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<対談>ハイエンドヘッドホンのリファレンス − ULTRASONEの“伝統”と“進化”を評論家が語り尽くす

公開日 2019/07/25 06:15 話:山之内 正/土方 久明、構成:ファイルウェブ編集部
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山之内 逆に、私が他社も真似するべきと考えているのは「ULE(Ultra Low Emittion)」ですね。耳の周りに強力な交流磁界ができているというのは良いことではない、と明言した上で、電磁波を遮る「ミューメタル」で対策している。ユーザーが不安を抱きかねない要素があれば、根拠を示して対策し安心感を与えるという姿勢は、もっと強く影響を及ぼしてしかるべきだと思います。

頭部に近い場所で電磁波が発生する、その不安を取り除く目的で搭載される技術が「ULE」だ

ユーザーが心からリスニングに没入できる安心感作りの取り組みは、他社も取り入れてほしいと山之内氏

土方 フロリアン氏は電磁波が人体に及ぼす影響についての研究もされていたのでしたね。そうしたユーザーに寄り添う取り組みに関してはもっと広まって欲しいです。聴きやすさという点では、ULTRASONEのヘッドホンは聴いていて疲れにくいというのも特徴だと思います。私のまわりには結構ULTRASONEファンが多いのですが、愛用している理由を聞いてみると、音はもちろんなんですけども、疲れにくいからだと口をそろえて言っていました。

山之内 ドイツは世界でも聴覚に関する研究が1番進んでいる国なんです。ヘッドホン/イヤホンについてはもちろん、難聴対策や補聴器の分野では揺るぎない功績がある。聴覚に何が影響を及ぼすか、劣化した聴覚神経を補正するにはどうすれば良いか、理論的な研究がバックボーンにあるのです。そういうところからエンジニアリングをしているのも、ULTRASONEの大きな強みでしょう。

“伝統”と“進化”を織り交ぜる技術面

ーー ULTRASONEの伝統的な技術のうち、音を外耳に反射させて頭内定位をやわらげる「S-Logic」は何度かバージョンアップされていますね。バージョンごとの効果の違いは大きいのでしょうか。

山之内 初代「S-Logic」からはじまって、「S-Logic Plus」、そして最新の「S-Logic EX」と代を重ねてきました。重要なのは外耳との位置関係で、いかに適切に音を放射するか、イヤーカップ形状の段階から位置や角度の研究を行っている。最新バージョンの「S-Logic EX」では上下左右に至るまで反射をコントロールしていて、ひとつの到達点と言えるのではないでしょうか。以前より確実に効果を増していると思いますよ。

S-Logicの最新バージョン「S-Logic EX」では、定位を調節するため上下左右の角度にいたるまでドライバーの角度を調節している

ちなみに「S-Logic」を搭載したULTRASONE製品を使うときには、自分に合った装着位置を見つけることもポイントです。他のブランドのヘッドホンを使うときより少し意識して、ボーカルなどを聞きながら前後の微調整をしていると、必ずしっくりくる位置があるはずです。

ーー 他社のヘッドホンでも装着位置がずれると音が変わってしまうという製品がありますが、S-Logicの場合はさらにシビアということでしょうか。

山之内 他のヘッドホンの場合はドライバーから放射された音を直接聴くのですから、むしろ装着位置の音への影響は大きいですよ。それとはまた別に、S-Logicの定位をしっかり得るために調節が必要ということです。

土方 先ほどお話したSignature Studioには「S-Logic EX」が搭載されていますが、聴いているとその“自然さ”がよく分かります。初代「S-Logic」搭載ヘッドホンを聴いたとき、その意図は理解しつつ人工的だな、作っているなと感じてしまったんですが、Signature StudioのS-Logic EXは効果がとても自然です。

S-Logic EXの効果は、ホームオーディオファンにこそ試してほしいと土方氏

S-Logicが絶対的に偉い、と主張するわけではないのですが、日頃ホームオーディオに親しんでいる人がヘッドホンを聴くと、どうしてもその頭内定位が気になってしまうと思うんです。S-Logic EX搭載ヘッドホンは、むしろホームオーディオファンに聴いて欲しいとすら思います。

ULTRASONEの特徴としてあげた音の艶やかさというのは、ハイエンドのホームオーディオにも共通していると思うんですよ。生意気なことを言うようで申し訳ないけれども、個人的にはハイエンドオーディオの特徴というのは独特の音の艷やかさだと思っていて、まさにULTRASONEに共通するところという気がしますね。

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