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「技術のソニー復活の旗印に」 − ソニー有機ELテレビ・第1号機発表会詳報

公開日 2007/10/01 18:08
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ソニーが世界初の11V型有機ELテレビを発表

XEL-1
ソニーは本日、同社の新しい戦略商品となる有機ELテレビ「XEL-1」の新製品発表会を開催した。会場には同社社長の中鉢氏も駆け付け、本製品の発売を「技術のソニー復活の旗印にしたい」と宣言した。

■有機ELテレビは“技術のソニー復活の象徴”


中鉢良治氏
発表会の冒頭で挨拶した、同社代表取締役社長兼エレクトロニクスCEOの中鉢良治氏は「2005年に当社の新しいマネージメント体制を発足した際に、私は“ソニー復活条件”として、商品力・技術力・現場力の3つの強化を掲げた。同年9月に発表した中期経営方針では、将来勝ち続けるためのR&D戦略の一つとして、次世代ディスプレイデバイスとして有望な有機ELテレビに集中することを宣言した」とし、本日発表のXEL-1の商品化には「約14年間の時間をかけた。研究開発、製造、販売までにいくつかの大きな壁を越えて、ようやくこの日を迎えることができた」とその歴史を振り返った。

昨今のソニーに対する評価として「技術はあるのに、なかなか魅力的な商品を出すことができていない」との声があると指摘したうえで、中鉢氏は「本日皆様に紹介する世界初の有機ELテレビを、“技術のソニー復活の象徴”とし、反転攻勢の旗印にしたい」と意気込みを語った。


■有機ELテレビは“技術のソニー復活の象徴”

続いて代表執行役 副社長 コンスーマープロダクツグループ担当の井原勝美氏が登壇し、新製品の特徴を紹介した。


井原勝美氏
井原氏は本年4月に都内で開催されたイベント「第17回 FINETECH JAPAN」の基調講演において、11型有機ELテレビの年内商品化を宣言していた(関連ニュース)。発表以後、注目を浴び続けてきた有機ELテレビの商品化について、井原氏は今日「半年間の間に量産化の準備を整え、お約束通りソニーから“世界初”の有機ELテレビを商品化することができた」と述べた。

井原氏は、電流が通ると発光する有機材を使ったテレビのメリットとして、「バックライトが必要な液晶、放電空間が必要なPDPと違って非常に薄くなるし、今まで見たことの無いような高画質が楽しめる」と説明。また同社としては、有機ELを用いたパネルを「ORGANIC PANEL」と名付け、環境へのやさしさも備えるデバイスであることもあわせてアピールしていく考えが示された。




ディスプレイ部の厚さが約3mmというデザイン面での特徴について、井原氏は「浮遊感を表現したかった。色々なユーザーのライフスタイルに合った使い方ができる薄型ディスプレイとして、魅力を訴求していきたい」と説明する。

「有機ELテレビの試作機を発表したのち、すぐに市場関係者を中心に大きな反響をいただいた」という井原氏は、今後の商品戦略について「すぐに現在の液晶テレビを置き換えるものではないが、液晶テレビの“次”に位置づけられる、非常にポテンシャルの高い技術だと思っている。有機ELテレビの開発に関わる全ての方々と一緒になって、関連産業を育成して行きたい」と豊富を述べた。


■ハイクオリティなパーソナルテレビ

最後に同社グローバルマーケティング部門長の鹿野清氏が登壇し、有機ELテレビのマーケティング戦略について説明した。


鹿野清氏
鹿野氏は地デジの普及拡大にあわせ、今後もさらなる拡大が見込まれる薄型テレビ市場において、有機ELテレビを新しい需要を喚起する「ディスプレイビジネスの新機軸」として確立していくと説明。さらに新製品「XEL-1」の導入戦略について鹿野氏は、有機ELテレビの高い価値を共感してもらえる、ライフスタイルへのこだわり層、ハイエンド志向のファンに向けて、未体験のパーソナルテレビとして魅力を訴求していく方針を示し、「このスリムでスタイリッシュなデザインにスポットをあてながら、今までに置けなかった場所に置ける・置きたくなるテレビとしてアピールしていきたい」とした。


また「XEL-1」のPR戦略について鹿野氏は、「世界初の新しいデバイスを使った有機ELテレビの登場感をしっかり演出して行きたい」とし、銀座ソニービル・ソニースタイルストアでの先行展示や、リッツ・カールトン東京、日本航空インターナショナル(株)、レクサスギャラリー高輪などとパートナーシップを組み、体験・体感展示を実施する計画についても明らかにした。

本日の発表会には、新製品「XEL-1」のセット設計を担当した同社テレビ事業本部 E事業開発部 部長の白石由人氏も出席した。以下に、井原氏、白石氏、鹿野氏が出席した質疑応答の模様をご紹介する。

:有機ELテレビの商品化に向けて、最も力を入れたポイントはどこか。
:世界初の有機ELテレビとして、前例のない中で一号機をつくるのは大変だったが、努力のしがいがある仕事だった。最も力をいれたポイントとして、ひとつに絞るのは難しいが、有機ELパネルの特性を素直に商品に入れていくことに注力してきた。(白石氏)

:ソニーの有機ELテレビは今後どちらの方向へ進化していくのか。テレビとしてどのように発展させていく考えか。
:まだ一号機の発表段階なので、まずは本機の評価をしっかりと受けていきたい。そのフィードバックを早くもらって次の進化につなげたい。(白石氏)

今回はパーソナルサイズのテレビを発表したが、将来的にはこのサイズにとどまらず、大型化を進めていくことが当面の課題だ。パネル部分がとても薄いので、その特徴がどんなユーザーのライフスタイルにマッチするのかを見極め、「新しいテレビの在り方」を同時に模索していくことも重要なテーマの一つだ。(井原氏)

:パネルの寿命の数値はどのくらいか。
A:寿命は1日8時間の使用で10年使える十分な能力を有している。スタンダードモードで約3万時間を実現している。(白石氏)

:ソニーでは液晶テレビにも力を入れているが、将来的には有機ELで置き換えるつもりか。それはいつ頃の予定か。
:短期的には液晶テレビを有機ELで置き換えるつもりはない。現在のワールドワイドでのビジネスの中心はあくまで液晶テレビであり、当面のあいだ、軸足を液晶に置いてビジネスを展開していく。ただ、液晶の次に来るポテンシャルの高い商品として、有機ELに力を入れてきたし、今後も積極的に展開していきたい。まずは大型化の開発を進め、技術力を養いつつ、市場の反応を見ながら液晶との切り替え時期についても判断していきたい。(井原氏)

:今回画面のインチサイズが11V型になった理由は。
:当社がモバイル用途に開発してきた有機ELディスプレイの生産ラインを有効活用した結果、このサイズになった。生産はソニー社内の製造部門で行っている。(白石氏)

:有機ELへの今後の投資計画についてはどのような見通しを立てているか。
:11V型を商品化するにあたっては、現存の設備を使うことができたので、今の時点での投資は非常に限定的なものだ。この先については色々と計画はあるが現時点では公表できる段階にはない。(井原氏)

:XEL-1ではディスプレイがアーム部に設置されたデザインだが、その可動範囲はどの程度か。また、ノートPCのようにディスプレイを本体に、水平にたたみ込むようなデザインは検討に上がらなかったのか。
:アームは後ろへ50度傾けることができる。お客様の設置ニーズに十分対応できる角度と考えている。ディスプレイをたたみ込むデザインは検討しなかった。今回はあくまでテレビとして卓上に設置してもらうための商品であり、デザインの美しさも「置いているだけで楽しめる」ものを追求してきたつもりだ。(白石氏)

:x.v.Colorには対応しているか。
:本機は非対応。今後の検討項目として考えている。(白石氏)

:液晶との寿命比較はどの程度と考えられるのか。
:単体機同士での比較は難しいので、あくまでデバイス単位での比較ということになるが、約2倍程度と考えている。(鹿野氏)

:XEL-1の海外市場への展開はあるのか。
:ショーなどの展示実績は大変好評なので、すぐにでも始めたいところだが、現時点では未定だ。(鹿野氏)

:有機ELを使った他のアプリケーションにはどのようなものを検討している。
:企業秘密なので答えられない。(井原氏)

:体験・体感の場を広げる機会として、どのようなことを考えているか。
:今回はリッツ・カールトン、日本航空インターナショナル、レクサスギャラリー高輪など、パートナーとのプロモーションが実現するが、今後は体験・体感の場をもっと広げていきたい。本機は見てもらうことが最大のセールスツールになると考えている。(鹿野氏)

:XEL-1の販売、流通面での戦略は。
:電気店での展示・販売は新しい什器を使って積極的に展開する。電気店以外での展示も考えているが、販売については未定だ。(鹿野氏)

:20万円(税込)という商品の価格はどのように決まったのか。採算は取れる価格なのか。
:色々な方々からの意見をいただいて私が決定した。XEL-1は長く販売を続けたいので、バリューに対する価格を維持できる値頃感をつくりたかった。採算性については、正直なところあまり考えていない。(井原氏)


(Phile-web編集部)

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