液晶テレビ「50年ぶりの革命」の真価とは
「AQUOS クアトロン」は一体何がすごいのか − 革新的な技術の全貌に迫る
開発者に訊く「AQUOS クアトロン」
AVシステム事業本部
要素技術開発センター
第二開発部
副参事
小池 晃 氏
広がった色域を活かした
画作りが可能となった
UV2A、そして4原色を始めとする技術の採用とその磨き込みによって、トータル的な品位と質感が向上した新製品。それが「クアトロン」テクノロジーを採用したLV3シリーズ、LX3シリーズ、そしてXFシリーズです。この製品を実際にご覧いただく際、可能な限り画面に近付いて映像をチェックしてみてください。新技術の効果の高さがより実感できるはずです。
今回の新シリーズの特徴は、補色としての黄色をアド・オンすることで、従来は表現不可能だった、明るく色鮮やかな映像を実現していることにあります。そのことは通常の視聴位置から観てすぐにご理解いただけると思いますが、近付いて鑑賞してみるとさらに分かることがあります。解像感が向上しつつ斜め線も自然に出ていることです。両立が難しいこのテーマを、一般的な解像度引き上げ技術とシャープオリジナル技術をミックスして解決しています。単純な補正だけでも斜め線は綺麗になりますが、解像感の向上も同時に実現するのは実は非常に難易度が高いのです。積み重ねてきた従来技術の応用・転用、そして新技術の採用により、こういった課題を一つ一つ解決していきました。
4原色技術が加わることで、広がった色域を活かした画作りができるようになりました。従来モデルではR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)各色それぞれの頂点を伸ばしてNTSC比150%の映像を表現していましたが、効率面を考えるとその手法よりもRGB以外の色を採用してその部分を膨らますのが理想的です。Y(イエロー)が加わることでGの処理に余裕ができ、シアンもより豊かに再現できるようになりました。輝度効率が良くなることで白の出方も良くなり、結果的に「キラリ」とした映像が出せるようになりました。
金色の出方を例に挙げると、ただ単に黄色が増えて色の濃さが増したということではなく、金色らしい質的な味わいも出せています。色が濃い、あるいは輝度の高い対象物を撮影する場合、カメラ側でゲインを抑えられてしまうのがこれまでの常でした。しかし4原色技術を用いれば、受像機側でホワイトポイントからイエローに向かうところをノンリニアな特性で上向かせることが可能となり、撮影時に犠牲となってしまった映像質感を忠実に再現することができるようになるのです。
色域を広げることは
高精細化技術にも応用可
色域の拡大は高精細化技術にもつながります。これが「近付いて観ると良く分かる」従来モデルとの違いです。一例を挙げてみましょう。斜め線を持つ被写体を撮影した場合、一般的なフルHDカメラではどうしてもギザギザ感が出てしまいます。この問題を解決するために、例えば白部分を表現するための原色の掛け合わせ方法をより精密に行うようにしています。4原色の場合は同じ白の作り方でもバリエーションは豊富になり、RとGを半分にして、足りない分はYを追加することで白を作ることもできます。あるいは、RとGをゼロにしてBとYを足して白を作ることも可能です。場面毎に適した色配合を行うことで、解像度を犠牲にすることなく高度な線描写が行えるようになりました。ピクセルの光らせ方を微少単位でコントロールできる高い技術力が高精細化の背景にあるということです。この問題は、4K2K解像度を持つディスプレイであればもっと容易に解決できますが、新技術を用いれば従前のフルHDスペックでもその域に達することが可能です。4K2K時代を先取りした画期的なテクノロジーである、と自負しています。
4原色技術のコントロール方法についてご説明しましょう。最初に入ってくる3色のRGBを輝度成分と色成分に分解し、その後に4色変換をかけます。輝度成分のところに斜め線検出をかけ、ピクセル毎の光らせ方をコントロールします。その後、色成分にミキシングをかけてパネルに表示しています。原信号が揃っている箇所は輝度成分となり、バランスが違うところは色になります。輝度成分のところを滑らかにして、色情報を乗せてパネルに表示します。これがYを加えた高画質技術、そして高精細化技術の基本的なプロセスです。シミュレーションと実験を繰り返しながら、「キラリ感」と「自然さ」を上手にバランスを取り、トレードオフを発生させずに両方を実現させています。
映画モードも追加して
グレインを忠実に出した
もともとがRGBの3信号で送られてくるソースを、受像機側で補色を加えた上でチューニングしていますが、ここで特に気を付けているのは肌色です。肌色の箇所を強調することなく不足している色を補い、両者を適切にバランスさせているのです。明るめの肌色、暗めの肌色の2パターンを基本に置き、モード毎の見え方を丁寧に検証し、画面サイズやパネルの性質にそれぞれ違いがあっても、同じ肌色に見えるようにチューニングしています。黄色成分が強くなると人肌の場合はそのままでは不自然になりますから、微調整が当然必要となります。そこで、リニアな部分をリニアな特性にするのではなく、ノンリニアに調整することで、従来の3原色での見え方とは逸脱せずに、今まで以上の自然な肌色が出るように配慮しています。
今回の新シリーズでは、映画モードも新たに追加しました。新技術を活用してフィルム的な解像感のさらなる向上も図っています。映画のフィルムというものは元々が非常に立体感があるコンテンツですし、テレシネによる立体感の損失を防げば、もっと映画そのものが楽しめるようになります。フィルム自体に乗っているグレインノイズを和らげるために、従来の映画モードでは3次元ノイズリダクションをかけていましたが、新映画モードではそれをオフにして忠実にグレインを出すようにしています。これにより、映画そのものが持つ質感が引き出せています。読者の方も実際に「クアトロン」が搭載されたモデルの映像をご覧になって、AQUOSのさらなる進化を実感いただければ幸いです。(談)
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