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鈴木裕 的 iFI-Audio「Pro iCAN」活用術。工夫次第で何通りもの音を手に入れられる!
真空管を採用したフルバランス回路による「3つの音」を持ったバッファーアンプ部
入力から出力までは、ホット/コールド/グラウンドというフルバランス回路を採用している点も注目だ。音量は左右それぞれのホット/コールドの計4chでコントロールすることになるが、そこには定評ある日本アルプス社製の6トラックによるボリュームを搭載。リモコンによる操作も可能だ。
そしてPro iCAN最大の特徴とのなるのが、バッファーアンプ部である。「Solid-State」と「Tube」の2系統、そして「Tube+」と名づけられたによる合計3つの音を楽しめる。しかも、この3つのモードは電源スイッチを入れたまま切り換えることが可能だ。
まず、「Solid-State」のモードを説明してみよう。MOS-FETバッファを備えたバイポーラーのA級パワーステージを採用(ただし、低インピーダンスのヘッドフォンを大音量で使用する際はAB級動作となる)したこのモード時の基本的な音は、高域の倍音成分は入力されたままで、シュアで剛性感の高い音を基調とする。そのため、例えば真空管を使った倍音領域の存在感の高いパワーアンプとの組み合せ等で生きてくる。
「Tube」のモードではGE製の「5670」を2本使用する。この「5670」という真空管は、もともとはウェスタン・エレクトリック社の「WE396A」をルーツに持つそうだ。ちなみに真空管モードにスイッチを切り換えるとトランジスターの回路はオフになる。この時の音の傾向としては高域の倍音が増え、全体的に音の感触が若干ソフトになり、微少領域の再現性も向上。これは実に真空管アンプらしい音といっていいだろう。
そして3つめの「Tube+」のモードでは、回路全体のループゲインを減少させ、ネガティブフィードバックを最少にしているという。これによって「真空管が持つ自然倍音とトランジェント性能の間でのトレードオフの傾向」を「真空管」のモードの時と変えている。実際に聴いてみると、より高域の倍音が増えて、真空管らしさをより強めにした音と言っていい。