Edition 8」、2010年に初の開放型「Edition 10」と積み重ね、ブランドの人気を確立していきました。あの頃の国内のヘッドホン市場の盛り上がりはまさに熱狂の時代と言えますが、それを牽引していたと思います。

2011年に発売された、“Signatureシリーズ” 第1弾の「Signature PRO」も、価格を抑えながらEditionシリーズゆずりのクオリティを再現してくれたことが嬉しかった。もう1つ、2013年にEditionシリーズの開放型モデル第2弾として発売された「Editon 12」は“過激な音” がとても印象に残っています。いわゆるモニター系とはまったく違う、全帯域で切れ味の鋭い派手なサウンドで、外見もシルバーのハウジングが格好良い。とにかく個性が立っていました。

「Signature Pro」

「Edition12」

私にとってULTRASONEというブランドは、一本筋の通ったコンセプトを維持しながらも、音作りをアグレッシブに変えてくるような過激な面、鮮烈な部分もあるブランドというイメージがあります。最新モデルとして帯域バランスや定位の正確さなどが洗練されたEdition 15ですが、そうした先鋭的なイメージも残していることを嬉しく思っています。

日本市場との関わりも深いULTRASONE

土方 それにしても、ULTRASONEは日本では熱狂的なくらい愛されていますよね。昔の読み方から取った“ゾネホン” なんて呼び名も生まれたくらいですし。ULTRASONEにも日本人のスタッフが所属していて、製造の現場で活躍されている。考えてみると、日本とのつながりがとても深いブランドです。

山之内 日本のハイエンド市場のトレンドとリンクして製品開発を行っている面は、はっきりと見て取れますね。日本のユーザー/リスナーが「こういうものが欲しかった」「こうなるともっと良い」とよせた意見を、ちゃんとフィードバックして製品開発に活かしている。物づくりの時点で日本市場というものが意識されているんです。先ほど土方さんが話されていたEdition 7のときも、それまでのヘッドホンに物足りなさを感じていたユーザーが感激して、さらにULTRASONEへ様々な要望を送っていました。

ーー Edition 7が発売される前後の日本のヘッドホン市場というのは、どんな状況だったのでしょう?

山之内 それまでヘッドホンリスニングというのは、あくまでもスピーカーがメインとしてあることが大前提で、そのサブとしてヘッドホン/イヤホンが存在していました。あとはノイズキャンセリングなど特殊な用途においてそれぞれ製品や技術が発展していました。そんな中で、リスニング用にあえて先鋭化させていったらどうなるかを提示したのがULTRASONEだったわけです。

土方 すると、山之内さんの感覚からしても約45万円という価格のEdition 7は……。

山之内 当時の感覚からすれば常識外れでしたね。驚くほどの超弩級ヘッドホンと言えばゼンハイザーの「Orpheus HE90」という製品もありましたが、それは手の届かない別世界のお話で。ULTRASONEはとてつもない作り込みによってあれだけの価値を付加した、そこが驚きでした。

Edition 7の作り込みと価格は、当時としては驚きだったという

頭の中に音がこもる頭内定位を解消し、スピーカーリスニングの頭外定位に近づけるということを開発目標のひとつに掲げている時点で明らかですが、生演奏やスピーカー再生をリファレンスとして作り込んでいる。その過程で、ハウジングの内部で起こる共振がいかに再生音を歪ませるか、音色を誇張/強調してしまうかといったことに気づいたのでしょう。それをクリアするにはどうしたらよいか検討した結果、それまでヘッドホンではあまり取り組まれていなかった振動の制御を積極的に行った。

プレミアムな価格や限定生産といった特徴は、最初から狙っていたわけではなくて、音を追求した結果「そうなってしまった」のです。そうまでして作り込むヘッドホンだからこそ注目されましたし、日本という市場自体がモノづくりへの感度が高かったことも、ULTRASONEのアプローチに共感を抱く土壌となっていたのでしょう。土方さんも、Edition 7をなかなか聴けなかったことをいまだに覚えているくらいですからね。

土方 (笑)。まあ本当に、憧れのブランドであったわけです。

次ページULTRASONEの製品はコンセプトが明快

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