オーディオ評論家・山之内 正氏&土方久明氏が語る
日本でもいよいよ本格始動。 ハイレゾストリーミングはネットオーディオソースの本命だ!
―― 山之内先生のストリーミングの楽しみ方も教えていただけますか?
山之内氏: TIDALを中心にApple Musicも使っています。契約しているサービス自体は結構多いですけど、リスニング全体の時間の中でストリーミングが占める割合は半分まではいかないですね。デジタルのディスクもまだ相当多いので、SACDやCDが恐らく3割くらいにはなるかな。他はレコードが1、2割で、ストリーミングはロッシー/ハイレゾの両方を使っているので、合わせたとして3、4割。ダウンロードのハイレゾも2割くらいです。
以前はダウンロードが半分ぐらいを占めていたけど、この3年くらいで一気に減ってストリーミングへ移行した感じです。鑑賞というか、じっくり聴く時にはディスク系とダウンロードを使う形で使い分けていますね。
僕の場合、クラシックがソースのかなりの比率を占めるので、ストリーミングは仕事では使いにくいんです。じゃあいつ使うかといえば、楽器を演奏するとき。演奏会のリハーサルなどの関係で1週間のうち2日間は1日中楽器を弾いているので、いろいろな曲をたくさん聴かないといけません。参考のために同じ曲を別の指揮者で聴いたり、一つのレーベルでも年代ごとに一通り聴いたりする場合にストリーミングは便利ですね。
例えばカラヤンと入力してブラームスの曲名を入れると、ストリーミングで該当する物がたくさん表示されますので、それを順番に再生しながらテンポや音楽的な表情などチェックすることができます。これはものすごく便利なツールで、楽器や音楽をやる人ならば手放せなくなってしまいます。
またジャズであったり、ロックであったり、クラシックとは違うジャンルを聴く時にもストリーミングの使い勝手は良いですね。移動中の車などあらゆる状況で使います。しかもストリーミングは、海外でも同じように使えます。これまでは自分の普段聴いている音楽環境を海外などに持ち出すことができませんでしたが、今はストリーミングサービスがあるので、どこでも聴けるわけです。これもすごく重要なことです。
さらに、ダウンロードには時間がかかるので、その時間がもったいない。検索した後にダウンロードしないといけないのに加え、それを管理しないといけませんし、タグ情報やデータのバックアップなども必要になってくるので、その時間が嫌です。でもストリーミングに接続すれば、いつでも繰り返しリアルタイムで聴ける。10年前はCDをリッピングして、ライブラリの整理をすごく時間をかけてやっていましたが、今はほとんどやらなくなってしまいました。
土方氏: タグ管理がいらないですからね。そういう意味で言うと、僕にとってストリーミングは聴いたことない別ジャンルの音楽を聴くのに適していて、例えば今まではヘビメタを聴かなかったんですが、ストリーミングが出てから聴くようになりました。
一つポイントとなるのが、Roonと組み合わせることですね。Roonはストリーミングが流行し出したくらいから対応したんですが、とても相性がよくて、組み合わせることでジャンルとかアーティストなどが紐付けされて次々に新しい音楽が聴けるようになりました。現在は、そういう聴き方をしたい時はRoonに頼らざるを得なくなっています。
山之内氏: 思わぬところから幅が広がりますよね。参加しているプレーヤー(楽器奏者)つながりで、そのプレーヤーがリードを取った作品を聴くのみならず、ライナーノーツの中から、その人が影響を受けたミュージシャンの話がインタビューで紹介していたりします。
そういう文献を頼りにオリジナルのアーティストが聴いていた音源を検索すると、たくさん表示されて、それを媒介にしてどんどんつながっていったり。土方さんがおっしゃったように、こういう使い方ができるのが、Roonの醍醐味の一つですね。今回新たにスタートするmora qualitasにしても、アーティストやアルバムのバックグラウンドのデータを充実させてもらいたいです。もちろんクラシックについても同様ですね。
土方氏: ハイレゾストリーミングの最先端であるQobuzとTIDALも、開始した当初はライナーノーツがないことを指摘されてきましたが、現在QobuzはPDFでほぼ全て表示できます。物理メディアにある優位点は、所有欲以外は見出せなくなってきていますね。
山之内氏: もう一つ、歌詞表示機能があります。CDアルバムも歌詞カードの付いていないケースがありますが、ストリーミングの歌詞表示機能は標準になってきています。これはダウンロードにはなかったサービスなので、使ってみると良いですよね。