液晶テレビ「50年ぶりの革命」の真価とは
「AQUOS クアトロン」は一体何がすごいのか − 革新的な技術の全貌に迫る
TEXT/折原一也(プロフィール)
「黄色」を加えた革新的な4原色液晶技術
「クアトロン」とは
今年1月にラスベガスで開催されたCES2010で、世界初の4原色技術「クアトロン」搭載液晶パネルが公開されてから、もうすぐ1年になる。LV3ライン、LX3ライン、XF3ラインに投入された革新的な液晶技術の詳細を改めて解説してみたい。
4原色液晶技術「クアトロン」の核をなすものは、バックライトの透過光を各色に分離するカラーフィルターにイエロー(Y)フィルターが追加されたことである。人の目に見える色は光の3原色とも呼ばれる「赤」「緑」「青」に対応するRGBの混色により作り出す方法が一般的だ。こうした3原色の混色によって作り出される色はカラーチャートとして示される形でR、G、Bの各色を頂点とした三角形の範囲で表されるが、必ずしも従来型の液晶テレビでは、あらゆる色の再現範囲をカバーできていたわけではなかった。
LX3の視聴を通じて
優れた色の再現性を実感
例えば、グリーンとレッドの中間に位置する明るいイエローや輝きあるゴールドの質感、グリーンとブルーの中間に位置するシアン(イエローとは補色の関係にある)。これらの色は、かつてのテレビでは表示が難しかった。液晶テレビにおけるアプローチではシャープは既に広色域をアピールしたLED搭載AQUOSを2008年に投入。その流れを推し進める形で登場した技術が「クアトロン」だ。これは広色域化技術をベースとした高画質化の流れを受けた液晶テレビの革新的技術なのだ。
実際に「クアトロン」を搭載したAQUOS LX3のクオリティをチェックすると、眩いばかりのイエローの輝きにまず眼を奪われる。煌びやかな装飾が施されたニューイヤーコンサートの会場とダンスの衣装の輝き、一般的な液晶テレビでは鈍い光のように見えていた金属的な色の輝く再現性は、肉眼での見え方を彷彿とされる色味を持つ。現放送規格を凌駕した色を再現するために、信号処理の段階でピークアウトを検出し、パネルのポテンシャルを全て引き出した美しいイエローの伸びへと置き換えられる。同様に、南国の海をイメージさせるようなブルーの中に深みを漂わせるシアンの透明感もまた、見たことない美しさを感じさせてくれる。また、広色域化の際の肌色の再現性には特別のチューニングが施され、カメラ側で落とされた色も巧みに補完し美しさを保っている。今回の新技術は、従来の広色域へのアプローチと比較しても階調性も優れたものとなっている。
フルHDパネルの限界を
越えた精細感を実感した
クアトロンが液晶テレビにもたらす革新は他にもある。1画素を色毎に分割するサブピクセル方式を採用する液晶テレビにおいて、RGBからRGBYへの変革は、フルHDパネルで表示可能な映像の限界を超える可能性を秘めた技術でもあるのだ。従来のRGB3原色のパネルでは、例えば白を再現する際に使えるRGBの発光比重の組み合わせはそれほど多くない。しかし、RGBYを用いる4原色パネルでは、例えばイエローを使用しない白、RとGを半分として黄色を半分とした白、RとGを用いずBとYの混色による白と様々なパターンで作り出すことができる。Yの追加によってもたらされたフルHDスペックを越える精細感をもたらす背景にはこの加色パターンの応用があるのだ。
クアトロン技術が搭載されている新AQUOSのサブピクセルはRGBYのごとに物理的に配置され、サブピクセル単位で駆動させている。色を加えた分だけ、サブピクセルも当然増えている。従来のRGBでは600万強のピクセル数で一画面を構成していたが、ここにさらに1色が加わり、800万を越えるピクセル数となった。密度が濃くなれば、さらなる高精細化につながる。増えた輝度信号を活用して斜め線の検出を行い、ピクセル値を最適化することで精細度がアップしているということなのだ。サブピクセルを用いた高画質処理は実際に映画映像を観た際にも一目で分かるほどに効果的。髪の毛や木の枝といった輪郭のディテールが、一目瞭然の滑らかさで向上する効果を確認できた。
「クアトロン」は精細感の点からもフルHDパネルの限界を突破していく。ポストフルHDとなる「4K2K」の到来を先取りする高画質技術「クアトロン」の登場は、3Dのみならず2Dの高画質化にも革新をもたらす。
次ページ4原色技術を追加して従来以上の質を獲得した − シャープ 寺川氏インタビュー