LDACと有線接続時の音質の違いも検証
【CES】“Bluetoothでハイレゾ伝送” 新コーデック「LDAC」の詳細を関係者に直撃!対応機試聴レポも
ハイレゾ相当の音質をBluetoothで実現する新コーデック「LDAC」とは!?
LDACの最大の特徴は、SBCなど既存技術の最大3倍の情報量を伝送でき、「96kHz/24bitという、一般的にハイレゾと呼ばれているクオリティのデータ伝送を行える」(大庭氏)ということにある。
またLDACは、SBCやAACなど既存のコーデックと比べて高効率で、そしてビットレートの高さが高音質に直結するようなデータ伝送方法を採用していることにある。対応している伝送レートは330kbks/660kbps/990kbsの3段階だ。
「現在Bluetoothで最も使われているSBCコーデックと比較すると、ダイナミックレンジを大きく確保し周波数帯域としては96kHz/24bitにまで対応しますし、ビットレートについてはBluetoothの規格上の上限である約1Mbpsのギリギリまで容量を利用することで、ハイレゾの情報量伝送を実現しています。
LDACでは音声データの音声データ伝送の際のパケッタイズにも工夫がありまして、SBCと同じ320kbpsで比較しても、LDACの320kbpsの方が実際に伝送できるデータサイズの容量は大きくなります。また、AACでは320kbps程度で音質の向上が頭打ちになるのに対して、LDACではビットレートの向上がリニアに音質向上につながる構造なので、660kbpsではより高音質な再生ができます。ハイレゾ音源はもちろん、例えばCD音質の音源を990kpsで伝送した際にも、ビットレート上昇分だけの音質向上の効果を受けられます。(大庭氏)
なお、誤解のないように確認しておくと、LDACの圧縮アルゴリズムはあくまでも非可逆圧縮(ロッシー)で、その点は現在Bluetoothで用いられているSBCやAAC、aptXといった先行コーデックと同じだ。また、現在の仕様では192kHz/24bitなどの音源は、96kHz/24bitにダウンコンバートされる。
一方で、Bluetoothなどのワイヤレス伝送に向けて、伝送も含めて効率化が行われたコーデックであり、「現在のBluetooth 4.0の伝送容量の上限(約1Mbps)から拡張できれば、将来的には192kHz/24bitといった、より上位のハイレゾフォーマットも伝送できます」(大庭氏)とのこと。
以上のように、LDACは「Bluetoothでハイレゾ音源を再生」と一言で説明したくなるが、ソニーによるクオリティの表現はあくまでも「ハイレゾに匹敵する音」。これは日本におけるハイレゾの定義では非可逆音源をハイレゾに含めるかどうかが定まっていないためで、データフォーマット上はハイレゾ対応と呼んで差し支えないだろう。
なお、NW-ZX2のBluetooth接続時の初期設定のビットレートは660kbps(Standardの状態、会場のデモ機もこの設定だった)で、最高音質の990kbpsに設定するには「高音質」を選択する必要がある。この理由は「990kbpsにしてしまうとBluetooth自体のワイヤレス帯域のMAXに近いものなので、試聴している場所のワイヤレス環境状態によっては音の途切れが発生してしまう事があります。いま私たちでテストしている環境では、電車内などでのリスニングでもウォークマンのSBC/330kbpsの伝送と同じ実用性を、660kbpsで実現できるようにしています」(大庭氏)と、実環境に近いリスニング条件を踏まえてのものだ。
なお、LDACのコーデック自体はソニーが自社技術として研究・開発したものであるが、コーデックの仕様はソフトウェアとして実装可能なものだ。「最初はソニーの自社製品から広まっていくかと思いますが、ゆくゆくはaptXと同じように他社さんにも広がっていくようにしていく」(大庭氏)と、ライセンス化も視野に入れているとのことだ。
次ページNW-ZX2に加え「ウォークマンA」もアップデートでLDAC対応