グローバルトップメーカーを目指す
東芝・大角氏が語る「テレビとPCの連携」戦略 − 11年度中の「レグザサーバー」商品化を宣言
東芝は20日、同社の液晶テレビ“REGZA”の新モデル、およびタブレットや裸眼3D表示に対応したノートPCなど、新製品の発表会を開催した。発表会には(株)東芝の大角正明氏が出席し、本年度の同社の商品戦略について説明した。
東芝は本年の4月1日付けで、同社の映像事業とPC事業を統合。これまでの、液晶テレビやレコーダーなど映像事業を展開する「ビジュアルプロダクツ社」と、パソコン事業などを管轄する「デジタルプロダクツ&ネットワーク社」を統合し、新たに「デジタルプロダクツ&サービス社」を設立した。発表会では、新設されたデジタルプロダクツ&サービス社 社長に就任した大角氏から、テレビやBDレコーダーなど映像関連製品、ノートPCやタブレット端末などPC関連製品と、これら事業に関わる新たな取り組みが紹介された。
事業戦略に関する説明に先立って、大角氏は東日本大震災における被災者に向けて哀悼の言葉を述べた。大角氏は「東芝はこれまで震災発生後から、全力を尽くして復興支援にお手伝いをさせていただいている。被災地へテレビやパソコンを合わせて1,000台以上提供させていただいた。また一部被災した地域では、津波に襲われた建物から住民基本台帳などのサーバーが見つかり、当社グループ会社がHDDの中から貴重なデータを復旧することができた。引き続き微力ではあるが、被災地の復旧のため全力で支援を行いたい」と同社の復興支援活動における取り組みを説明した。
地域に密着したものづくりにより、新興国市場の成長を掴んだ
続いて大角氏は、現在のテレビとノートPC市場を取り巻く市場環境について、予測を交えて説明した。
テレビ市場は先進国でニーズの多様化が起こり、欧米市場においては継続的な成長が見込まれるとの予測を示した。新興国については今後大きな成長が見込める拡大市場と位置づけ、先進国市場で2%、新興国市場では23%の成長率を見込んでいる。さらにテレビ全体の売上げについても約2億3,000万台に達すると同社は予測している。
ノートPC市場についても、先進国・新興国ともに市場の拡大が予測されるが、こちらも先進国の11%に対して、新興国では21%の大幅な伸びを記録すると予測した。台数ベースでの成長予測は2013年に約3億1,100万台を見込む。ノートPC市場については「いかにして新興国を急速に取り込んで行くかが最重要の課題」と大角氏は位置づける。
タブレット端末の需要予測については、ノートPCの市場予測と別にデータを紹介した。タブレット端末の市場予測については、今後グローバルに拡張が期待できるものとし、グローバルの市場規模は2013年に約1億台に到達すると見ている。またタブレット端末の市場が広がることで、端末単体だけでなく、テレビやPCとの融合商品分野が成長するとの予測も示した。大角氏は「東芝として、今後どのようにタブレット市場に魅力的な商品やサービスを投入していくか、戦略を練っていく必要がある」と述べる。
タブレット市場の成長にともなう、テレビやPCとの融合商品・サービスに注力
大角氏は続いて、東芝の2010年における実績を振り返った。テレビはグローバルの販売台数が1,400万台を達成し、「レグザ」ブランドの国内認知度も2009年11月調査時の77%から、2010年11月時調査で89%にまで上昇したとアピール。またPCについては、グローバル販売台数が1,900万台に到達。ノートPCの累計販売は1億台を達成し、BCNやGfKなどの調査において、2010年に国内のBtoC市場で2年連続シェアNo.1を獲得したことを報告した。
同社が注力する、新興国市場での事業拡大への取り組みについては、中国市場向けにテレビの販売拠点となる「東芝ビジュアルプロダクツ(中国)社」を2010年9月に設立。また今年に入ってから、エジプトに液層テレビ製造合弁会社「東芝エルアラビビジュアルプロダクツ社」を1月に立ち上げ、この4月にはフィリピン市場向けのテレビ・PC販売拠点「東芝フィリピン社」を設立したことも紹介した。
テレビ製品については、停電時にAC電源からバッテリー電源に切り替えて視聴できる「Power TV」シリーズを投入(関連ニュース)。アジア市場では同社ブランドのシェア拡大の大きな牽引力になっていると大角氏は語る。またPC製品についても防塵機能を搭載したノートPCが好評を博しているという。
アジア市場で東芝のテレビやノートPCの販売台数、シェアが大きく伸びている背景について、大角氏は「地域に密着したマーケティング、商品企画により、個別のニーズにマッチした商品力を培ってきたことが大きい」と説明する。
2013年までにグローバルの液晶テレビ/ノートPC合計販売台数6,000万台、シェア10%を目指す
これら国内外における2010年の成果を踏まえ、東芝では同社のテレビとPC製品の成長をさらに加速させていくため、新たに「デジタルプロダクト&サービス社」を立ち上げたと大角氏は改めて説明。「これまでの、どちらかといえばハードウェア至上主義だったものづくりの視点を、今後はサービスやアプリケーションの展開にも注力しながら、相乗効果をつくり出していきたい」とし、今後の商品展開では、テレビ/PC/タブレットそれぞれを、クオリティの高いサービスやアプリケーションで結びつけていくという基本方針を示した。
今後のデジタルプロダクト&サービス社の事業展開について大角氏は、「これまでの製品別の事業編成から、地域ごとにデジタル機器を横断的に扱う体制へ変更することで、各地域の市場ニーズに応じて商品開発やマーケティングを行う体制を整えていく」とし、商品別の事業運営から、地域別の事業運営に大きく舵を切ったことを説明した。
2011年度の成長目標については、2010年度にグローバルで、東芝ブランドの液晶テレビとノートPCが合計販売台数におけるシェア4位を獲得したことを受け、今後はスケールメリットを活かした生産・調達によるコスト力の向上、開発リソースの最大活用に基づいた事業運営を図っていく。大角氏は先進国でのシェア・販売規模の拡大に加え、新興国向けの戦略商品を積極的に投入していくことで、2013年度までに、グローバルの液晶テレビ、ノートPCの合計販売台数を6,000万台、シェア10%に伸ばしていく目標を明らかにした。
国内市場の商品戦略 − 2011年度内に「レグザサーバー」を商品化
国内市場の商品戦略については、レグザとダイナブックで培った高い技術力を融合・拡大させ、市場におけるプレゼンスを高めていく。本日掲げられたメインテーマは「ひろがるレグザワールド」。大角氏は、液晶関連の製品については「4インチのスマートフォンから、55インチの大型テレビまで“レグザ”ブランドで統一し、それぞれの強化を図る」と説明。スマートフォンやタブレットからテレビをコントロールして、手元でコンテンツを選んで、レグザで見たりネットコミュニティにつながるといった、テレビを中心とした新たなライフスタイルを訴求していく。
また2011年度内に「レグザサーバー」を商品化する方針も明らかにされた。レグザサーバーに貯めたコンテンツは、テレビやタブレットを使ってリビングで楽しんだり、スマートフォンで持ち出して外出先で楽しむといったことが可能になると説明。これにより、大量のコンテンツをスマートに楽しむライフスタイルを提案していく。
また大角氏は「グラスレス3D」についても言及した。本日の発表会では“グラスレス3DノートPC”の新ラインナップ「dynabook QOSMIO T851/D8CR」が7月に発売されることも表明した。また、年初に開催されたCES会場で同社が発表した通り(関連ニュース)、2011年度に40V型以上の「大画面グラスレス3Dテレビ」を商品化する計画に変更がないことにも言及した。大角氏は「グラスレス3Dのトップシェアは東芝が一気に取っていきたい」と、強い意気込みを示した。
その他、サービス・アプリケーションに関連する取り組みについては、電子書籍ストア「ブックプレイス」を凸版グループの(株)BookLiveとの協業により、本日からサービスインした。本サービスの特徴となる「音声読み上げ機能」は、東芝独自の音声合成エンジンにより実現したものという。
「レグザAppsコネクト」については、テレビで楽しめるアプリの更なる拡大を宣言。レグザフォン、および本日発表されたレグザタブレットには、対応アプリがプリインストールされているメリットを訴求した。
3D映像コンテンツの普及に対する取り組みについては、米RealD社、および英国ロイヤルオペラハウスによる3Dオペラ「カルメン3D」に協賛することを説明。さらに、今後は独自にコンテンツ配信サービスを検討していくことも発表した。
同社はまた、国内市場向けに内蔵バッテリーで3時間のテレビ視聴が可能な「ピークシフト機能」を搭載する液晶テレビ「レグザ」の19V型モデルを7月中に商品化することも発表した。同社ではまた、電力使用のピーク時間帯に、自動的にAC電源からバッテリー駆動に駆動電源を切り替えられる「ピークシフトコントロール」を搭載したノートPCも商品化している。こうした商品開発に今後、より力を入れていく考えも大角氏は明らかにした。
「ひろがるレグザワールド」を支えるパートナー
発表会には同社のサービス・アプリケーションに関連する取り組みについて、パートナーシップを組むRealD社、(株)BookLiveからそれぞれゲストスピーカーが招かれた。
3Dオペラ「カルメン3D」におけるパートナーとなる、RealD Inc.日本・アジア代表の長谷亙二氏は、「当社では今からおよそ3年前より、コンシューマー事業の拡大に着手し、その頃から東芝とパートナーシップを深めてきた。今回、英国ロイヤルオペラハウスともパートナーを組み、世界初の3Dオペラ「カルメン3D」を制作した。今後も上質な3D映像と音声を多くの方々に届けるべく、東芝と一緒に芸術性の高いコンテンツをつくっていきたい」と抱負を述べた。また今後は、東芝と協同でIPTVのコンテンツへの進出も検討していることや、コンテンツ・ハードウェアの両面における技術協力を強めながら、幅広い製品分野で3D文化の普及に努める考えを示した。
BookLiveを代表して、凸版印刷(株)常務取締役、情報コミュニケーション事業本部長の大湊満氏もスピーチをおこなった。大湊氏は「当社はこれまで印刷の技術を通して、情報加工技術を育て、出版文化を発展させてきた。電子出版の成長の時代を迎えても、読書の新しいスタイルを生み出していくという点では、紙の文化で築いてきた当社のノウハウは活かされるだろう」とした。同社ではグループ会社のビットウェイで行ってきたサービスを進化発展させ、「ブックプレイス」ではコミック中心のコンテツ配信から、書籍・雑誌、その他のサービスも含めて幅広く展開していくという。大湊氏は「消費者に、本を読む楽しさや活字の魅力を、電子書籍配信をプラットフォームにして伝えていきたい。東芝独自の音声読み上げ技術をビューワーに搭載したことで、人間の文化活動に貢献できる新たなサービスが展開できると期待している」と述べた。
レグザ/ダイナブックの新CMを披露
発表会の最後には、福山雅治氏を起用したレグザの新CM、山下智久氏を起用したダイナブックの新CMの映像が披露された。どちらの商品も、これまで好評を博してきたイメージキャラクターを継続して起用することで、さらなるブランド認知拡大と、積極的な商品の魅力訴求を図っていく。また「みんなでできること。東芝にできること。」をキーワードに、節電を呼びかける企業CM映像も紹介された。大角氏は「感動を届ける製品を次々と投入しながら、同時に電力需要に配慮した取り組みも積極的に進めていきたい」と述べ、日本の経済復興に向けた取り組みに力を注いでいく考えを示した。
質疑応答
最後に本日の発表会会場で行われた質疑応答の内容を紹介しよう。
ー 「レグザワールド」について、他社の機器連携と比較した際の“東芝ならでは”の魅力はどこにあるのか。
大角氏:当社がPCの領域で培ってきた総合的な調達力、ODMを使ったコスト力は、今後さらに成長を加速させられると考えている。ODMのマネジメントノウハウは他社にない強みだ。商品面では、設計の部分で「少数精鋭」であるメリットが考えられる。これはコスト構造で、固定費の部分にメリットがもたらされると考えている。どう効率的に、素速く消費ニーズを捕まえられるかが大事。キーワードは「軽さとスピード」。グローバルに培ってきたPCのノウハウ、地域に密着して確立してきたTVのサービスを融合させ、東芝ならではの新しいサービスを提案したい。
ー 新しいカンパニー制度について。なぜ今の時期に統合をしなければならなかったのか。外部環境の影響もあったのか。
大角氏:グローバル市場で勝利するために、大きな意味でのB to C事業自体のグローバルな拠点再編成を含めて、今行うべき改革であると判断した。
ー グラスレス3Dテレビについて、20V型と12V型の販売状況はどうか。2011年度の大型化については、どのサイズで検討しているのか。
大角氏:20V型は少し高値なので、当初はユーザーが安価な12V型に流れると考えていたのだが、結果的には20V型の方が伸びた。ユーザーがグラスレス3Dに期待しているポイントは「高解像」であり、それゆえ20V型の人気が高かったのだと認識している。当初は月産目標として1,000台を狙ったが、残念ながらこれには到達していない。今は半分ぐらいだと思う。しかしながら、発売以後もコンスタントに売れ続けていることから、それなりに市場で評価されたものと受け止めている。グラスレス3Dテレビの大型化については、40〜50V型以上が適当と考えている。できれば年内、秋のタイミングで早めに市場投入したい。
ー 今回「ピークシフト機能」対応機の発売も発表されたが、国内で発売される理由については、やはり消費者の意識の高まりが感じられたのか。販売ボリュームはどれくらいをみているか。
大角氏:7月に19V型を発売する。できればボリュームゾーンである32V型まで拡大したいと考えている。商品投入のきっかけは計画停電が実施された時期に、3時間ほどの計画停電の時間内にも、情報端末としてのテレビが不自由なく使えるようにと考え、バッテリーの仕様などを検討していった。販売のボリュームについては現時点で具体的に言えないが、かなり皆様の関心が高いと感じている。そういう意味では、需要の見直しを、上振れの方向で図っていこうと考えている。
ー コンテンツを直接持たない東芝としては、今後ビジネス連携も含め、どのようにコンテンツビジネスで独自性を打ち出していくのか。
大角氏:どういうコンテンツに注力し、継続的にビジネスとして運営していくかは現在検討しているところ。凸版印刷との協業により電子書籍サービスを始める運びとなったが、本サービスでは東芝独自の文字情報の読み上げるサービスが採用され、いわゆる東芝らしい工夫ができたと考えている。コンテンツそのものについては、東芝としてはまだ持ち得ないものがあるが、そのコンテンツをよりよく見せるため、より楽しんでもらうための工夫については、東芝ならではのものが提案できると考えている。
ー 新興国市場向けの部品調達や製造については、グローバルで統一していくのか。あるいは国ごとに最適化していくのか。
大角氏:各地域ごとに制度があるため、一概に言いにくい。部品輸入関税が高い地域については、現地における製造をきちんとやっていく必要があると考えている。自前で行うか、EMSも活用するかについては、その都度ベストを検討していきたい。基本的な部品調達ソースはグローバルなサイクルの中で運営していく。
ー 日本の市場について、今年はどのように予測を立てているか。
大角氏:テレビについては昨年度非常に大きな伸びを記録したため、今年はその半減に近い1,300万台のレベルになると見ている。時期的には7月の地アナ終了まではほぼ前年並みで、後半は落ちてしまうだろう。通年で見るとほぼ半減ぐらいかと思う。PCはエコポイントの影響もなく、安定的な成長が期待できる。BDレコーダーは、アナログレコーダーの買い換え需要が、これから伸びると期待している。
ー 「CELLレグザ」シリーズは今後どうなるのか。
大角氏:今回発表したZG2のシリーズは6ch同時のタイムマシン録画機能を持っている。CELLからCEVOにエンジンを変えたことで、確かにパワーダウンはあるが、機能はCELLレグザを踏襲できている。また売価的にも安くなるメリットがあり、CELLレグザの魅力を多くの方々に体験できる環境が実現できるといえる。CELLレグザが築いてきたものを、CELLというプラットフォームではないにせよ、今後の商品企画につなげて、これを超えた製品を実現すべく努力していきたい。
ー ZP2シリーズがパッシブ型の3D表示に対応したモデルとなったが、アクティブシャッターとグラスレスとで、3Dの対応モデルがわかりにくくなっているのでは。
大角氏:東芝としては、目指すべき最終ゴールはグラスレス3Dであると考えている。昨年末に対応製品を市場投入した際から、この考え方は変わっていない。
ただ、ゴールまでたどり着く過程で、技術的・商品的課題もあり、例えばグラスレス3Dで見る時の解像度感をどう保つかというハードルが、あいだにある。同時にコスト面も壁になる。これを超えていくための時間的な壁を考えると、一般のテレビへグラスレス3Dの普及が完了するまでにまだ2〜3年はかかるかもしれない。
メガネ付き3Dのテレビは、コンテンツの多様化も含めて3Dが加速していく中で、柔軟性を持っている。今回はパッシブのテレビも商品化したが、パーソナルユースとして、例えばゲームを楽しむのにもパッシブが向いていると思う。用途や時代ニーズに最もマッチした製品を提案していきたい。
東芝ではテレビのパネルを自社で持っていないので、その分、いま世の中にある最も良いパネルを選び、使い込こなしながら良い製品に仕上げていくため、全力で取り組んでいきたい。
東芝は本年の4月1日付けで、同社の映像事業とPC事業を統合。これまでの、液晶テレビやレコーダーなど映像事業を展開する「ビジュアルプロダクツ社」と、パソコン事業などを管轄する「デジタルプロダクツ&ネットワーク社」を統合し、新たに「デジタルプロダクツ&サービス社」を設立した。発表会では、新設されたデジタルプロダクツ&サービス社 社長に就任した大角氏から、テレビやBDレコーダーなど映像関連製品、ノートPCやタブレット端末などPC関連製品と、これら事業に関わる新たな取り組みが紹介された。
事業戦略に関する説明に先立って、大角氏は東日本大震災における被災者に向けて哀悼の言葉を述べた。大角氏は「東芝はこれまで震災発生後から、全力を尽くして復興支援にお手伝いをさせていただいている。被災地へテレビやパソコンを合わせて1,000台以上提供させていただいた。また一部被災した地域では、津波に襲われた建物から住民基本台帳などのサーバーが見つかり、当社グループ会社がHDDの中から貴重なデータを復旧することができた。引き続き微力ではあるが、被災地の復旧のため全力で支援を行いたい」と同社の復興支援活動における取り組みを説明した。
地域に密着したものづくりにより、新興国市場の成長を掴んだ
続いて大角氏は、現在のテレビとノートPC市場を取り巻く市場環境について、予測を交えて説明した。
テレビ市場は先進国でニーズの多様化が起こり、欧米市場においては継続的な成長が見込まれるとの予測を示した。新興国については今後大きな成長が見込める拡大市場と位置づけ、先進国市場で2%、新興国市場では23%の成長率を見込んでいる。さらにテレビ全体の売上げについても約2億3,000万台に達すると同社は予測している。
ノートPC市場についても、先進国・新興国ともに市場の拡大が予測されるが、こちらも先進国の11%に対して、新興国では21%の大幅な伸びを記録すると予測した。台数ベースでの成長予測は2013年に約3億1,100万台を見込む。ノートPC市場については「いかにして新興国を急速に取り込んで行くかが最重要の課題」と大角氏は位置づける。
タブレット端末の需要予測については、ノートPCの市場予測と別にデータを紹介した。タブレット端末の市場予測については、今後グローバルに拡張が期待できるものとし、グローバルの市場規模は2013年に約1億台に到達すると見ている。またタブレット端末の市場が広がることで、端末単体だけでなく、テレビやPCとの融合商品分野が成長するとの予測も示した。大角氏は「東芝として、今後どのようにタブレット市場に魅力的な商品やサービスを投入していくか、戦略を練っていく必要がある」と述べる。
タブレット市場の成長にともなう、テレビやPCとの融合商品・サービスに注力
大角氏は続いて、東芝の2010年における実績を振り返った。テレビはグローバルの販売台数が1,400万台を達成し、「レグザ」ブランドの国内認知度も2009年11月調査時の77%から、2010年11月時調査で89%にまで上昇したとアピール。またPCについては、グローバル販売台数が1,900万台に到達。ノートPCの累計販売は1億台を達成し、BCNやGfKなどの調査において、2010年に国内のBtoC市場で2年連続シェアNo.1を獲得したことを報告した。
同社が注力する、新興国市場での事業拡大への取り組みについては、中国市場向けにテレビの販売拠点となる「東芝ビジュアルプロダクツ(中国)社」を2010年9月に設立。また今年に入ってから、エジプトに液層テレビ製造合弁会社「東芝エルアラビビジュアルプロダクツ社」を1月に立ち上げ、この4月にはフィリピン市場向けのテレビ・PC販売拠点「東芝フィリピン社」を設立したことも紹介した。
テレビ製品については、停電時にAC電源からバッテリー電源に切り替えて視聴できる「Power TV」シリーズを投入(関連ニュース)。アジア市場では同社ブランドのシェア拡大の大きな牽引力になっていると大角氏は語る。またPC製品についても防塵機能を搭載したノートPCが好評を博しているという。
アジア市場で東芝のテレビやノートPCの販売台数、シェアが大きく伸びている背景について、大角氏は「地域に密着したマーケティング、商品企画により、個別のニーズにマッチした商品力を培ってきたことが大きい」と説明する。
2013年までにグローバルの液晶テレビ/ノートPC合計販売台数6,000万台、シェア10%を目指す
これら国内外における2010年の成果を踏まえ、東芝では同社のテレビとPC製品の成長をさらに加速させていくため、新たに「デジタルプロダクト&サービス社」を立ち上げたと大角氏は改めて説明。「これまでの、どちらかといえばハードウェア至上主義だったものづくりの視点を、今後はサービスやアプリケーションの展開にも注力しながら、相乗効果をつくり出していきたい」とし、今後の商品展開では、テレビ/PC/タブレットそれぞれを、クオリティの高いサービスやアプリケーションで結びつけていくという基本方針を示した。
今後のデジタルプロダクト&サービス社の事業展開について大角氏は、「これまでの製品別の事業編成から、地域ごとにデジタル機器を横断的に扱う体制へ変更することで、各地域の市場ニーズに応じて商品開発やマーケティングを行う体制を整えていく」とし、商品別の事業運営から、地域別の事業運営に大きく舵を切ったことを説明した。
2011年度の成長目標については、2010年度にグローバルで、東芝ブランドの液晶テレビとノートPCが合計販売台数におけるシェア4位を獲得したことを受け、今後はスケールメリットを活かした生産・調達によるコスト力の向上、開発リソースの最大活用に基づいた事業運営を図っていく。大角氏は先進国でのシェア・販売規模の拡大に加え、新興国向けの戦略商品を積極的に投入していくことで、2013年度までに、グローバルの液晶テレビ、ノートPCの合計販売台数を6,000万台、シェア10%に伸ばしていく目標を明らかにした。
国内市場の商品戦略 − 2011年度内に「レグザサーバー」を商品化
国内市場の商品戦略については、レグザとダイナブックで培った高い技術力を融合・拡大させ、市場におけるプレゼンスを高めていく。本日掲げられたメインテーマは「ひろがるレグザワールド」。大角氏は、液晶関連の製品については「4インチのスマートフォンから、55インチの大型テレビまで“レグザ”ブランドで統一し、それぞれの強化を図る」と説明。スマートフォンやタブレットからテレビをコントロールして、手元でコンテンツを選んで、レグザで見たりネットコミュニティにつながるといった、テレビを中心とした新たなライフスタイルを訴求していく。
また2011年度内に「レグザサーバー」を商品化する方針も明らかにされた。レグザサーバーに貯めたコンテンツは、テレビやタブレットを使ってリビングで楽しんだり、スマートフォンで持ち出して外出先で楽しむといったことが可能になると説明。これにより、大量のコンテンツをスマートに楽しむライフスタイルを提案していく。
また大角氏は「グラスレス3D」についても言及した。本日の発表会では“グラスレス3DノートPC”の新ラインナップ「dynabook QOSMIO T851/D8CR」が7月に発売されることも表明した。また、年初に開催されたCES会場で同社が発表した通り(関連ニュース)、2011年度に40V型以上の「大画面グラスレス3Dテレビ」を商品化する計画に変更がないことにも言及した。大角氏は「グラスレス3Dのトップシェアは東芝が一気に取っていきたい」と、強い意気込みを示した。
その他、サービス・アプリケーションに関連する取り組みについては、電子書籍ストア「ブックプレイス」を凸版グループの(株)BookLiveとの協業により、本日からサービスインした。本サービスの特徴となる「音声読み上げ機能」は、東芝独自の音声合成エンジンにより実現したものという。
「レグザAppsコネクト」については、テレビで楽しめるアプリの更なる拡大を宣言。レグザフォン、および本日発表されたレグザタブレットには、対応アプリがプリインストールされているメリットを訴求した。
3D映像コンテンツの普及に対する取り組みについては、米RealD社、および英国ロイヤルオペラハウスによる3Dオペラ「カルメン3D」に協賛することを説明。さらに、今後は独自にコンテンツ配信サービスを検討していくことも発表した。
同社はまた、国内市場向けに内蔵バッテリーで3時間のテレビ視聴が可能な「ピークシフト機能」を搭載する液晶テレビ「レグザ」の19V型モデルを7月中に商品化することも発表した。同社ではまた、電力使用のピーク時間帯に、自動的にAC電源からバッテリー駆動に駆動電源を切り替えられる「ピークシフトコントロール」を搭載したノートPCも商品化している。こうした商品開発に今後、より力を入れていく考えも大角氏は明らかにした。
「ひろがるレグザワールド」を支えるパートナー
発表会には同社のサービス・アプリケーションに関連する取り組みについて、パートナーシップを組むRealD社、(株)BookLiveからそれぞれゲストスピーカーが招かれた。
レグザ/ダイナブックの新CMを披露
質疑応答
最後に本日の発表会会場で行われた質疑応答の内容を紹介しよう。
ー 「レグザワールド」について、他社の機器連携と比較した際の“東芝ならでは”の魅力はどこにあるのか。
大角氏:当社がPCの領域で培ってきた総合的な調達力、ODMを使ったコスト力は、今後さらに成長を加速させられると考えている。ODMのマネジメントノウハウは他社にない強みだ。商品面では、設計の部分で「少数精鋭」であるメリットが考えられる。これはコスト構造で、固定費の部分にメリットがもたらされると考えている。どう効率的に、素速く消費ニーズを捕まえられるかが大事。キーワードは「軽さとスピード」。グローバルに培ってきたPCのノウハウ、地域に密着して確立してきたTVのサービスを融合させ、東芝ならではの新しいサービスを提案したい。
ー 新しいカンパニー制度について。なぜ今の時期に統合をしなければならなかったのか。外部環境の影響もあったのか。
大角氏:グローバル市場で勝利するために、大きな意味でのB to C事業自体のグローバルな拠点再編成を含めて、今行うべき改革であると判断した。
ー グラスレス3Dテレビについて、20V型と12V型の販売状況はどうか。2011年度の大型化については、どのサイズで検討しているのか。
大角氏:20V型は少し高値なので、当初はユーザーが安価な12V型に流れると考えていたのだが、結果的には20V型の方が伸びた。ユーザーがグラスレス3Dに期待しているポイントは「高解像」であり、それゆえ20V型の人気が高かったのだと認識している。当初は月産目標として1,000台を狙ったが、残念ながらこれには到達していない。今は半分ぐらいだと思う。しかしながら、発売以後もコンスタントに売れ続けていることから、それなりに市場で評価されたものと受け止めている。グラスレス3Dテレビの大型化については、40〜50V型以上が適当と考えている。できれば年内、秋のタイミングで早めに市場投入したい。
ー 今回「ピークシフト機能」対応機の発売も発表されたが、国内で発売される理由については、やはり消費者の意識の高まりが感じられたのか。販売ボリュームはどれくらいをみているか。
大角氏:7月に19V型を発売する。できればボリュームゾーンである32V型まで拡大したいと考えている。商品投入のきっかけは計画停電が実施された時期に、3時間ほどの計画停電の時間内にも、情報端末としてのテレビが不自由なく使えるようにと考え、バッテリーの仕様などを検討していった。販売のボリュームについては現時点で具体的に言えないが、かなり皆様の関心が高いと感じている。そういう意味では、需要の見直しを、上振れの方向で図っていこうと考えている。
ー コンテンツを直接持たない東芝としては、今後ビジネス連携も含め、どのようにコンテンツビジネスで独自性を打ち出していくのか。
大角氏:どういうコンテンツに注力し、継続的にビジネスとして運営していくかは現在検討しているところ。凸版印刷との協業により電子書籍サービスを始める運びとなったが、本サービスでは東芝独自の文字情報の読み上げるサービスが採用され、いわゆる東芝らしい工夫ができたと考えている。コンテンツそのものについては、東芝としてはまだ持ち得ないものがあるが、そのコンテンツをよりよく見せるため、より楽しんでもらうための工夫については、東芝ならではのものが提案できると考えている。
ー 新興国市場向けの部品調達や製造については、グローバルで統一していくのか。あるいは国ごとに最適化していくのか。
大角氏:各地域ごとに制度があるため、一概に言いにくい。部品輸入関税が高い地域については、現地における製造をきちんとやっていく必要があると考えている。自前で行うか、EMSも活用するかについては、その都度ベストを検討していきたい。基本的な部品調達ソースはグローバルなサイクルの中で運営していく。
ー 日本の市場について、今年はどのように予測を立てているか。
大角氏:テレビについては昨年度非常に大きな伸びを記録したため、今年はその半減に近い1,300万台のレベルになると見ている。時期的には7月の地アナ終了まではほぼ前年並みで、後半は落ちてしまうだろう。通年で見るとほぼ半減ぐらいかと思う。PCはエコポイントの影響もなく、安定的な成長が期待できる。BDレコーダーは、アナログレコーダーの買い換え需要が、これから伸びると期待している。
ー 「CELLレグザ」シリーズは今後どうなるのか。
大角氏:今回発表したZG2のシリーズは6ch同時のタイムマシン録画機能を持っている。CELLからCEVOにエンジンを変えたことで、確かにパワーダウンはあるが、機能はCELLレグザを踏襲できている。また売価的にも安くなるメリットがあり、CELLレグザの魅力を多くの方々に体験できる環境が実現できるといえる。CELLレグザが築いてきたものを、CELLというプラットフォームではないにせよ、今後の商品企画につなげて、これを超えた製品を実現すべく努力していきたい。
ー ZP2シリーズがパッシブ型の3D表示に対応したモデルとなったが、アクティブシャッターとグラスレスとで、3Dの対応モデルがわかりにくくなっているのでは。
大角氏:東芝としては、目指すべき最終ゴールはグラスレス3Dであると考えている。昨年末に対応製品を市場投入した際から、この考え方は変わっていない。
ただ、ゴールまでたどり着く過程で、技術的・商品的課題もあり、例えばグラスレス3Dで見る時の解像度感をどう保つかというハードルが、あいだにある。同時にコスト面も壁になる。これを超えていくための時間的な壁を考えると、一般のテレビへグラスレス3Dの普及が完了するまでにまだ2〜3年はかかるかもしれない。
メガネ付き3Dのテレビは、コンテンツの多様化も含めて3Dが加速していく中で、柔軟性を持っている。今回はパッシブのテレビも商品化したが、パーソナルユースとして、例えばゲームを楽しむのにもパッシブが向いていると思う。用途や時代ニーズに最もマッチした製品を提案していきたい。
東芝ではテレビのパネルを自社で持っていないので、その分、いま世の中にある最も良いパネルを選び、使い込こなしながら良い製品に仕上げていくため、全力で取り組んでいきたい。