仮面ライダー初のUltra HD Blu-rayの真価とは?
何度目でもいい、買う!劇場版『仮面ライダー』UHD BDは“別物“に変身を遂げている
■撮影で使用されるフィルムの違いを吟味した上で各作品のレストアを実施
−−HDRの特徴とも言える効果をいたずらに “アピールポイント” にせず、そのスペックを活かしながらあくまで見やすさを追求するアプローチからも、作品に対する真摯な姿勢を改めて感じられました。
別の質問になるのですが、本作収録の劇場映画は古いもので「1号ライダー」の1972年、新しいもので「仮面ライダーBLACK」の1988年と、16年もの期間に渡っています。そうなると使用するフィルムの種類なども変わっていたりすると思うのですが、それが原因となって、収録作の画の仕上がりを均一化する上で苦慮したなどということはありましたか?
今塚 当然、使用するフィルムが変われば、粒子感や色の発色も変わってくるので、すべて同じパラメーターを当てはめて処理するわけにはいかず、一つ一つ作品にあったパラメーターでカラー調整を行います。使用されたフィルムの特性によって赤色が強調されることもあるので、そういった事例を踏まえつつ、その作品のトーン、見え方として正しい色味に持っていくのが重要です。また、リマスターに関しても作品毎に粒子軽減のパラメーター設定を変えています。
細かなゴミや傷を消す基本的なレストア作業以外にも、フィルムのコマに大きなキズなどの破損がある場合、比較的近しい前のコマを持って来たりするのですが、その場合だと連続して同じ画が繋がってしまうため、動きが止まって見えてしまいます。そういうところに関しては細心の注意を払いながら、オートではなく、スタッフの手によるマニュアル作業で傷を修復しています。
オートで下絵を綺麗にするという方法も完璧というわけではなく、誤修正されてしまう箇所も発生して、かえって作業量が増えるという場合もあります。最終的に物を言うのはスタッフの技量…という世界ですね。消せば消すほど残ったゴミが目立つので徹底的にやっております。
−−今作のレストアに限った話ではないと思いますが、最後は技量で詰めていくというのも、仮面ライダーらしさを勝手に感じてしまいます。今回の収録作だけでも16年のスパンがあるように、仮面ライダーは歴史の長い作品ですが、このシリーズについて数々のメディアで製品化を繰り返してきた中で、今回の4K化に活きたフィードバックなどありましたでしょうか?
今塚 過去に「仮面ライダーT Vシリーズ」のテレシネ作業(フィルムから映像信号への変換)を何作品か携わった経験がありまして、その作業では16mmプリントフィルムを使用したこともあり、比較的暗部が締まった「おどおどしい色味」で、日本の作品独特のブルー系のシンプルな色味が印象的でした。
今回も「おどおどしい色味」に準じて製作することもできはしましたが、技術の進歩やご家庭のテレビのクオリティも格段に上がっていますので、フィルムに収められた情報は極力引き出したいと作業に挑みました。ただし、赤色はフィルムの特性により必要以上に目立ってしまいますので、カラーバランスを調整しています。
また4K化することで「このキャラはこんなに鮮やかだったのか!」という発見もありながら、鮮やかすぎてカラートーンが「おどおどしさ」から逸脱してしまったり、 鮮明に再現しすぎてショッカーや怪人の持つ恐怖感を失ってしまいますから、カラーバランスには十分注意を図りました。