2Q業績は1Q比で回復傾向にあることを強調
【更新】シャープ、2Q業績は純損失3,875億円 − 通期予想も純損失4,500億円に大幅下方修正
シャープ(株)は、2012年度第2四半期の累計連結業績決算を発表した。上半期累計の売上高は1兆1,041億円、営業損失は1,688億円、経常損失は1,972億円。四半期純損失は3,875億円だった。純損失が膨らんだのは、業績悪化に伴い繰延税金資産を取り崩したことが大きな要因。
同社は国内市場について、「円高やデフレ進行、海外市場は欧州金融危機や米国の成長鈍化、新興国は成長減速、と厳しい経済状況が続いている」と説明。こういった状況の中同社は、IGZO液晶やブラックソーラー、プラズマクラスター搭載商品といったシャープならではの製品創出・拡売に取り組むことに加え、大型液晶事業のオフバランス化や主要取引行との借入枠設定締結などを行い、経営改善を図った。しかし商品/デバイスの価格下落や、亀山工場における新規中小型液晶の稼働遅れ、国内・中国での液晶テレビの予想以上の販売減などにより、厳しい状況となった。
AV・通信機器分野では、液晶テレビの売上が前年同期を大きく割り込む結果に。国内市場の低迷や日中関係悪化に伴う中国国内での販売落ち込みが影響したという。また、携帯電話についても、海外メーカーとの競争激化や、一部基幹部品の供給不足が続き、売上高3,382億円(前年同期比41.8%減)という大幅な減収になった。
一方健康・環境機器分野では、洗濯機や空気清浄機などが好調に推移し、売上高は前年同期比4.9%増の1,549億円を記録した。
電子部品分野では、大型液晶パネルの外販が堅調に推移したとのことで、売上高は前年同期比6.4%増の2,679億円となった。
■通期連結業績予想を下方修正 − 純損失4,500億円を見込む
こうした状況を受け、8月2日に発表した2012年度通期連結業績予想を下方修正する。
売上高は2兆4600億円(前回発表時より400億円減)、営業損失は1,550億円(550億円増)、経常損失は2,100億円(700億円増)。そして純損失は前回予想の2,500億円から、4,500億円へと大幅な収益悪化を見込む。
今後はモスアイパネル搭載液晶テレビやIGZO液晶搭載スマホ/タブレット、プラズマクラスター美容家電などの販売を強化。グローバルレベルでの協業も推し進め、収益の早期回復を図る考えだという。また、希望退職の募集や賃金の減額なども行うとのこと。こうした施策を通じて「2012年度上期の連結営業利益黒字化を実現し、業績と信頼の回復に努めていく」としている。
■1Q比で経営改善を強調。今後の成長エンジンは中小型液晶 − 発表会詳報
シャープは本日都内にて説明会を開催。奥田社長らが出席し、業績の説明や今後の経営方針説明を行った。
奥田社長は、第1四半期と比較した場合、第2四半期は業績が改善していることを強調。「2Qは1Q比でほぼ全ての部門で売上高増収を達成。四半期別の売上高も、2011年度前半のレベルにまで回復してきている。右肩下がりだった営業利益も194億円改善した。液晶テレビは、2Qは売上高1,080億円で前期比139%、販売台数も133.8%と伸びている。AV・通信機器分野全体で見ても、売上高は前期比152.4%。営業利益も、202億円の損失から9億円の損失へと改善してきている。また、液晶部門も、中小型液晶は前期比6割、大型液晶は4割の増収となった」と説明する。
「8月に発表した事業構造改革案(関連ニュース)のなかで提示した、大型液晶のオフバランス化は完了。第三者割当はホンハイと継続して話し合っているところだ。在庫の適正化・固定資産の圧縮も進んでいる。ここまでで目標の約7割の改善を終えることができた」と語る奥田氏。今後の経営方針についても、改めて説明を行った。
今後の取り組み方針として「めざすべき企業像の明確化」「主要事業分野における構造改革」「コスト構造改革」「資金の安定化」「実行体制強化」の5点を提示。
まず1項目めは、同社の技術力やデバイス力、販売チャネルなどの強みを活かしつつ、事業本部間の壁を越えた“FUSION(融合)”によって新しい製品を生み出し、ユーザーの生活を豊かにする製品創出を図るという。
2項目めは、AVシステム/ソーラーシステム/ディスプレイデバイス/通信システムの各事業本部の構造改革を推進。グローバルで同じ製品を提供するのではなく、地域に合わせた地産地消型に変革する、収益を見込める事業や地域への絞込みを行うといった試みを行っていくとのこと。ディスプレイデバイスについては今後の成長ドライバーと位置付け、特に中小型液晶について工場を最大限に活用し、収益の拡大を狙うとコメントされた。
コスト構造については、これまで行ってきた施策に加え、人件費削減や人員の効率化、拠点の統廃合などにより更なる固定費削減を行うという。
また5項目めとなる「実行体制強化」については、奥田社長を委員長とした「緊急対策委員会」を設置。経理企画/経営企画/人事などが6つのカテゴリーを担当し、外部の意見も取り入れながら、より確実性の高い実行体制を構築するとのことだ。
なお、新たな事業構造改革テーマについて現在も引き続き検討中だという同社。中期計画も含め、2012年度内に改めて説明の場を設けることが明言された。
奥田社長は「2Qは多額の追加損失を計上し、株主資本を大きく棄損することになった。年間業績の下方修正を行わざるをえなくなったことについても、お詫びしたい。今後は改革への取り組みを加速し、収益体質を改善することが最重要課題。下期の営業利益黒字化、そして2012年度の最終利益黒字化を必達目標とし、全社一丸となって頑張っていく考えだ」と締めくくった。
以下、会場で執り行われた質疑応答の主な内容を掲載する。
Q.今年に入り4度目の下方修正となる。これは、家電業界の激変という外部的要因のほかに、シャープの企業体質・経営体質にも問題があったのではないか。
A.度重なる下方修正によりステークホルダーに多大な心配をお掛けし、信頼も失ってしまったのではないかと思う。今後大切な課題は、業績回復と信頼の回復。緊急対策委員会の設置などで客観的意見を取り入れながら、事業計画達成と収益改善を図って行きたい。下期以降の業績改革をやりとげる、という思いのもと、信頼を取り戻していきたいと考えている。
Q.ホンハイとの協議は現在どのような状況にあるのか。また、結論はいつ頃を目処に出るのか。こういった現状にも会社の意志決定スピードが表れているのではないか。
A.ホンハイとはお互い合意をもちながら協議を進めており、スピード感に特に問題があるということはない。
Q.昨日のパナソニックの会見(関連ニュース)で、津賀社長が『普通の会社ではない』とコメントしていたが、シャープはどんな会社であると考えているか。また、何を今後の収益の中心とするかを改めて教えて欲しい。
A.シャープの持っている技術の価値を確実に収益に結びつけられるような、バイタリティのある企業になれていないと感じている。PDCA(plan-do-check-act)サイクルをきちんと回し、決めたことはやりきり、問題があればすぐ修正できる会社にしていきたい。
今後の収益の中心としては、成長のキーはIGZOなど中小型液晶だと位置付けている。健康・環境分野などは安定して収益は出るものの規模が小さい。IGZO液晶は非常に多くのお客様から高い評価をいただいている。また、高精細でタッチセンサー精度が高く、バッテリーも長く保つという特徴は、今後の流れにフィットしていると思う。こういった利点を持つものをシャープ内で融合させて新たな商品を作り、豊かな生活を創造できる企業を目指したいと思う。
Q.IGZOは確かに素晴らしいデバイスだが、有機ELなど競合となる他デバイスも多数登場してきている。他デバイスと比べ、どのような優位性があるのか教えて欲しい。
A.やはり低消費電力で、高精細化を実現しつつ省エネも両立できる点。またタッチセンサーの駆動もノイズが少なくスムーズである点が上げられる。技術は日々進化していくもので、常に新しい技術が登場してくるが、それに勝てるよう日夜切磋琢磨していきたいと考えている。
Q.液晶事業における中小型液晶の売上率を教えて欲しい。
A.2012年度上期は60%が中小型、40%が大型液晶だった。下期はその割合を70%・30%という比率にしたい。
Q.ホンハイの第三者割当増資の払い込みを来年3月に設定したのは何故か。もっと早く行えばよいのではないか。
A.独禁法許可手続きなどのリードタイムをみて設定するのだが、今回もリスクを見て1年という期間を設定した。資本の払い込みだけでなく、堺工場に関する払い込みも同じ時期に行うことになっている。
同社は国内市場について、「円高やデフレ進行、海外市場は欧州金融危機や米国の成長鈍化、新興国は成長減速、と厳しい経済状況が続いている」と説明。こういった状況の中同社は、IGZO液晶やブラックソーラー、プラズマクラスター搭載商品といったシャープならではの製品創出・拡売に取り組むことに加え、大型液晶事業のオフバランス化や主要取引行との借入枠設定締結などを行い、経営改善を図った。しかし商品/デバイスの価格下落や、亀山工場における新規中小型液晶の稼働遅れ、国内・中国での液晶テレビの予想以上の販売減などにより、厳しい状況となった。
AV・通信機器分野では、液晶テレビの売上が前年同期を大きく割り込む結果に。国内市場の低迷や日中関係悪化に伴う中国国内での販売落ち込みが影響したという。また、携帯電話についても、海外メーカーとの競争激化や、一部基幹部品の供給不足が続き、売上高3,382億円(前年同期比41.8%減)という大幅な減収になった。
一方健康・環境機器分野では、洗濯機や空気清浄機などが好調に推移し、売上高は前年同期比4.9%増の1,549億円を記録した。
電子部品分野では、大型液晶パネルの外販が堅調に推移したとのことで、売上高は前年同期比6.4%増の2,679億円となった。
■通期連結業績予想を下方修正 − 純損失4,500億円を見込む
こうした状況を受け、8月2日に発表した2012年度通期連結業績予想を下方修正する。
売上高は2兆4600億円(前回発表時より400億円減)、営業損失は1,550億円(550億円増)、経常損失は2,100億円(700億円増)。そして純損失は前回予想の2,500億円から、4,500億円へと大幅な収益悪化を見込む。
今後はモスアイパネル搭載液晶テレビやIGZO液晶搭載スマホ/タブレット、プラズマクラスター美容家電などの販売を強化。グローバルレベルでの協業も推し進め、収益の早期回復を図る考えだという。また、希望退職の募集や賃金の減額なども行うとのこと。こうした施策を通じて「2012年度上期の連結営業利益黒字化を実現し、業績と信頼の回復に努めていく」としている。
■1Q比で経営改善を強調。今後の成長エンジンは中小型液晶 − 発表会詳報
シャープは本日都内にて説明会を開催。奥田社長らが出席し、業績の説明や今後の経営方針説明を行った。
奥田社長は、第1四半期と比較した場合、第2四半期は業績が改善していることを強調。「2Qは1Q比でほぼ全ての部門で売上高増収を達成。四半期別の売上高も、2011年度前半のレベルにまで回復してきている。右肩下がりだった営業利益も194億円改善した。液晶テレビは、2Qは売上高1,080億円で前期比139%、販売台数も133.8%と伸びている。AV・通信機器分野全体で見ても、売上高は前期比152.4%。営業利益も、202億円の損失から9億円の損失へと改善してきている。また、液晶部門も、中小型液晶は前期比6割、大型液晶は4割の増収となった」と説明する。
「8月に発表した事業構造改革案(関連ニュース)のなかで提示した、大型液晶のオフバランス化は完了。第三者割当はホンハイと継続して話し合っているところだ。在庫の適正化・固定資産の圧縮も進んでいる。ここまでで目標の約7割の改善を終えることができた」と語る奥田氏。今後の経営方針についても、改めて説明を行った。
今後の取り組み方針として「めざすべき企業像の明確化」「主要事業分野における構造改革」「コスト構造改革」「資金の安定化」「実行体制強化」の5点を提示。
まず1項目めは、同社の技術力やデバイス力、販売チャネルなどの強みを活かしつつ、事業本部間の壁を越えた“FUSION(融合)”によって新しい製品を生み出し、ユーザーの生活を豊かにする製品創出を図るという。
2項目めは、AVシステム/ソーラーシステム/ディスプレイデバイス/通信システムの各事業本部の構造改革を推進。グローバルで同じ製品を提供するのではなく、地域に合わせた地産地消型に変革する、収益を見込める事業や地域への絞込みを行うといった試みを行っていくとのこと。ディスプレイデバイスについては今後の成長ドライバーと位置付け、特に中小型液晶について工場を最大限に活用し、収益の拡大を狙うとコメントされた。
コスト構造については、これまで行ってきた施策に加え、人件費削減や人員の効率化、拠点の統廃合などにより更なる固定費削減を行うという。
また5項目めとなる「実行体制強化」については、奥田社長を委員長とした「緊急対策委員会」を設置。経理企画/経営企画/人事などが6つのカテゴリーを担当し、外部の意見も取り入れながら、より確実性の高い実行体制を構築するとのことだ。
なお、新たな事業構造改革テーマについて現在も引き続き検討中だという同社。中期計画も含め、2012年度内に改めて説明の場を設けることが明言された。
奥田社長は「2Qは多額の追加損失を計上し、株主資本を大きく棄損することになった。年間業績の下方修正を行わざるをえなくなったことについても、お詫びしたい。今後は改革への取り組みを加速し、収益体質を改善することが最重要課題。下期の営業利益黒字化、そして2012年度の最終利益黒字化を必達目標とし、全社一丸となって頑張っていく考えだ」と締めくくった。
以下、会場で執り行われた質疑応答の主な内容を掲載する。
Q.今年に入り4度目の下方修正となる。これは、家電業界の激変という外部的要因のほかに、シャープの企業体質・経営体質にも問題があったのではないか。
A.度重なる下方修正によりステークホルダーに多大な心配をお掛けし、信頼も失ってしまったのではないかと思う。今後大切な課題は、業績回復と信頼の回復。緊急対策委員会の設置などで客観的意見を取り入れながら、事業計画達成と収益改善を図って行きたい。下期以降の業績改革をやりとげる、という思いのもと、信頼を取り戻していきたいと考えている。
Q.ホンハイとの協議は現在どのような状況にあるのか。また、結論はいつ頃を目処に出るのか。こういった現状にも会社の意志決定スピードが表れているのではないか。
A.ホンハイとはお互い合意をもちながら協議を進めており、スピード感に特に問題があるということはない。
Q.昨日のパナソニックの会見(関連ニュース)で、津賀社長が『普通の会社ではない』とコメントしていたが、シャープはどんな会社であると考えているか。また、何を今後の収益の中心とするかを改めて教えて欲しい。
A.シャープの持っている技術の価値を確実に収益に結びつけられるような、バイタリティのある企業になれていないと感じている。PDCA(plan-do-check-act)サイクルをきちんと回し、決めたことはやりきり、問題があればすぐ修正できる会社にしていきたい。
今後の収益の中心としては、成長のキーはIGZOなど中小型液晶だと位置付けている。健康・環境分野などは安定して収益は出るものの規模が小さい。IGZO液晶は非常に多くのお客様から高い評価をいただいている。また、高精細でタッチセンサー精度が高く、バッテリーも長く保つという特徴は、今後の流れにフィットしていると思う。こういった利点を持つものをシャープ内で融合させて新たな商品を作り、豊かな生活を創造できる企業を目指したいと思う。
Q.IGZOは確かに素晴らしいデバイスだが、有機ELなど競合となる他デバイスも多数登場してきている。他デバイスと比べ、どのような優位性があるのか教えて欲しい。
A.やはり低消費電力で、高精細化を実現しつつ省エネも両立できる点。またタッチセンサーの駆動もノイズが少なくスムーズである点が上げられる。技術は日々進化していくもので、常に新しい技術が登場してくるが、それに勝てるよう日夜切磋琢磨していきたいと考えている。
Q.液晶事業における中小型液晶の売上率を教えて欲しい。
A.2012年度上期は60%が中小型、40%が大型液晶だった。下期はその割合を70%・30%という比率にしたい。
Q.ホンハイの第三者割当増資の払い込みを来年3月に設定したのは何故か。もっと早く行えばよいのではないか。
A.独禁法許可手続きなどのリードタイムをみて設定するのだが、今回もリスクを見て1年という期間を設定した。資本の払い込みだけでなく、堺工場に関する払い込みも同じ時期に行うことになっている。