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「真のハイCPモデル」

【レビュー】B&W 45周年記念スピーカー「PM1」を貝山知弘が聴く

公開日 2011/09/26 16:41 貝山知弘
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■トゥイーターの透明感の高い音を満喫

D&Mホールディングスの試聴室で本機を聴いた。

組み合わせたのはいずれもマランツの製品で、SACD/CDプレーヤーは「SA-7S1」、コントロールアンプは「SC-7S2」、パワーアンプは「MA-9S2」(モノラル2台)である。

最初に聴いたヒラリー・ハーンのCDチャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲第2楽章では、すっきりと延びきった高音域の響きが心を揺さぶる。

また弱音器を付けたヴァイオリンの美しい倍音がリアルに再現されることにも好感を抱いた。その理由は、アルミドームユニットにありがちな金属的な付帯音が目立たず、透明度の高い美しい倍音の響きが満喫できたからだ。

■大型モデルでは得難い引き締まった低音も魅力

ベルリンフィルのマーラー/交響曲第2番第1楽章は、再生機に広い周波数帯域、ダイナミックレンジを要求するため、小型スピーカーでは再生が難しいソースだ。

冒頭のコントラバスのフォルテッシモでは弦が唸り重厚な響きを発するが、その感触が見事に再現されていることに驚いた。

それは今まで聴いてきた小型スピーカーの低音とは次元が違う、力感と締まりが両立した低音であった。これはブーミーな低音とは全く異なり、力強さを維持しながら、きりりと引き締まった表情を持つ低音である。

わたしはこの低音に、このスピーカーが持つ最大のレゾンデートル(存在理由)を感じた。この引き締まった表情は、大型のスピーカーではなかなか得難いものだからだ。

低音の量感も充分で、全音域のエネルギーがフラットに整っている。低音再生に関しては、もちろん大型の高級機との差はある。しかし、それはローエンドの帯域での話で、オルガン以外の楽器で低音の伸びと量の不足感を特に感じることはなかった。

■PM1は真のハイコストパフォーマンスモデル

分解能が高いことも特筆していい。ユジャ・ワンとアバドのラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲では、透徹したピアノの響きが厚みのあるオーケストラの響きと見事なバランスで調和しているが、本機の再生ではその繊細なニュアンスが手に取るように浮かび上がる。微細なレベルの情報が失われたり、他の音でマスクされることがないのだ。

音場の広さと音像の整い方も秀でている。バスレフのポートから出るノイズ、キャビネットの回折ノイズが少ないことも特筆したいポイントだ。

世にコストパフォーマンスが高い製品は数多くあるが、本機のように音質上の欠点がない製品は稀だ。スタンドを含めたペア価格が40万円を切る本機は、真のハイコストパフォーマンスモデルである。

貝山知弘
「ビジュアルグランプリ」審査委員長。早稲田大学卒業後、東宝に入社。独立後、フジテレビ/学研製作の『南極物語』(1983)のチーフプロデューサー。アンプの自作から始まったオーディオ歴は50年以上。また映画製作の経験を活かしたビデオの論評は、家庭における映画鑑賞の独自の視点を確立した。

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