門外不出の専用器具で耳型採取、マイスターの手作業で製作
“テーラーメイドイヤホン” Just ear、先行受注開始 − ソニーの耳型職人・松尾氏に詳細を訊く
■写真も門外不出?! Just ear専用器具で耳型採取
前述のとおり、理想のサウンドを実現するためにはドライバーの位置が非常に重要になってくる。そのため、耳型を採取する際も、その位置をあらかじめ考慮した採取方法が重要だ。
そのため、ソニーエンジニアリングと東京ヒアリングケアセンター共同で、Just ear専用の採取用器具を特別開発した。これは実際に耳型を取る人だけが目にできるもので、写真撮影もNG! なので以下のテキストから、その全貌を想像していただければと思う。
専用器具はヘッドホンのように頭に装着するかたち。耳のあたりに複数の調節機構があり、シェルのモックが耳にベストフィットする深さや角度を算出する。これはソニーのヘッドホンMDRシリーズの開発者が手掛けたもので、菅野氏とともに何度もブラッシュアップを重ねることで完成させたという。
耳型を取る素材も、通常のものとは違う特殊なものを使用。素材を耳のなかに注入するガンも、耳孔のなかがよく見えるよう照明がふたつ取り付けられる等、特別なものを使用する。数多くの耳型を採取してきた菅野氏のナビのもと、正確な作業が行われる。
■「音質のカスタム」はどう行うの?
耳型を採取したら、「XJE-MH1」の場合は続いて音質カスタマイズを行う。松尾氏が、よく聴く音楽や好みのサウンドなどを、1時間ほどかけてヒアリング。「こんな音はどう?」という提案もしてくれるという。用意された試聴機を使いながらPC上で調整を行い、完成時の音をシミュレーション。そのデータをもとに、導管やドライバーを調整することで完成版の音をチューニングする。そして商品の受け渡し後にもう一度、松尾氏が最終の音質調整を行う。
「XJE-MH2」は、「モニター」「リスニング」「クラブサウンド」という3つのラインごとに異なるサウンド傾向となる。「モニター」は原音重視で色づけのない音。「リスニング」は音楽の楽しさを感じられるような音で、様々なジャンルをバランス良く楽しめるのが特徴。
そして「クラブサウンド」は、松尾氏イチオシのモデル。自身もDJをやるなどクラブに親しんでいる松尾氏は「正直、聴き疲れするかも知れません。でもダンスミュージックのサウンドってこういうものだと思うんです。ダイナミックドライバーならではの、フロアにいるような、体にグッとくる低音を楽しめると思います」とコメントしていた。
3モデルは、中高域はそこまで差をつけず、低音の再生力やバランスを調整することでキャラを立たせているとのこと。細部を見てみると、導管部分の孔の開け方や音質調整材の配置がそれぞれ異なっている。
■専任のマイスターがひとつひとつ手作業で製作
製作は、採取した耳型をもとに、専任のマイスターがひとつひとつ手作業で行っていく。マイスターについて詳細は公表されていないが、普段は自動車のクレイモデル(デザイナーのスケッチをもとにしたほぼ原寸大の粘土模型)などを作っている人たちだという。
「最初は製作も全て自分でやろうと思っていたのですが、時間の制約などもありますし、さすがにそれは無理だろう、と。なのでお願いできる人を探すべく、周囲に意見を求めながら色々な方のもとを訪ねました。僕が作ったものも良い出来だと思っていたんですが、マイスターに見せたらダメ出しされまして(笑)。ここはこうするといいのでは、と意見をいただいたりしましたね。とてもやりがいを持って良いものを作ってくださる方です」(松尾氏)。
商品受け渡し後も3ヶ月以内であれば無償でフィッティング調整も可能(予約制)。保証期間は1年間となる。
■今後はヘッドホンなども展開検討
今後は、テーラーメイドのヘッドホンも製作を検討しているとのこと。また音質プリセットモデルも、現在の3つからバリエーションを増やすことも考えているという。
「Just earというブランドでやれることは本当に沢山あると思います。楽しくてしょうがないです」と語る松尾氏。一流のエンジニアが持てるこだわりのすべてを投入したモデルを、手にしてみてはいかがだろうか。
【問い合わせ先】
東京ヒアリングケアセンター 青山店
107-0061
東京都港区北青山2-9-15 三輪ビル1階(銀座線外苑前駅から徒歩2分)
TEL/03-3423-4133
営業時間:10:00〜19:00(水・土曜日の午後は完全予約制)
定休日:日曜日・祝日
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