【特別企画】山之内正・土方久明 両氏が対談&レビュー
ハイレゾストリーミング時代の有力な選択肢。マランツ「PM7000N」の魅力を評論家が徹底討論!
土方 そうなんですよ。「PM7000N」クラスの製品がプリメインアンプとしての基本性能をしっかり担保してるという点は、僕も本当にうれしいです。まず通常のアンプとして本当にしっかり作られていますから。今回はストリーミング再生での試聴ですが、CDプレーヤーを繋げても絶対いい音で鳴ってくれますよね。
山之内 そうですね。以前の試聴のときにCDも聴きましたが、この価格帯のアンプとして推薦に値するクオリティだということは間違いないです。
土方 そうしたベースがあってのネットワーク再生機能ですからね。「PM7000N」発表当時、マランツはハイファイオーディオの世界に本気でストリーミングを持ち込んできたんだな、と感じましたよ。こういう製品が出てきてくれて、僕はすごくうれしかったですね。
■ハイレゾストリーミング音源の良さをしっかりと引き出す
編集部 今回の取材であらためて「PM7000N」のネットワーク再生を試してみて、その音質をどう感じましたか?
山之内 ロスレス音源を聴く一番のメリットはダイナミックレンジの広さです。圧縮音源はダイナミックレンジが物足りないんですよ。どうしても本当の静寂感は伝わらないんですね。また、音量が上がったときの瞬発力も違いますよね。クレッシェンドで一気にクライマックスに達するような大音圧のところで、圧縮音源だと頭打ち感があるんです。
だけどロスレスやハイレゾで聴くと、これならハイエンドオーディオでのメインソースにもなりうるぐらいの音質だなという、そういうレベルになります。そうなるとオーディオシステム側も妥協できないんですよ。S/Nをしっかり確保しておかないと、音源が持つ本来の良さを引き出せません。
加えて、音圧感も重要です。単純に数字上で音量を上げたというだけでなくて、強い音が出たときのインパクト、パワー、エネルギーがどれくらい聴き手に伝わるかというのは、ロスレス/ハイレゾで聴く最大の楽しみだと思います。このアンプは、そこの部分でかなり頑張っていますね。
編集部 なるほど。
山之内 今日の取材ではアリス=紗良=オットの最新アルバム「Echoes Of Life」から、ジェルジュ・リゲティ作曲「ムジカ・リチェルカータ 第1曲」を聴きました。この曲の演奏は、左手の低音のエネルギーが強靭で、伸びがあって深いのですが、「PM7000N」でのハイレゾストリーミング再生だと、その力強さがちゃんと伝わってきます。
このアルバムでは、現代音楽の作品をショパンの曲の間に挿入するという変わったことをやっているのですが、「PM7000N」でこういう決然とした演奏を聴けると、彼女がこうした試みをした意味がわかります。これが割と平板なダイナミックレンジの中で鳴っても、良さがわからないんです。「PM7000N」を通しての再生では、ここぞというところで力を込めた演奏してるな、というのが伝わってきました。
土方 音はかなりいいですよね。最新ヒットチャート上位にランクインするような現代的な楽曲、例えば、ザ・ウィークエンド「Take My Breath」でも、圧縮音源ではなかなか出なくなってしまうディティールをしっかり再現できていました。J-POPならKing Gnu「白日」冒頭のボーカルがちゃんとセンターに定位して、リアリティが感じられます。
僕がロスレスやハイレゾに一番魅力を感じるのは、A/D変換時の段階で小レベルの音がしっかりと記録されているという部分です。単純に言えば、サウンドステージの表現をするホールトーンとか、そういうものがしっかりと記録されていて、ステージングの奥行きや広さがしっかり感じられるんですよね。楽器の細かいニュアンスとか生々しさとか、そういう部分が上がってくるところが僕はハイレゾのメリットだと思っています。
「PM7000N」はノイズフロアがすごく低いので、そういうところをキッチリと再現してくれます。例えばボーカルの前後の定位だったり、ボーカルとバックミュージックの描き分け、境界線の綺麗なところがちゃんとメリハリがあって曖昧にならず、目に見えるように出せています。この音が10万円ちょっとという価格帯の製品で確認できた点がうれしいですね。
■コスパの高さやHEOSアプリの利便性も魅力
編集部 たしかに値段と性能のバランス、いわゆるコストパフォーマンスの部分も魅力です。
次ページ「10万円ちょっとのアンプとしてはびっくりするレベルの音」