ファインテック・ジャパン基調講演
デジタル放送&テレビに今後求められるものとは?NHK/パナソニック/ソニーが展望を語る
■“イノベーション”で切り拓く、ソニーのグローバルテレビビジネス戦略
− ソニー(株)業務執行役員SVP テレビ事業本部長 石田佳久氏
「テレビの復活なくしてソニーの復活なし」と切り出した石田氏。2008年の“BRAVIA”が打ち出した「4倍速駆動」「薄さ9.9mmのテレビ」「LEDバックライトによる100万対1のコントラスト」などといったフィーチャーを挙げ、「どんどん新しいことにチャレンジしていく」と意欲を示した。
石田氏によれば、昨年9月のリーマンショック以降、需要は引き続き弱含みで急拡大の可能性は低いという。しかし、アナログ停波によるデジタル化の加速、デジタル化による商品ライフサイクルの短縮などの理由から、テレビ市場は「長期的に見れば年率10%以上の市場成長が見込める」と分析。大型液晶テレビも今年後半には供給過剰が緩和され、景気回復のサインが見えれば再び成長曲線を辿ることになるだろうとの考えを示した。「ブレーキからアクセルへ転換するタイミングの見極めと、迅速な行動が重要。市場動向を注視し、いざというとき俊敏に反応するための事前準備をしておきたい」(石田氏)
続けて、ソニーのテレビビジネスの方向性として「サプライチェーンマネージメントの抜本的な改革」「デジタル環境下でのあるべき商品づくり」「商品価値の方向性シフト」の3つを掲げた石田氏。まず、「サプライチェーンマネージメントの抜本的な改革」として、全世界12箇所にあった工場を再編し、工場と販売拠点の連携を強固にすることを狙う。
次に「デジタル環境下でのあるべき商品づくり」として、「小型シリコンチューナーモジュール」を開発。従来品の約2分の1のサイズながら高感度・耐妨害特性・低消費電力を実現したこのモジュールを、国内では春モデルから搭載。以降海外モデルへ順次搭載していく予定だという。
また、IPTVへの対応や、Widgetをアピール。アクトビラ ビデオ・フル(国内)、BRAVIA Internet Video(北米)への対応や、アプリキャストを例に挙げた。特にアプリキャストのひとつである、携帯電話からメールした写真とメッセージをテレビで直接見られる「<ブラビア>ポストカード」をアピール。「パソコンを四六時中使っている人はさほど多くない。しかし、携帯電話は1人1台レベルで普及している。携帯電話とテレビを連携させ、距離や世代を超えた新しいコミュニケーションを実現したい」と語った。
さらに、DLNAを使って家庭内のさまざまな部屋でひとつのコンテンツを楽しめる「ルームリンク」も訴求。「ルームリンクは大きなチャレンジのひとつで、全社をあげて取り組んでいる」と、大きな位置付けがされていることを明らかにした。
「商品価値の方向性シフト」としては、大型化・フルHD化の“次”の価値として、動画のコマ間を保管しクッキリした映像を実現する「モーションフロー240Hz」や、「トリルミナス RGB ダイナミックLED」バックライト、スリムな冷陰極管を採用し薄型化を実現する「エッジライト方式」、ワイヤレス伝送などを列挙。付加価値として消費電力の低減や、3Dディスプレイへの着手も訴求した。
石田氏は「『画質』へのこだわりはもちろん、低消費電力といった『環境』へのこだわり、そして製品のデザインなど『佇まい』へのこだわりという3つを中心に、どのブラビアを選んでも満足していただける製品づくりを進めたい」と今後の姿勢をアピールした。