オーディオ評論家・山之内 正氏&土方久明氏が語る
日本でもいよいよ本格始動。 ハイレゾストリーミングはネットオーディオソースの本命だ!
山之内氏: 家の中でできることとして、そこは重要なポイントですね。僕もルーターを買い換えたら音が変わりましたし、不具合が起こりにくくなりました。
―― 良いルーターをお買いになったのですか?
山之内氏: そうです。重要なのはスピードよりも安定性。複数のストリーミングが家の中で動いていたり、Netflixを家族が見ていたり、さらに別の部屋ではゲームをやっているような中をハイレゾストリーミングが動くことになります。もちろん性能にもよりますが、そんな状況ではルーターに過剰な負荷がかかっているわけです。本当に専用ルーターを検討してみても良いかも知れません。
土方氏: その通りだと思いますね。良質なインターネット回線を用意することは、ストリーミングにおいては重要だと思います。速度で言えばAmazon Music HDは5Mbpsを確保して欲しいと言っているように、プロバイダも重要になってくると思います。ちょっと専門用語になりますが、通信の反応速度を指すping値というものがあります。相手のドアを叩いてそこから戻ってくる反応速度のようなものですが、それが遅いとやっぱり原理的にも良くないです。
山之内氏: ハイレゾのライブストリーミングサービスの先駆けであるPrime Seatは、DSDのライブストリーミングを4K動画配信並みの非常に高いレートで配信しています。回線は運営元であるIIJ(インターネットイニシアチブ)のものを使っていますので大元の品質は高いのですが、専用の再生アプリに回線速度の検証機能があるので、自分のマンションだったり、部屋だったりで実際にどれくらいの速度と安定さが出ているかを調べておいた方がいいでしょう。DSD配信の場合は12Mbps前後がボトムラインなので、それをクリアしていれば問題はありません。
もちろんPrime Seatに限らず普通のストリーミングやハイレゾストリーミングも条件は同じです。なのでストリーミングを始める前は、周辺機器や回線契約を見直してみる良い機会だと思います。
―― 最後に、ハイレゾストリーミングに興味を持つ読者の皆さんへメッセージをお願いします。
山之内氏: 現状と言うよりも来年以降の話になりますが、5Gのサービスがスタートした時点でスマホやポータブルオーディオのストリーミング対応が意味を持ってきます。特にポータブル環境でもロスレスやハイレゾストリーミングをどんどん聴きましょうと言う流れになると思います。車の中や移動中にもハイレゾを聴けるようになることでしょう。ぜひ注目していただいたらよいかと思います。
土方氏: 僕は日本のハイレゾ配信の導入の時は、適切な再生方法をメーカーやお店が知らないままスタートした経緯があったと感じています。今回は、あらためて国内でハイレゾストリーミングがスタートするわけですから、お店の方にもハイレゾストリーミングの普及に努めていただきたいと思います。契約もしやすくなり、簡単に契約できるからそこがメリットでもあるので皆さんに楽しんでいただきたいですね。まずは、とにかく試して欲しいです。
山之内氏: ハイレゾはポストCD時代のメインソースです。それを視野に入れ、ハイレゾストリーミングをきっかけに自分のシステムを見直すのも良いでしょう。そのくらい価値のあるスタートと言えると思います。
土方氏: ハイレゾストリーミングはソースとして本命だと思います。多くの方に体験して欲しいです。
<対談した人>
山之内 正
ネットオーディオをはじめ、国際的なオーディオの流れや、音楽産業にも精通するオーディオ評論家。自宅ではTIDAL、Apple Musicを楽しんでいる
土方久明
元ネットワークのエンジニアの経歴を持つ、ネットワーク/PC分野に強いオーディオ評論家。自宅では主要なストリーミングを全て契約。Qobuzをメインに楽しんでいる
現在発売中の季刊 Net Audio vol.36では本対談に加え、mora qualitas、Amazon Music HD、TIDAL、Qobuzの4大ハイレゾストリーミング紹介やハイレゾ/ロスレス /ロッシーの7ストリーミングサービス音質比較など、ハイレゾストリーミングサービスを徹底解剖! 本誌の詳細および購入はこちらから。