PCMは全て1bit DSD変換して処理

マランツ、独自開発のディスクリートDACを搭載した旗艦SACDプレーヤー「SA-10」

公開日 2016/09/01 10:00 編集部:小澤貴信
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大容量トロイダルコアトランスやカスタムブロックコンデンサーで電源を強化

電源トランスには、SA-7S1と同等のコアサイズを持ち、かつSA-7S1に対して1.3倍となる110VAの容量を持つトロイダルコアトランスを採用。アンプに使用することも可能な容量を持っており、余裕ある電源供給を行う。トランスの二次巻線は高純度OFCで、アナログオーディオ回路/デジタルオーディオ回路/ドライブメカ/ディスプレイなど各部専用線を用いて回路間の干渉を抑制する。さらにトランス外周に取り付けられたコアリングとショートリング、銅メッキケースにより音質に悪影響を与える漏洩磁束も防いでいる。

大容量トロイダルコアトランス

アナログ回路とDAC回路に給電するブロックコンデンサーには、6,700μFという容量を備えるニチコン製マランツ専用カスタム品を2個用いている。また、ブロックコンデンサーとしての組成が改良され、端子の材質も真鍮から銅に変更された。

アナログ出力端子には、純銅削り出しのピンジャックを採用。一般的な端子に使用されている真鍮に比べて硬度が低く機械加工の難しい純銅を、ブロックから手作業で切削加工して生産される特注品となる。表面処理は、従来のニッケル下地+金メッキの2層から、厚みのある1層のニッケルメッキに変更された。なおこのニッケルメッキ端子は、同社が取り扱うB&Wのスピーカー「CM S2」シリーズで採用されたスピーカー端子に着想を得て試作され、音が良かったために実際に採用された。

新開発のニッケルピンジャックを採用

本機で採用されたアルミ削り出しフット

マランツのプレーヤーが一貫して力を入れてきたヘッドホン出力を本機も搭載。ゲイン切替機能付きのフルディスクリート・ヘッドホンアンプを採用した。HDAM-SA2による高速電流バッファーアンプにより、メインのアナログオーディオ出力回路との相互干渉を抑制。ゲイン切り替えは3段階から可能となる。

ヘッドホンアンプ部


SA-7S1以来の“リファレンスSACDプレーヤー”

デザインについても、11シリーズをベースに細部の変更が加えられた。企画段階では10種類におよぶ新デザインを起こしたという。しかし、従来デザインが好評だったこともあり、「変えることが目的ではない」という結論に。一方で、細部のブラッシュアップが実施された。具体的にはセンターピースの幅が広がり、従来はスリット部に配置されていたボタンを省略。よりシンプルなデザインとなった。

筐体のデザインもマイナーチェンジ

マランツは、SA-10を“リファレンスプレーヤー”と形容する。これは「マランツの製品開発用リファレンスとして用いられる」という意味だ。実はSA-10が登場するまで、2006年に発売されたSA-7S1がリファレンスプレーヤーの座を保ち続けていた(従来のトップエンドモデルであった「SA-11S3」もリファレンスプレーヤーではなかった)。SA-10はマランツの現時点でのフラグシップという意味合いを超えて、同ブランドにおいて重要なポジションを占めるということになる。

SA-7S1以来のリファレンスモデルとなった

尾形氏は「SA-10では、従来のメカ、デジタルフィルター、アナログ回路に加えて、D/Aコンバーターの全てもマランツで手がけました。まさに入り口から出口まで、マランツの手の中にあるSACDプレーヤーといえます」と語っていた。

発表会におけるSA-10の試聴デモンストレーションには、前マランツ・サウンドマネージャーであり、現マランツ・ブランドアンバサダーである澤田龍一氏も登場した。サウンドマネージャー職は今年3月に尾形氏にバトンタッチされたが、SA-10は開発期間に3年を費やしたこともあり、開発初期におけるソリューションとしてのディスクリートDACの検討は澤田氏が行っていたとのこと。モデルの仕様が決まって以降の音質検討は尾形氏が担当。最終調整には澤田氏も参加したという。

澤田龍一氏


SA-10の主なスペック

主なスペックは以下の通り。オーディオ特性(SACD)は、再生周波数範囲が2Hz〜100kHz、再生周波数特性:2Hz〜60kHz(-3dB)、S/Nが12dB(可聴帯域)、ダイナミックレンジが109dB(可聴帯域)、高調波歪率が0.0008%(1kHz、可聴帯域)、ワウ・フラッターが水晶精度となる。出力レベル(SACD)はアナログアンバランス出力が2.4 V(10 kΩ)、ヘッドホン出力:50 mW/32Ω(可変最大)。

消費電力は50W(待機時0.3W以下)、外形寸法は440W×127H×419Dmm、質量は18.4kg。

PM-10は2016年度内に登場予定

発表会会場には、SA-10とコンビとなるフラグシップ・プリメインアンプ「PM-10」も参考出展された。発売は2016年度内を予定しており、価格は未定とのこと。

発表会会場に展示されたSA-10/PM-10

PM-10はマランツの旗艦プリアンプ/パワーアンプ「SC-7」「MA-9」の技術を、リサイズせずに1筐体に投入。「セパレートアンプのクオリティーをプリメインアンプで実現する」ことをコンセプトとしたモデルだという。当初はSA-10と同時期での発表・発売を目指していたが、「非常にチャレンジングな取り組みを行っており、開発予定が当初より遅れている」(高山氏)とのことだった。

株)ディーアンドエムホールディングス 取締役 ジャパン・セールス&オペレーション プレジデント 中川圭史氏

発表会冒頭には、ディーアンドエムホールディングスの取締役である中川圭史氏が登場。「SA-10は、マランツの今後の10年を担うモデルです。1982年のCD登場以来、革新を繰り返してきたマランツのプレーヤーですが、このSA-10も大きな節目のモデルになると確信しています」とその意気込みを述べた。

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  • ジャンルSACDプレーヤー/トランスポート
  • ブランドMARANTZ
  • 型番SA-10
  • 発売日2016年10月下旬
  • 価格¥600,000(税抜)
【SPEC】<SACD>●再生周波数範囲:2Hz〜100kHz ●周波数特性:2Hz〜60kHz(-3dB) ●ダイナミックレンジ:109dB(可変帯域) ●S/N比(A-Weighted):112dB(可聴帯域) ●高調波歪率(1kHz):0.0008%(可聴帯域) <CD>●再生周波数範囲:2Hz〜20kHz ●周波数特性:2Hz〜20kHz(-3dB) ●ダイナミックレンジ:98dB ●S/N比(A-Weighted):104dB ●高調波歪率(1kHz):0.0015% <入出力端子>●音声入出力端子:バランス入力×1 ●同軸デジタル音声:入力×1/出力×1 ●光デジタル音声:入力×1/出力×1 ●USB入力:TypeB×1/TypeA×1 ●その他:ヘッドホン出力、アナログ出力(アンバランス)×1 <その他>●消費電力:50W(待機時0.3W以下) ●外形寸法:440W×127H×419Dmm ●質量:18.4kg