「SHV実用化はかなり詰めの段階」
NHK技研公開が開幕 − スーパーハイビジョンや22.2ch音響関連のデモが充実
また、例年同様に450インチスクリーンと22.2chサラウンドによるスーパーハイビジョンシアターも用意。今年は「スペースシャトル 最後の打ち上げ」と題したコンテンツを上映。2011年5月のエンデバー号と2011年7月のアトランティス号打ち上げの様子をSHVで観ることができる。
静岡大学と共同で新開発した120Hz SHVイメージセンサーも展示。アナログ信号をより高速にデジタル信号に変換する回路や、そのデジタル信号を32並列で出力する回路を新たに開発し、動きの速い被写体もより鮮明に撮影できるようにした。
試作したセンサーは光学サイズが約1.5で、画素数約3300万、階調12ビット。従来のSHV用イメージセンサーより格段に小さく、また、高速な信号処理などを行っているにもかかわらず消費電力が小さいという特徴も持っている。そのため、ノイズも少なく、高画質化にもつながっているという。
単板カラー撮像方式による小型のSHVカメラの研究も進めており、3300万画素カラー撮像素子を用いた小型カメラヘッドも試作。現行の放送用カメラと同等サイズ・重量・形状を実現したことにより、撮影の機動性を大幅に向上させた。
なお、ベイヤー配列のカラーフィルターを用いた単板カラー撮像素子では1画素あたり1色の情報しか取得できない。そのため、残りの2色を推定してフル解像度映像へ変換する必要があるが、この変換を高品質に行えるアップコンバーターを開発したという。
高画質なSHV放送を目指し、AVC/H.264の2倍の圧縮性能を目指して標準化が行われている次世代符号化方式「HEVC」のリアルタイムデコーダーの展示コーナーも展開。三菱電機と共同で進めている研究で、HEVCによって圧縮された符号化信号を、リアルタイムに復元、表示させるソフトウェアデコーダーのデモを行っている。
そのほか、SHV映像をトリミングしてハイビジョン映像を切り出す「スーパーハイビジョン切り出しダウンコンバーター」も展示。マルチタッチ、ピンチ、ドラッグ操作などのタッチパネルに対応したインターフェースを開発し、より直感的な操作ができるようにした。(株)アストロデザインとの共同開発で、今後の実用化に向けて取り組んでいるところだという。
また、SHV放送が開始された際に番組を記録することを想定した、超薄型の光ディスク高密度記録技術のデモも実施。BD(1.2mm)よりかなり薄い0.1mmという薄さに、1層あたり100GBの記録容量を実現した光ディスク。従来の1/2径の光スポットを用いて4倍の高密度記録を可能とするため、トラックピッチを1/2の160nmに狭めている。また、このディスクからデータを読み取るための高精度な光ヘッド位置制御技術も開発した。
■SHV放送の実現に向けて信号の伝送研究も進む
SHVの実現に向けたデータ伝送技術においては、偏波MIMO-超多値OFDM伝送に、UHF帯の2つのチャンネルを用いるバルク伝送を組み合わせることで184Mbpsの伝送容量を実現させ、圧縮符号化されたSHV信号伝送を可能にしたことなどを紹介。