今後は業務用機器開発に注力
キヤノン、SEDテレビの開発を中止 − SEDのこれまでの歩みを振り返る
キヤノンは、SEDを採用した家庭用テレビの開発を中止することを明らかにした。同社では開発中止の理由として、量産化のためのコストダウンが行える目途が立たなかったことを挙げている。
キヤノンは今後、SEDを教育用や放送局用ディスプレイなど業務用途で活用することを目指し、一部で開発を続けていく。子会社のSED(株)も存続させる。
SED(Surface-conduction Electron-emitter Display)はキヤノンが1986年から研究を開始し、1999年から東芝と共同で実用化に向けて開発を行った。
ブラウン管と同様、電子を蛍光体に衝突させて発光する自発光型で、ブラウン管の電子銃に相当する電子放出部が画素の数だけ設けられている。高輝度、高精細、高速応答性、高コントラスト、高い色再現性など画質に優れているのが特徴とされていた。
2004年にキヤノンと東芝がSEDの開発、生産を表明。SEDの基礎技術を持つキヤノンと、テレビセットの開発ノウハウを持つ東芝とが合弁会社、SED株式会社を設立してパネルを製造し、両社がそのパネルを使った商品を販売する計画だった。
キヤノンは映像ディスプレイが同社のイメージング事業に不可欠と判断し、東芝も次世代映像機器戦略の主軸にSEDを据えていた。当初両社は、2010年段階のSEDの生産数量を年間300万台、シェアを20〜30%と見込んでいた。SEDの試作機はCEATECなど各種展示会にも出展され、多くのAV評論家やAVファンが、その高い画質を称賛した。
当初SEDは、2005年8月に50インチ級パネルの生産を少量ロットで開始し、2005年度中に製品を発売する計画だった。2005年中はキヤノン、東芝両社とも開発や量産準備が順調に進んでいると説明していたが、その後開発の遅れから、2006年中への販売開始へと計画を変更。さらに2006年2月に両社は、SED搭載テレビの発売を2007年第4四半期に延期すると発表し、さらにスケジュールを遅らせた。ここに至って開発の遅れが誰の目にも明らかになったが、同年5月、キヤノン社長に就任した内田恒二氏は「我々にとってディスプレイは非常に重要。SED事業はぜひとも必要だ」と開発を続行する考えを強調していた。
その後、米ナノ・プロプライアタリー社がキヤノンに対し、特許ライセンス契約に関する訴訟を提起。これを背景にして東芝はSEDパネルの開発から手を引き、キヤノンがSED(株)の全株を買い取り、2007年1月に完全子会社化した。
その後訴訟は長期化。また低コストの量産化技術の開発が遅れたこともあり、2007年5月にキヤノンと東芝は「SEDテレビの発売を当面の間見送る」と発表。その後SEDの開発に関するニュースは少なくなったが、2007年12月にキヤノンの内田社長は「現在控訴審中であり、技術開発に邁進している。決してあきらめたわけではない。SEDの発売を中止するということはまったくない」と断言していた。
だがその後も量産化技術の開発は思うように進まず、一方で液晶テレビやプラズマテレビの画質向上、コスト低減が急速に進んだ。
2008年9月、キヤノンは米ナノ社との訴訟に勝訴したが、特許問題が片付いても「事業化を行う予定だが、時期などは未定」と述べるにとどまった。その後はほとんど開発の進捗状況に関するアナウンスが無く、ついに本日、正式にSEDテレビの開発中止が明らかになった恰好だ。
以下、当サイトのSED関連ニュースの中から、主なものを時系列で紹介する。
【2004年】
・キヤノン・東芝、05年から“究極の薄型ディスプレイ”「SED」を生産開始
・キヤノン・東芝、「SED」試作機をデモ PDP、液晶との比較展示も
・≪CEATEC 2004レポート≫注目度No.1。次世代ディスプレイ「SED」のブースは黒山の人だかり
【2005年】
・東芝、SEDを含むフラットパネルディスプレイの「商品戦略は順調に進展」
・SED開発者に聞く“21世紀の本物の高画質”〜改良版パネルは暗コントラスト100,000対1
・東芝、SEDパネルの量産拠点の候補地を決定
・<IFA2005 レポート:SED速報>東芝がSEDの特別招待試写を実施〜商品化は順調に進行中
・[CEATEC2005:SED] SED試作機がブラウン管TVとの比較視聴に挑んだ
【2006年】
・<CES 2006 レポート>東芝ブースはSEDデモに黒山の人だかり 動画対応の新gigabeatも登場
・SEDテレビの発売が2007年第4四半期に延期 − 年内発売は無し
・「SEDの巻き返しは可能」− キヤノンのトップ交代が正式決定
・<山之内正の IFAレポート(2)>SEDのデモを体験。55型フルHDパネルに期待が膨らむ
・<CEATEC2006:SED インタヴュー> イス取りゲームではなく新しいイスを作るのがSED
【2007年】
・キヤノン、 SED株式会社の全株を買い取り完全子会社化
・キヤノンと米ナノ社のSED 特許訴訟 公判審理が終了
・キヤノン、 SED関連訴訟で米ナノ社に控訴
・キヤノンと東芝、SEDテレビの発売を「当面の間」見送り
・「3社で世界で勝つ」 − 松下・キヤノン・日立の各社長がパネル事業提携で会見
【2008年】
・キヤノン、 SED技術の米訴訟で勝訴 − 事業化は継続、時期は未定
キヤノンは今後、SEDを教育用や放送局用ディスプレイなど業務用途で活用することを目指し、一部で開発を続けていく。子会社のSED(株)も存続させる。
SED(Surface-conduction Electron-emitter Display)はキヤノンが1986年から研究を開始し、1999年から東芝と共同で実用化に向けて開発を行った。
ブラウン管と同様、電子を蛍光体に衝突させて発光する自発光型で、ブラウン管の電子銃に相当する電子放出部が画素の数だけ設けられている。高輝度、高精細、高速応答性、高コントラスト、高い色再現性など画質に優れているのが特徴とされていた。
2004年にキヤノンと東芝がSEDの開発、生産を表明。SEDの基礎技術を持つキヤノンと、テレビセットの開発ノウハウを持つ東芝とが合弁会社、SED株式会社を設立してパネルを製造し、両社がそのパネルを使った商品を販売する計画だった。
キヤノンは映像ディスプレイが同社のイメージング事業に不可欠と判断し、東芝も次世代映像機器戦略の主軸にSEDを据えていた。当初両社は、2010年段階のSEDの生産数量を年間300万台、シェアを20〜30%と見込んでいた。SEDの試作機はCEATECなど各種展示会にも出展され、多くのAV評論家やAVファンが、その高い画質を称賛した。
当初SEDは、2005年8月に50インチ級パネルの生産を少量ロットで開始し、2005年度中に製品を発売する計画だった。2005年中はキヤノン、東芝両社とも開発や量産準備が順調に進んでいると説明していたが、その後開発の遅れから、2006年中への販売開始へと計画を変更。さらに2006年2月に両社は、SED搭載テレビの発売を2007年第4四半期に延期すると発表し、さらにスケジュールを遅らせた。ここに至って開発の遅れが誰の目にも明らかになったが、同年5月、キヤノン社長に就任した内田恒二氏は「我々にとってディスプレイは非常に重要。SED事業はぜひとも必要だ」と開発を続行する考えを強調していた。
その後、米ナノ・プロプライアタリー社がキヤノンに対し、特許ライセンス契約に関する訴訟を提起。これを背景にして東芝はSEDパネルの開発から手を引き、キヤノンがSED(株)の全株を買い取り、2007年1月に完全子会社化した。
その後訴訟は長期化。また低コストの量産化技術の開発が遅れたこともあり、2007年5月にキヤノンと東芝は「SEDテレビの発売を当面の間見送る」と発表。その後SEDの開発に関するニュースは少なくなったが、2007年12月にキヤノンの内田社長は「現在控訴審中であり、技術開発に邁進している。決してあきらめたわけではない。SEDの発売を中止するということはまったくない」と断言していた。
だがその後も量産化技術の開発は思うように進まず、一方で液晶テレビやプラズマテレビの画質向上、コスト低減が急速に進んだ。
2008年9月、キヤノンは米ナノ社との訴訟に勝訴したが、特許問題が片付いても「事業化を行う予定だが、時期などは未定」と述べるにとどまった。その後はほとんど開発の進捗状況に関するアナウンスが無く、ついに本日、正式にSEDテレビの開発中止が明らかになった恰好だ。
以下、当サイトのSED関連ニュースの中から、主なものを時系列で紹介する。
【2004年】
・キヤノン・東芝、05年から“究極の薄型ディスプレイ”「SED」を生産開始
・キヤノン・東芝、「SED」試作機をデモ PDP、液晶との比較展示も
・≪CEATEC 2004レポート≫注目度No.1。次世代ディスプレイ「SED」のブースは黒山の人だかり
【2005年】
・東芝、SEDを含むフラットパネルディスプレイの「商品戦略は順調に進展」
・SED開発者に聞く“21世紀の本物の高画質”〜改良版パネルは暗コントラスト100,000対1
・東芝、SEDパネルの量産拠点の候補地を決定
・<IFA2005 レポート:SED速報>東芝がSEDの特別招待試写を実施〜商品化は順調に進行中
・[CEATEC2005:SED] SED試作機がブラウン管TVとの比較視聴に挑んだ
【2006年】
・<CES 2006 レポート>東芝ブースはSEDデモに黒山の人だかり 動画対応の新gigabeatも登場
・SEDテレビの発売が2007年第4四半期に延期 − 年内発売は無し
・「SEDの巻き返しは可能」− キヤノンのトップ交代が正式決定
・<山之内正の IFAレポート(2)>SEDのデモを体験。55型フルHDパネルに期待が膨らむ
・<CEATEC2006:SED インタヴュー> イス取りゲームではなく新しいイスを作るのがSED
【2007年】
・キヤノン、 SED株式会社の全株を買い取り完全子会社化
・キヤノンと米ナノ社のSED 特許訴訟 公判審理が終了
・キヤノン、 SED関連訴訟で米ナノ社に控訴
・キヤノンと東芝、SEDテレビの発売を「当面の間」見送り
・「3社で世界で勝つ」 − 松下・キヤノン・日立の各社長がパネル事業提携で会見
【2008年】
・キヤノン、 SED技術の米訴訟で勝訴 − 事業化は継続、時期は未定