S9800の後継機がついに登場
【更新】ハーマン、JBL「Project K2 S9900」を発売 − EVERESTの技術を多く採用
発表会では冒頭、同社社長の安田耕太郎氏が登壇。同氏はまず、「この時期に新製品発表会を行うのはJBLとして初めてで、業界的にも稀有なことではないか。JBL、そしてオーディオ業界の一員として、一緒に業界を活性化できればと考えている」と述べ、その後、10枚ほどのスライドを見せた。
スライドの内容は、この1月20日に行われた米オバマ大統領の就任式や、NFLスーパーボウル、グラミー賞の発表会場、アカデミー賞の発表会場など。同氏は、これらの会場にJBLのPAシステムが使われていることを明かし、「JBLはユニットありきで、ユニットまで含めすべて自社開発、自社生産を行っている。業務用機には、容易に壊れない耐久性のほか、設置がかんたんであり、なおかつコストパフォーマンスが高くなければならない。これらを愚直に、謙虚に進めているJBLの姿勢を理解してもらいたい」と、スライド上映の理由を説明した。
また同氏は、「わずかこの2ヶ月のあいだに、これだけの人々に力を与えるイベントが開かれた。ここから感じられるのは、燃えたぎるような熱気、エネルギー、情熱、感動、あえていえば希望、期待、そしてこれらからもたらされる喜び、楽しみ、興奮だ。新製品を発表する前に、このことを強調したかった。JBLとハーマンジャパンは、あえて2月に新製品を発表することで業界の発展に寄与できればよいと、真に願ってやまない」と力強く述べた。
その上で同氏は、「テクノロジーとアートのマリッジこそ目指すべき所。科学を追究する一方、魂や精神など人間的な部分を融合させることが重要だ。オーケストラでも、楽器演奏者と指揮者がいないと演奏は成り立たない。スピーカーで言えば、ユニットとシステム設計が両輪だ。そして、最終的にはこれらを感性でまとめ上げる人間の総合的な魅力が重要になる」と持論を展開。
そして同氏は、JBLのチーフシステムエンジニア、Greg Timbers氏を紹介し、「彼こそがマエストロ。電子工学の修士課程を卒業後、30数年間JBL一筋の人間だ。Timbers氏の言葉を引くと、『私はいつでも音楽を楽しみたい。お酒が好きな人が晩酌をするように、私は音楽を飲みたい。自分の耳で、魂の声を聴くようにスピーカーを設計する』と述べている」とし、Timbers氏が「“テクノロジーとアートのマリッジ”を担う最高の人材で、我々の誇る“ミスターJBL”。理想に近い設計者だ」と賞賛した。
中盤には、そのTimbers氏からのビデオレターも上映された。Timbers氏は、「日本のオーディオコミュニティはレベルが高く、ディテールを大事にする。私は日本市場を考察する中で、形状が機能に従うことの重要性をより深く理解するようになった。そのような市場で2001年に登場したK2 S9800が受け入れられ、そして今日、S9900を発表できたのは大きな喜びだ」と語り、S9900のデザインについては、「インダストリアルデザインを担当したAshcraft氏に要請したのは4点で、トールボーイであること、EVERESTのデザインモチーフを採り入れること、カーブド・バッフルとホーンリップを備えること、音楽的に優れていることを視覚に訴えることをお願いした」と明かした。
発表会の終盤、K2 S9900の音出しも行われた。再生に使われた機材はいずれもマーク・レビンソンで、SACD/CDプレーヤーには「No512」、プリアンプには「No32」、モノラルパワーアンプには「No53」が使われた。試聴ソースはティファニーの「アメージング・グレース」、アーウィン・シュロット「オペラ・アリア集」、THE GREAT JAZZ TRIO「BLUE MINOR」、Carmingnola Mullova「ヴィヴァルディ:2つのヴァイオリンのための協奏曲集」など。広い会場で、かつ左右スピーカーの距離も非常に離れていたので音質レビューを行うことは難しいが、繊細な高音から力強い低音、金属楽器の質感、そして肉厚なボーカルまで、まったくストレスを感じさせずに表現する。ポテンシャルの高さを存分に感じ取ることができた。
Greg Timbers氏は、「なぜJBLの音が好きになったか。若い頃ずいぶん考えたが、結局、ダイナミクス=動的なリニアリティーが好きだったのだ。周囲のトランジェントやスピード感が重要と言うことだ。そしてこれこそがJBLのJBLたるゆえんだ」と以前に語っているそうだが、同氏の言う“ダイナミクス”が、K2 S9900にも脈々と受け継がれていることは確かだ。
なお本機は、2月21日に発売される「季刊・オーディオアクセサリー」でも紹介する予定。こちらもあわせてチェックをお忘れ無く。
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