<連載:折原一也の“いまシュン!”ビジュアルプロダクト>
次世代BD「Ultra HD Blu-ray」の詳細をキーマンに聞く(前編)年内発売へ準備着々
米Blu-ray Association(BDA)より次世代BD「Ultra HD Blu-ray」のライセンス開始の発表が行われた(関連ニュース)。
「Ultra HD Blu-ray」の規格内容については今年1月にパナソニックの小塚氏へのインタビューを行った後、5月に規格化完了の発表がなされているが、間もなく仕様が公開される。
「4K」「HDR」といった映像の最新トレンドが盛り込まれ、2015年内に複数社からの製品発売が期待される「Ultra HD Blu-ray」。その規格の詳細、そして今後の展開について、パナソニック(株)AVCネットワーク社 技術本部 メディアアライアンス担当部長の小塚雅之氏、パナソニック(株)アプライアンス社 技術本部 ホームエンターテインメント開発センター 運営規格課 技術渉外係 主幹の森美裕氏にその詳細を尋ねた。
まず強調しておきたいのは、「最近では映像配信も盛んになってきていることもあり、Ultra HD Blu-rayでは画質に振っている」と小塚氏が断言するほど、高画質に特化した仕様となっていることだ。さらに、BDAからのライセンス開始のニュースでもお伝えしたとおり、今年のホリデーシーズンに向け、ソフトやハードの準備が着々と整っていることが確認できた。
今回のインタビューは前後編でお伝えするが、前編となる本記事では「Ultra HD Blu-ray」の仕様を解説しながら、現行BD、そして以前の取材時からの変更点をお伝えしていこう。
●ディスク仕様は最大3層100GB。転送レートは最大127.9Mbpsへ向上
Ultra HD Blu-rayの物理的なディスク仕様は、1層当たりのディスク容量に25GB/層と33GB/層の2種類が用意される。50GB(2層)、66GB(2層)、100GB(3層)の3種類のディスクがありうるということだ。3層については既に日本市場向けに採用されている記録型メディアのBDXLの採用例もある方式だ。
解像度とHDRの有無により、Ultra HD Blu-rayは「4K/HDR」「4K/SDR」「HD/HDR」「HD/SDR」の、4種類の映像コンテンツを収録できる。このため、ユーザーが手持ちのテレビの仕様を意識しなくても最適な画質でUltra HD Blu-rayを視聴できるよう、4K→HDダウンコンバート機能、HDR→SDR変換機能がプレーヤーに搭載される。
1月の取材時点からの変更点としては、4K映像を収録した際のビットレートに影響するピークAVデータ転送レートが25GB/層のディスクで81.7 Mbps、33GB/層で127.9Mbpsと、前回記事でお伝えした100Mbpsからさらに速くなった。映像・音声のTSストリームで127.9Mbpsというデータ転送量になる。
規格上は映像のみでも100Mbpsのビットレートまで利用できる仕様となっているため、その大部分を映像のみで利用し、高画質化ができるように転送レートを向上が図られた形だ。
収録する映像フォーマットについては、現行BDと比較すると「解像度」「色域」、そして「輝度レンジ」(HDR)と3つの要素すべてが拡張される。
「解像度」については3840×2160/最大60fps、色域についてはBT.2020が必須となる。輝度レンジについては10bitの階調で10000NITまで拡張されており、従来の100NITから従来の100倍ものレンジまで利用できるようになる。ただし、作品のオーサリングを行う際のガイドラインとして1000NITの基準までを推奨値として定めている。なお、映像関連要素では「3D表示機能」は削除されている。
「HDR」の収録方式については、1月で取材した既報の通り、複数の方式が採用されているようだ。HDRの仕様や既存機器との互換性など周辺環境については、後編の記事で詳しく紹介する予定だ。
なお音声フォーマットについては既報の通り、現行BDからの仕様変更はない。「ドルビーアトモス」「DTS:X」といったオブジェクトベースの音声フォーマットは、既に現行BDでも各社独自の仕様で収録されているので、「Ultra HD Blu-ray」でも引き続き同じ方法が採られることになる。
また、Ultra HD Blu-rayをプレーヤーにセットして最初に表示されるメニューについても、2Kからのアップコンバートとなる仕様に変更はないようだ。
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