こだわりを徹底紹介
パナソニック、ハイエンドUHD BDプレーヤー「DP-UB9000(Japan Limited)」。日本限定仕様満載で画音質追求
■「自動HDRトーンマップ」を搭載
まずは高画質技術について紹介していく。パナソニックで画質関連技術を以前から手がける甲野和彦氏は、UHD BDソフトの輝度情報を調べていくうちに、コンテンツとHDRテレビの輝度に大きなズレがあることに気づいたのだという。
「HDRコンテンツのタイトル数の9割が、最高輝度(Max CLL)1,000nit以上で作られているのに対して、HDRテレビの販売台数の8割超は最高輝度が600nit未満となっています。つまり、ほとんどの場合、HDR映像が飽和しないよう、ディスプレイの表示能力内に輝度レンジを圧縮する必要があるのです」。
特にHDR10コンテンツを再生する場合、静的なメタデータしかないので、シーンによっては不自然な表示になってしまう場合もある。これを解決しようというのがダイナミックメタデータだが、HDR10+もドルビービジョンも、コンテンツとプレーヤー、ディスプレイの全てが同規格に対応していないと、HDR10として互換再生されてしまう。こういった事情から、多くの場合、HDR10のメタデータを用いた「タイトルごとのトーンマップ」を最適化する必要がある。
とはいえ、甲野氏によると、トーンマップを高精度に行うのは、それほど簡単なことではない。トーンマップカーブの曲率が大きいと色が歪む、全体的に輝度を下げると暗くなる、映像を分析した動的トーンマップを行うと不安定になりがち、RGB独立のトーンマップを行うと色が歪む、薄くなるなどの問題があるのだという。
今回、DP-UB9000に搭載した「自動HDRトーンマップ」方式は、これらの課題をクリアし、最適なトーンマップをプレーヤー側で自動的に行うというものだ。
先に効能だけを紹介すると、自動HDRトーンマップでは、HDR10のメタデータに応じて自動的にトーンマップを行うため、高輝度部が飽和しない。また、なめらかなトーンカーブを描くアルゴリズムを採用している。さらに、中低輝度部は変えないことによって、映像が全体的に暗くなることを防いでいる。
またメタデータの変換機能も備え、例えば最高輝度が4,000nitであれば1,000nitに落としたデータへ変換し、テレビに送る処理が行える。これによってテレビ側の負担を軽減している。
さらに色の忠実性を保つことについては、新開発の「色保障型トーンマップ」によって対応した。
例えば明るいオレンジ色をRGB独立でトーンマップすることを例にすると、明るいオレンジ色の場合、Rは振幅が大きく、Gは振幅が中程度、Bは振幅が小さく、トーンマップの影響がRGBそれぞれで異なる。このため、明るいシーンで色ズレや色抜けが発生する。
それに対して色保障型トーンマップ方式では、トーンマップの影響がRGBそれぞれで等しくなるように連携処理を行う。これによって、明るいシーンでも色を忠実に再現できる。
なお今回搭載した新画質エンジンでは、リニアRGB信号のトーンマッピングを、最大32bitの高精度で処理。このため中低輝度の画質に影響を与えず、高輝度部を正確にトーンマップすることが可能になる。
甲野氏は、自動HDRトーンマップとダイナミックレンジ調整の関係についても言及。ダイナミックレンジ調整はユーザーによるマニュアル調整で、映像の全体的な明るさはこちらで調整するのが良いという。高輝度部については「自動HDRトーンマップ」によって、メタデータに応じて自動的に圧縮する。
なおトーンマップの目標輝度は、「HDRディスプレイタイプ」を切り替えることで設定できる。有機ELは1,000nit、超高輝度の液晶テレビは1,500nit、中・高輝度の液晶テレビは1,000nit、ベーシックな輝度の液晶は500nitという具合だ。初期値は中・高輝度の液晶テレビ(1,000nit)。これは、多くの民生用テレビは1,000nit程度までの映像情報であれば、概ね適切に処理できるからだという。