利用者/権利者両団体が共同で第三者機関を設立
音楽著作権の一括処理を担当する「著作権情報集中処理機構」が誕生
世界で初めての試みであること、そしてまた出席者の説明が3名を合わせて15分ほどと短めだったこともあり、会見の最後に設けられた質疑応答では質問が集中した。以下にその様子をお届けする。
Q.今後の活動予定についてもっと詳しく教えて欲しい。
A.4月以後、本格システムの構築に向けた入札を行う。現在は仕様書の策定とプロトタイプのシステム構築を行っているところだ。そして来年度にシステムの開発を行い、再来年度から運用開始したいと考えている。
Q.名称に「音楽」という言葉が入っていないのだが、将来的に音楽以外にも分野を広げる予定はないのか。
A.特に名称にこだわったわけではない。会見でも述べたとおり、映像などに手を広げるつもりはない。
Q.JASRACなど管理事業者との関係性はどうなっているのか。
A.管理事業者だけで集まって何かをやろうとするのは別の問題が出てくる。この機構は、コンテンツプロバイダーも含めて、個々がやっていた作業を集中させて一括処理するためのものだ。
Q.この機構で著作権料の徴収や分配をするわけでないのか。
A.その通りだ。許諾や徴収などには一切関わらない。そこに関する情報の処理だけを一括して行うものだ。
Q.従来のシステムとの違いをもっと具体的に教えて欲しい。
A.現在は、楽曲利用に際して1,000社を越えるコンテンツプロバイダーがそれぞれ個々に処理を行っている。また、各管理事業者側もそうした利用申請に対して個々に処理している。そして、デジタルコンテンツでは廃盤がなく、管理楽曲数が急激に増えている。ほとんど売れない曲に関しても管理コストがかかるわけだ。こうしたものが積み重なり、コンテンツプロバイダーは非常に大きなコスト的なリスクや人的負担を強いられている。管理業者にとってもこの状況は同様で、「担当者が過労死してしまうのではないか」という話も出ていたほどだ。そこで、楽曲IDの特定など、利用者側と管理者側で重複している作業を一括化することで、全体の経済的コストや人的コストを削減しようという発想だ。
Q.どの部分がどのようにシステム化されるのか詳しく教えて欲しい。
A.もちろん全てが自動処理化されるわけでなく、手作業も残る。例えば現在は、新しい曲を配信しようとしたときに、コンテンツプロバイダーはその楽曲の権利をどの管理事業者が管理しているのかから調べなければならない。楽曲ごとに、管理事業者の数だけ調査を行わなければならないわけだ。そこで、独立した第三者機関であるこの機構がフィンガープリントなどの技術を活用しながら集中的に処理を行うことにより、そうした手間を省くことが可能になる。
Q.参加予定のコンテンツプロバイダー数などが決まっているのであれば教えて欲しい。
A.幹事候補企業は今後もう少し増えるかもしれない。幹事企業に大手が多いのは、非営利の一般社団法人の設立資金や当初の運営資金などを負担するという側面があるからだ。機構の利用には資金を出しているかどうかは関係ない。だれでも利用可能だ。
Q.システムの予算はどれくらいなのか。
A.概算で2億から2億5千万円くらいを予定している。また、その後の運営には2億5千万ほどの予算を見ている。非常に大きな額に思えるかもしれないが、1社あたり2名ほどの人的コストの節減につながる予定だ。