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仮面ライダー初のUltra HD Blu-rayの真価とは?

何度目でもいい、買う!劇場版『仮面ライダー』UHD BDは“別物“に変身を遂げている

公開日 2021/10/23 09:30 編集部:松永達矢
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■「4KリマスターBOX」を通じて作品が本来持つ魅力に触れてほしい

--いずれもこだわりの上で作業に当たっているとは思いますが、収録作で一番作業が大変だった! というタイトルを挙げるならどの作品でしょうか?

今塚 数多くのレストア作業に携わってきたチームリーダーの岩崎曰く「変身シーンが多い作品が1番大変だった」とのことなので、この質問への回答は1974年公開の『五人ライダー対キングダーク』とさせていただきます。恐らく変身シーンの数だけバンクカットも増えて…という感じでしょうか(笑)。それと、『五人ライダー対キングダーク』は全体的にフィルムの露光が暗かったので、明るくしたことでパラが他作品と比べて目立ち、さらにHDR化により光ってしまうことと、粒子感の調整が一番大変だったようです。

--Xライダー以外の4人が変身するが奇岩城での下りですね! キングダークの強敵ぶりをこんなところでも思い知ることになるとは露ほども思いませんでした…。視聴の際、該当箇所を注視してもらって、すり合わせの見事さに気付いていただければキュー・テックスタッフの激闘も報われるというものですね…!

「登場ライダーが全員変身する」『対キングダーク』は、変身シーンの数だけ流用カットも多い!

ここまでリマスター作業に伴う逸話を伺う中でも「これまでと違う」ポイントの数々を知ることができましたが、これまでのお話を踏まえた上で、特に見ていただきたいポイントや、パッケージとしての意義等を改めてお二方から一つずつお伺いしてもよろしいでしょうか?


小田 仮面ライダーの劇場版をその時代の新しいメディアで製品化するというのは、長い間仮面ライダーを支えているファンの方からすれば、LD買いました。VHS買いました。DVD買いました。Blu-ray買いました…と、「何回目の購入か?」という話にもなってしまうんですよね。

1番直近となるのが2011年の「仮面ライダー THE MOVIE Blu-ray BOX 1972-1988」になるのですが、回り道な言い方をすると、東映チャンネルで放送されていたHDリマスターとBlu-rayマスターはそもそも違うもので、放送用にHDマスターを作った後に、Blu-ray収録のために追い込んで粒子感を軽減するなどの作業をしていました。

仮面ライダー以外のタイトルでもそうなのですが、Blu-ray化の作業では画の質感を「ツルツルにする」。粒子感を取ってわかりやすく「DVDとは違うもの」という画作りで、すでにDVDをお持ちのユーザーにも手を伸ばしていただけるよう、第一印象で綺麗な物と感じてもらえるアプローチでリマスターしよう! という意識がすごく強かったです。

ただ、今回の「仮面ライダー THE MOVIE 1972-1988 4KリマスターBOX」はこれまでお話していただいたとおり、フィルムのもっている情報量をそのままお届けしようというコンセプトでリマスター化していますので、直近出たBlu-rayとはまったく違う仕上がりになっています。4回目になるのか、はたまた5回目になるのかというメディア化ですが、「これまでとは別物」と思って、作品が本来持つ魅力に触れていただければと思います。

「DVDとの差」が顕著になるようにリマスターを施したBlu-rayを例に出し、「4Kリマスターはこれまでとは別物」と語る小田氏

今塚 技術的なところで言いますと、1970年代初期の青系の「おどおどしい色味」が表出する作品でも、もし当時の撮影現場に今の技術を持ち込むことができたなら、今回僕らが仕上げた発色を再現することができたと思います。もちろん当時のスタッフ達が、当時の技術を用いて詰めに詰めたものとして、今日まで親しまれているのも事実です。

ですので、世代の方が今回の「4KリマスターBOX」収録作を見られた際には「仮面ライダーじゃないよ、明るいよ」とか、「発色が良すぎる」などと思われるかもしれません。しかし、我々としてはそういう味付けを後付で行ったのではなく、当時の技術では再現できなかったフィルムに刻まれた色味を今では再現することができる、言ってしまえばこれが作品の持つ本来の色味、明るさ、シーンだよというのを理解して見ていただきたいな、と思っています。

16mmのテレシネについてお話した際にも触れたように、当時の色味というのは携わったクリエイターの狙いというよりも、当時の技術限界の表れとも言えるものだと思います。「昭和感のあるノスタルジックな色味」というのをそのまま出すべきか? と悩みもしましたが、フィルムの持っている情報は本来出すべきという考えの中、出過ぎてしまう部分を抑えながら作業に当たりました。

時代の経過に伴い、フィルムに眠っていた情報を引き出せたというのをお手に取って実感して貰えればと思います! ここで、今回の作業に携わった水沼(キュー・テック カラーリスト)が同席してますので意見をいただきましょう。

水沼 HDR化した際にライダーのマスクの光沢感などの素材感の表現には驚きました。あとは、HDR表現が顕著なところですと、爆発シーンには注目していただきたいですね。爆薬の使用量が今にしてみてもありえない『仮面ライダーV3対デストロン怪人』(1973年)オープニングで立ち上がる煙のディテールですとか、『仮面ライダーBLACK 恐怖!悪魔峠の怪人館』(1988年)では空撮で爆破シーンを押さえています。こういった派手なシーンについては、HDRならではの見応えがあると思います。

4Kリマスター版では、マスクの光沢感や素材感の表現など、これまでのメディアでは踏み込めなかった領域まで再現が可能となる

「仮面ライダーBLACK」の作品内で描かれる爆発シーンもHDR効果が多大に発揮される

今塚 確かにあの火薬の量は今ではありえないよね(笑)。当時携わった現場スタッフの方々もかなり危険な撮影だったのでしょう…って心配になるくらいの迫力というか…。

小田 『デストロン怪人』については先日のトークイベントでも宮内さんが「爆破が好きなんです」と話されていたり、むしろ宮内さんが火薬の量を増やす傾向があったり、カメラが回っていなくてもスタッフの中に自ら入っていたりと精力的な方だったそうですからね。仕上がった映像がなまじ迫力があるものだから、ネットでは尾ひれがついた「逸話」を見たりもしますね(笑)。

もはや日本の映像史に残ると言っても過言ではない程の爆発シーンが連続する『仮面ライダーV3対デストロン怪人』も、4Kリマスターにより細部がよりハッキリと表現されている

--「同じ方法で今の日本だと撮影できないだろう」という映像を、これまで以上に鮮明な映像で自身のコレクションとして所蔵、アーカイブとして手元に残せるというのは本当にファン冥利に尽きると思います。この度はお忙しい中、貴重なお話の数々をありがとうございました!



今から50年前、TVから生まれたヒーローである仮面ライダー。昭和、平成、令和と時代が移ろいゆく中、2000年放送の『仮面ライダークウガ』から現在放送中の『仮面ライダーリバイス』まで、21年に渡って絶えず展開が続いているのも、シリーズの礎たる「昭和ライダー」の存在は非常に大きいだろう。

時代を経るにつれて、シリーズの初期作品群は「歴史的」「レガシー」というような言葉で飾り立てられ、懐かしさを覚える対象となりがちだが、4Kリマスターという技術で文字通りさらなる “変身” を果たした昭和ライダーの劇場版は「懐かしさを覚える対象」ではなく、「仮面ライダー」という映像作品全体の今後の指針と成り得るような、熱いこだわりをもって製作されたことがありありと伝わる取材となった。


インタビュー中でも触れられているように、記者が見て感嘆したイベント上映版の画質でさえ2K上映のもの。フィルムの持つ情報量をすべて反映し、約50年越しの「全力全開」を収めた「仮面ライダー THE MOVIE 1972-1988 4KリマスターBOX」(税込販売価格:22,000円)は11月10日(水)の発売となる。

また、Amazonでは、めんこ風カード8種セットとカードデッキケース、さらに「東映チャンネル仮面ライダー生誕50周年記念特集放送ポスター(B2サイズ)」を封入したバンドル特典付き仕様を販売(税込:24,750円)。




「仮面ライダーTHEMOVIE 1972-1988 4KリマスターBOX」
組数:4K UHD BD 2枚/BD 2枚。販売価格:22,000円(税込)。

「仮面ライダーTHEMOVIE 1972-1988 4KリマスターBOX」

■収録内容
DISC1
・「仮面ライダー対ショッカー」(1972年3月公開)
・「仮面ライダー対じごく大使」(1972年7月公開)
・「仮面ライダーV3対デストロン怪人」(1973年7月公開)
・「五人ライダー対キングダーク」(1974年7月公開)
DISC2
・「仮面ライダー 8人ライダーVS銀河王」(1980年3月公開)
・「仮面ライダースーパー1」(1981年3月公開)
・「仮面ライダーBLACK鬼ヶ島へ急行せよ」(1988年3月公開)
・「仮面ライダーBLACK 恐怖!悪魔峠の怪人館」(1988年7月公開)

スタッフ 原作:石ノ森章太郎
発売元:東映ビデオ株式会社
販売元:東映株式会社

(C) 石森プロ・東映

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