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オーディオ評論家・山之内 正氏&土方久明氏が語る

日本でもいよいよ本格始動。 ハイレゾストリーミングはネットオーディオソースの本命だ!

公開日 2019/11/08 17:31 季刊Net Audio編集部
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山之内氏: ミュージシャンはいま、ストリーミングに提供するかしないかという二つのアンビバレントな状態になっています。ポピュラー系の音楽では参加する人が増えると思いますが、それ以外のあまりリスナーの数が多くないジャンルに関しては、互いに歩み寄らないと将来やっていけないことになるんじゃないかなと思います。

実はバックグラウンドでは、その動きはかなり活発化しています。ディスクが売れないのは10年以上前から分かっているので、ディスクのディストリビューターは統合を繰り返して大手ばかりになっていますし、ショップも淘汰されて今はもう数えるほどしかありません。販売を担ってきた人たちも作り手も、新しい解決策を求めています。そこでストリーミングが無視できない存在になってきたのですね。

土方氏: 僕もオーディオファンは音楽ありきだと思っていて、オーディオファンに大切なことは、ストリーミングに接して聴き終わった後に何をするかだと思います。要は聴き捨てるのか、それ以外の行動をとるのかというのを考えるべきだと思います。

僕は、利益はアーティストや音楽業界の方に還元されるべきだと思っています。ストリーミングの時代になって、お金の流れが悪くなってしまっているように感じます。だからこそ、ただ聴き捨てるのではなく、本当に好きな音源があった時はその時点でハイレゾを買ったり、アナログを買ったりする責任があると、オーディオファンとして僕は思います。アーティストに利益を還元するというそこまで考えられるのが、オーディオファンだと思います。

山之内氏: 必ずしも自分で音源を買うという選択肢だけでなく、SNSなどで共有して宣伝を担ったり、発信して別のリスナーに広げていくことも結果としてはプラスになると思います。聴いて終わりじゃないというやり方はいろいろあると思います。何回も聴いている曲は手元に置いておきたくなるということもあるので、メディアの形が何にせよ、何らかのルートで手に入るのであれば結局は買ってしまいますよね。

土方氏: そうですね。逆に僕は「自分が持っている音源との価値を対比したらストリーミングはやりたくない」という意見を聞いたこともありますが、僕自身はストリーミングを始めて、自分が持っている音源が愛おしくなりました。だからストリーミングの比率が増えたとしても、所有する音源との価値は共存できると思っています。

サービスごとに音質の差が出るのか

――  次に音質についてです。どのようなところで差がでますか?

山之内氏: 僕は、ストリーミングを使う場合は、TIDALとRoonを組み合わせてLINNのDSで聴くのが、音のソリューションとしては割といいと思っています。

土方氏: わかります。ネットワークプレーヤーは基本的に何の設定もせずにいい音が出ますよね。パソコンを使うとなると設定を変えたりする必要があって少し面倒ですし。それを考えると、とにかく簡単に良い音で聴きたいなら対応するプレーヤーを使うべきだと思いますし、山之内先生が挙げたRoon+LINNというのは、非常に良い組み合わせだと思います。また、ストリーミングサービスの提供会社による差も感じています。

――  なぜサービスごとに音が違うのでしょうか?

土方氏: これまで聴いてきたQobuzやTIDALでお話ししますと、ハイレゾ音源のフォーマットにQobuzはFLACを採用していて、TIDAL(TIDAL Masters)はMQAを採用しているので、まずそこで差がでます。

土方氏はメインソースにQobuzを使用している

次に44.1kHz/16bitロスレス音源。QobuzとTIDALは競合しますが、当然送信するFLACの圧縮率の差もあるでしょう。そこが一番大きく影響してくると思いますし、新しく日本で始まったAmazon Music HDやmora qualitasもそこは同様でしょう。ちょっとマニアックな話をすると、サーバーから自分の家にあるルーターまでの経路の違いや、敷設した光ファイバーがいろいろな地域を経由して来るかどうかでも差が出てくると考えられます。

これまでのファイル再生の場合はNASからプレーヤーまでの経路が重要でしたが、ストリーミングの場合、データが配信元の国から日本に来るまでの経路や日本国内でのプロバイダの経路も違ってきます。

ファイル再生とストリーミングの一番大きな違いとしては、ルーターからプレーヤーまでの経路が挙げられますね。僕はTIDALを始めてから「ストリーミングの音を良くしよう」というのをテーマの一つにしているのですが、そうなるとルーターが音質変化の要素になってきます。ストリーミングはルーターを音楽信号が通るわけですから。

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