3年間かけて開発した最上位機
読者が体験!オーディオテクニカの旗艦MCカートリッジ「AT-ART1000」イベントレポート
■石田氏がART1000の音をナビゲート
「他のハイエンドカートリッジにはないサウンド」
メインパートでは、石田氏がセレクトしたディスクを使用してART1000のサウンドをじっくりと試聴しました。石田氏は「初めて聴いたときの印象は ― 内外のハイエンド製品も色々聴きましたけど、そういうのとはちょっと違う製品だと感じました。これを製品化できたのは素晴らしいことですね、と小泉さんにもお話ししました」と振り返っていました。
試聴に用意した音源は「音質最優先のカートリッジなので、盤も音質最優先のものを」ということで、石田氏自ら録音したダイレクトカットのレコード「キャロル・スローン『スプリング・イズ・ヒア』から『ハニーサックル・ローズ』」などをセレクト。
さらに、小泉氏が開発時にサウンドチェックで使用していたという、クライバー/バイエルン管弦楽団の「椿姫」や、「カンターテ・ドミノ」から「クリスマス・ソング」を使った試聴も実施。小泉氏いわく「声の質感や音像の大きさ、シャープさ。そして後半のコーラスの声の帯域がしっかり聞こえてくるかどうかをチェックしていました」とのこと。ここでは過去製品との比較として、ブラッシュアップを重ねつつ40年以上続いている人気シリーズ「33シリーズ」の最新モデル「AT33Sa」(2014年発売)を用意して聴いていただきました。
AT33SaではART1000と比べるとボーカルの線が細く、コーラスの深みや各パートの分離がやや少ないため、音が一部団子になってしまっているところも聴かれました。「ART1000は分解能や音の立ち上がりの良さが全く違います」と語る石田氏。殆どの来場者も「違いがよく分かった」と答えていらっしゃいました。
さらに、CDとアナログ盤の比較として、ラトル/ベルリンフィルの「シューマン:交響曲全集」から交響曲第四番3楽章をチョイス。こちらも多くの方が違いを感じていただけたようすでした。
「私はオーディオ愛好家として、音楽が主役にあってオーディオは脇役、という雰囲気が気に入らないんです(笑)オーディオは単に音楽を聴く道具ではなく、少しでも良い音で聴くために様々な追求を行う、奥が深い趣味の世界。今回ART1000を聴いてみて、アナログにはまだこんなに音を良くできる部分があるんだなあと実感しました。良い音に出会ったとき、人は非常に幸福な気持ちになります。それを味わっていくのがオーディオの楽しみ。みなさんもぜひ、色々追求してみてください」とコメント。
最後は自ら録音した「世界の蒸気機関車」から国鉄山口線のサウンドを再生。蝉や虫、鳥が鳴く初夏の山間を遠くから走ってくる蒸気機関車が、汽笛をあげてトンネルに入っていくまでの光景が目に浮かぶようで、石田氏も「目の前をリアルに通り過ぎて行きましたね」と嬉しそうに締めくくりました。
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