<連載:折原一也の“いまシュン!”ビジュアルプロダクト>
HDR10とは? ゾーンとは? Blu-ray Copyはどうなる?「Ultra HD Blu-ray」の詳細を聞く(後編)
●HDRは「Dolby Vision」方式、「Philips HDR」もオプションで採用
Ultra HD Blu-rayにおけるHDRのオプション仕様として、Dolbyによる「Dolby Vision」方式、そしてPhilipsによる「Philips HDR」もオプションとして採用された。
HDR10に対するDolby Visionの優位点のひとつは、色深度12bitの映像を収録できることだ。映像が扱う輝度レンジが広がるとなれば、色階調で扱う範囲も広がるため、ビット深度を深める必要があるというのがドルビーの主張。リーズナブルに10bitに収めた「HDR10」に対して、12bitの色深度を利用できる、より贅沢なスペックを採用したDolby Visionといった構図だ。
Ultra HD Blu-rayにDolby Visionを収録する際は、映像を基本層(Base Layer)と、拡張層(Enhancement Layer)に分けて収録する。この映像収録の基本的な考え方は、以前ドルビーに対して行ったインタビュー記事に詳しいが、2ストリームが基本となる。このため、再生機となるプレーヤーもDolby Vision対応デコーダー搭載が必須だ。
ただしUltra HD Blu-rayにおけるDolby Visionでは、基本層(Base Layer)に「HDR10」のHDRストリームが採用される。このため、Dolby Visionで収録した作品もHDR10だけに対応している機器で再生できる。
ちなみにDolby Vision収録作品も、Dolby Visionの12bitの情報をベースにして、SDRへの変換機能も搭載される。一方「Philips HDR」方式は、必須のHDR10 ストリームにPhilips独自の動的メタデータを追加する方式であり、HDR10だけに対応している機器でも再生できる。ちなみに「Philips HDR」方式収録作品も、Philips独自の動的メタデータをベースにして、SDRへの変換機能も搭載される。
Dolby Visionを巡る制作環境としては、すでにPulsarをはじめとするドルビー製のマスターモニターが存在し、ディズニーが「トゥモローランド」「インサイド・ヘッド」をDolby Vision方式で制作、そしてワーナーも制作を進めている。海外ではDolby Visionによる劇場上映も行われている。映像配信は最大手のNetflixが対応を発表済だが、まだ配信はスタートしていない。また薄型テレビについては、米格安TV大手のVIZIOが製品化を予定している。
ひとまず、Ultra HD Blu-rayではHDR10のみがマンダトリー(必須)として採用されることになったが、Dolby Visionがどれだけ採用されるかは、今後HDRを取り巻く環境によって変わってくるだろう。