HOME > インタビュー > 『シン・ウルトラマン』UHD BD、監督も「劇場と同じ」と太鼓判! こだわり満載の制作過程を聞く

邦画初ドルビービジョン。カラーグレーダーにインタビュー

『シン・ウルトラマン』UHD BD、監督も「劇場と同じ」と太鼓判! こだわり満載の制作過程を聞く

公開日 2023/04/08 07:00 編集部:松永達矢
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

「配信が流れている中、手にとってもらう意味」。こだわり抜かれたパッケージデザイン



───「シン・ウルトラマンBlu-ray 特別版 4K Ultra HD Blu-ray」のパッケージの装丁が2017年発売の「シン・ゴジラ Blu-ray 特別版 4K Ultra HD Blu-ray」を踏襲しているとファンの間でも大きな話題になりました。パッケージデザインについてどういったディレクションがあったのか、デザインの別案があったのかなど、教えていただけますか? 

取材時に用意していただいたサンプルは「最終版」では無いものの、過去発売された『シン・ゴジラ』との統一感が見て取れるデザインとなっている

小西 前段でお話した「ドルビービジョンの採用」などパッケージの仕様を決める会議の段階で「シンを冠した作品シリーズとして方向性を統一したいですよね」というお話も出まして、パッケージのデザインも『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズや、『シン・ゴジラ』のメディアパッケージのデザインをされている市古斉史(いちふるまさし)さんにお願いしましょうという流れがありました。なので、シリーズと一緒に並べられるようにというのが、やはりベースとしてはありましたね。

パッケージ外箱に書かれた英語の題字も元々海外展開用に作られていた、庵野さんの直筆版の題字を使用するというのも、過去のシリーズを踏襲するということで統一感を狙ったというところもあります。

庵野秀明直筆の海外展開用の題字をデザインするというのも、『シン・ゴジラ』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』メディアパッケージとの統一感を図っている(写真は監修中の物)

───発売前サンプルの段階でもアウターケースの「梨地感」も『シン・ゴジラ』のディスクを彷彿とさせます。

小西 今回用意したサンプルは最終版ではないので、質感のところはもう少し調整を重ねる予定でして、ケースの色についても本作のウルトラマンのボディカラーに近い物を出せるように監修を出しています。市古さんも苦労されていた点なのですが、理想のシルバーがなかなか出ず、グレーになってしまったりで、刷り上がったサンプルを3、4回程リテイクしています。

ウルトラマンのボディカラーをイメージしたアウターケース。シルバー感を出すため、幾度もリテイクを繰り返した(写真は監修中の物)

ちなみに4K UHD盤を封入するケースはゾーフィをイメージしたゴールド、ディスクのレーベル面も黒と紺の中間色…ゾーフィの身体に走るラインをイメージした配色に仕上げました。

4K UHD盤を封入するケース。光の星からの使者ゾーフィのボディーカラーをイメージしたゴールドを基調としている(写真は監修中の物)

4K UHD盤レーベル(写真左)と本編Blu-ray(写真右)。両者を並べると判別が付くように、4K UHD盤のレーベル面は黒ではなく、ゾーフィの体を走るライン同様、黒と紺の中間色となっている(写真は監修中の物)

───映像ソフト発売に先駆けてAmazon Prime Videoでの見放題配信が始まった本作ですが、所有できるパッケージとして力を入れた点についてアピールいただけますか?

小西 作品二次利用の流れとして、パッケージ収録版よりも先にAmazon Prime Video用の配信版が仕上がりました。これを二次利用の汎用的なマスターとしてそのまま配信いたしました。これまでのウィンドウですと、パッケージ発売後、見放題配信サービスに展開されるのが一般的でしたが近年では配信での先行作品も増えてきたように思います。

そこで重要になるのが、「見放題で見た上で、手に取って、買っていただくためにはどうするか」という要素です。そこで、外装の統一感のようなコレクターズアイテム的な要素を高めることもそうですし、本編の映像としてはAmazon Prime Videoでは流しきれない情報、Blu-ray以上のディスクにはドルビーアトモス音声(Amazon Prime Videoでは5.1ch音声を配信)を入れたり、何より4K UHD収録のドルビービジョンを最上級のグレードとして所有いただける形を作らせていただきました。

サブスクリプションサービスの隆盛と共に、映像パッケージの商流が変わり、パッケージ製品に重きを置くべきポイントを語る小西氏

個人的にも映像ディスクを揃えたり、オーディオシステムを組んでいるので思うのですが、映像配信も高いクオリティが出るようになってきてはいるものの、全幅の信頼を寄せているというわけではありません。回線状況によっては再生が途中でストップしたり、転送のレイテンシーが落ちて画質が悪くなるというのも、言ってしまえば配信ならではです。

特にこだわるという方ほど、同様の問題が気になる所だと思うので、オフラインで最上級のものを商品として完結させる。家に居ながら集中できる環境で楽しんで頂けるパッケージであるというのが、既に配信が流れている中、それでも作品を買って頂けるという意味ではかなり重要なのかなと思います。

───ドルビーアトモス音声の収録を上げていただきましたが、パッケージ収録されるBlu-rayについてはいかがですか? 

齋藤 本作に限った話ではないですが、通常のBlu-rayにおいても、ビットレートが配信とは異なりますので、フルHD基準で考えても、配信サービスでは約7Mbpsに対して、BDは約40Mbpsと5倍以上になります。そういう意味ではBlu-ray盤でも視聴時の安心感という要素は訴求できますね。

小西 そういう意味では、全部載せの「Blu-ray特別版 4K Ultra HD Blu-ray同梱4枚組」をおすすめしたいなというところもありますね。収録メディアの違いによる比較も可能なので!

あとは、当然と言えば当然ですけど、特典映像系のディスク(Blu-ray)ですね。特典映像についても、『シン・ゴジラ』などを踏襲してVFXブレイクダウンや、齋藤さんがお話いただいていたiPhoneなどの様々なカメラを構えるビハインドシーンも収録しています。本編映像制作の過程を確認していただいた上で、4K UHD盤のドルビービジョンでスクリーンライクな映像で楽しんでいただく、パッケージならではの楽しみ方としておすすめしたいですね。

(c)2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 (c)円谷プロ

意図した画を届けられる安心感。『シン・ウルトラマン』が対応機器普及のきっかけになれば



───配信となると「期間」が定められていたりなど、いつでも見られるというわけでもないという部分も、個人的にパッケージを買う動機になっているところがあります。

齋藤 自分が好きなBlu-ray/DVDは必ず買っているのですけども、最近は配信が主流になっちゃって、所有する方が減っちゃったのは寂しいなって思いますね。「好きな作品だから持っておきたいという」という前段に「配信で見れてしまう」という事実が付いてきてしまって、所有したいという欲望が分散するのもわかります。

「パッケージでしか観られないクオリティ」というのが、紐づいていないと今はソフトを買ってもらえないのかな、というところもあるので、今回の “全部載せ” 的な「Blu-ray特別版 4K Ultra HD Blu-ray同梱4枚組」は、『シン・ウルトラマン』を気にいって頂いてもらっているファンの方々の所有欲を満たせるアイテムになっていると思います。

僕からしても、4K UHD盤収録のドルビービジョン版は実際に作った色の通りなので、クリエイターサイドが望んだ形で観て頂けるというのも非常にありがたいですよね。従来のメディアですと、テレビの設定次第で見え方が変わってしまうので、そうすると我々の意図している映像が届けられない。一方ドルビービジョンは、プレーヤーとテレビが対応していればそういった補正を制御してソフトに収録された色情報を映し出してくれます。僕らが狙った画をユーザーに届けられるという安心感があります。

ドルビービジョン用のグレーディング時の様子を再現して頂いた1枚。写真左側に映るマスターモニター・EIZO ColorEdge「CG3146」で色味を確認しながら作業を進めていく

ただ、近年のテレビはドルビービジョンに対応しているというイメージが強いですが、まだまだ対応の有無を調べないと出て来ない程度には、普及している感じがしないですよね。

小西 そうですね。今回確認作業をする上でも、特にプレーヤーに関してはキツかったですね。レコーダー系の製品がドルビービジョン非対応というパターンが多いですが、家庭でのユースケースになると、再生機より録画機のニーズが高いんですよね。あとは、4K UHD盤の再生ができて、HDRもサポートしているPlayStation 5がドルビービジョンには対応していないなど…。

再生専用機も、ここ2、3年新しいモデルが出ていないという状況もリサーチの上で知ることにもなりましたが、比較的中価格帯のモデルからアップデートでドルビービジョンに対応するんだな、というのが今回の作業で分かりました。そこを踏まえた上でも『シン・ウルトラマン』4K UHD盤の為に機器を買い替える価値はあると思います!

齋藤 コンテンツが一つのきっかけになって、国内メーカーが意識した商品を作ってくれると良いなとは思いますね。それこそ新商品のプレーヤーと『シン・ウルトラマン』の4K UHDディスクをワンセットで売るみたいなことがあってもいいですよね(笑)。

次ページ「他の作品でここまで辿り着けるか」『シン・ウルトラマン』4K UHD盤に込めた想い

前へ 1 2 3 4 5 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー196号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.196
オーディオアクセサリー大全2025~2026
特別増刊
オーディオアクセサリー大全
最新号
2025~2026
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.22 2024冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.22
プレミアムヘッドホンガイド Vol.32 2024 AUTUMN
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.32(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2024年冬版(電子版)
WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX

本ページからアフィリエイトプログラムによる収益を得ることがあります

NEWS
AV&ホームシアター
オーディオ
モバイル/PC
デジカメ
ホビー&カルチャー
過去のニュース
RANKING
イヤホン・ヘッドホン
AV機器売れ筋
さらに見る
AWARD
VGP
DGPイメージングアワード
DGPモバイルアワード
オーディオ銘機賞
オーディオアクセサリー銘機賞
アナロググランプリ
REVIEW
レビュー
コラム
注目製品クローズアップ
優秀録音ハイレゾ音源レビュー
さらに見る
連載
折原一也の“いまシュン!”ビジュアルプロダクト
高橋 敦のオーディオ絶対領域
山本 敦のAV進化論
角田郁雄のオーディオSUPREME
今週の発売新製品
アニソンオーディオポータル
さらに見る
INTERVIEW
インタビュー記事一覧
さらに見る
BRAND
注目ブランド情報
MAGAZINE
オーディオアクセサリー
analog
ホームシアターファイル
プレミアムヘッドホンガイド
プレミアムヘッドホンガイドマガジン
雑誌定期購読
雑誌読み放題サービス
メルマガ登録
SHOPPING
PHILE WEB.SHOP
通販モール